米EV(電気自動車)大手テスラの快進撃が止まらない。2021年は時価総額が1兆ドルを突破し、GAFAMの一角を成すMeta(Facebook)を超えた。生産台数・販売台数も市場予想を上回る伸びを見せており、2022年もテスラの勢いは続きそうだ。

テスラの時価総額の推移は?

テスラの事業内容などについて触れる前に、時価総額の推移と年間の伸びの推移を紹介しておこう。企業の株価情報をまとめている「companiesmarketcap.com」によれば、同社の時価総額は以下のように推移している。

<テスラの時価総額の推移と年間の伸びの推移>
時価総額 時価総額の伸び(前年比)
2021年 1兆710億ドル 60.19%
2020年 6,880億9,000万ドル 783.42%
2019年 757億1,000万ドル 31.82%
2018年 574億4,000万ドル 9.77%
2017年 523億2,000万ドル 52.01%
2016年 344億2,000万ドル 9.13%
2015年 315億4,000万ドル 12.84%
2014年 279億5,000万ドル 50.97%
2013年 185億1,000万ドル 378.65%
2012年 38億6,000万ドル 29.87%
2011年 29億7,000万ドル 17.86%
2010年 25億2,000万ドル -
出典:companiesmarketcap.com

テスラが米ナスダック市場に上場したのは、2010年6月。当時自動車メーカーがIPO(新規株式公開)を行うのは、1956年の米フォード以来だった。もちろん、EVメーカーの上場はテスラが初めてだ。

IPOの後、2013年と2020年の大幅な株価上昇を経て、テスラの時価総額は2010年の25億2,000万ドルから2021年の1兆710億ドルへと、実に425倍になった。テスラが上場した直後に株式を買って現在まで保有し続けている株主は、莫大な含み益を抱えているはずだ。

ラインナップ充実、「サイバートラック」も生産開始へ

上場した時、テスラはEVとして「ロードスター」を展開していた。その後ラインナップを増やし、現在は「モデルS」「モデル3」「モデルX」「モデルY」を展開している。

各モデルの特徴を一言で表すなら、「モデルS」は高級価格帯モデル、「モデル3」は低価格の普及モデル、「モデルX」は高級SUV(多目的スポーツ車)、「モデルY」は人気の小型SUV、といった具合だ。

2022年には、ピックアップトラック型の新型EV「サイバートラック」の生産も開始する見込みだ。自動運転技術の開発にも積極的で、OTA(Over The Air)と呼ばれる無線アップデート機能によって、すでに販売した車両も将来は自動運転が可能になるという。

テスラを急成長させたイーロン・マスク氏の存在

テスラは、イーロン・マスク氏抜きには語れない。

創業間もないテスラに投資し、現在はCEO(最高経営責任者)として辣腕を振るうマスク氏。エンジニア出身で宇宙事業も手掛ける彼は、Twitterの投稿などで市場に期待感を与えながら、確実にテスラを成長させてきた。

最近EVメーカーの米リビアン・オートモーティブが上場し、上場直後に株価が高騰したが、マスク氏は同業の上場においても焦った様子を見せず、EVの量産やプラスのキャッシュフローを実現することがいかに難しいかを、Twitterの投稿で示した。

具体的には、2021年11月12日に「Tesla is only American carmaker to reach high volume production & positive cash flow in past 100 years(テスラは過去100年で大量生産とプラスのキャッシュフローを実現した唯一のアメリカの自動車メーカーだ」」とツイートしている。

2022年もテスラの快進撃は続くのか

「2022年もテスラの快進撃が続く」と予想する株式投資家は少なくない。

1月2日に発表された2021年の納車台数は、前年の約1.8倍の93万6,172台。 2021年第4四半期(2021年10〜12月)の出荷台数は30万8,600台とアナリスト予想の26万3,000台を大きく上回り 、新年最初の取引日にテスラの株価は13.5%も上昇した。 テスラの株式ホルダーは「お年玉だ!」などと言って喜んだ。

2022年は米テキサス州の新工場が本格的に稼働するため、生産能力はさらに高まる。このようにテスラにとってポジティブなニュースが続けば、現在時価総額で3倍弱の開きがある米Appleを抜いて 、時価総額で世界一になる日も遠くないだろう。

2022年もテスラ、そしてイーロン・マスク氏の動きに注目したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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