アディダス オリジナルスとカニエ・ウェストのコラボモデルは定価2万8,000円にもかかわらず、20万円以上の値で取引された。本来は気軽に履くものであるはずのスニーカーだが、なぜここまで高騰しているのだろうか(価格はすべて税抜き表示)。

「エアマックス狩り」から20年超 世界中でスニーカーブーム

今や世界がスニーカーに夢中になっている。日本では、2017年よりスポーツ庁がスニーカー通勤を推進。アメリカでは証券取引をヒントに考案されたスニーカー専門の転売サイト「ストックX」での取引が活況。ラグジュアリーブランドからも、“ダッドスニーカー”と呼ばれる“休日に父親が履くようなデザインのスニーカー”が登場、支持されている。バレンシアガの「Triple S(トリプルS)」はその筆頭だ。

日本でのスニーカーブームといえば今から23年前の1995年。ナイキが発売した「エアマックス95」は、それまでの概念を覆す斬新なデザインで一躍注目の的になった。当時は品切れでなかなか買うことができず、エアマックスを履いた人を複数の若者が徒党を組んで強奪した事件が起き、社会問題にもなった。40代なら「エアマックス狩り」という言葉を覚えている方もいるだろう。

特に人気だった通称「イエローグラデ」モデル(定価1万5,000円)は、38万円で売れたこともあったという。公にスニーカーがプレミアム価格で取引されるようになったのは「エアマックス」が契機だった。

間違いなく定価の倍以上で売れる2シリーズとは?

アパレル不況の荒波に飲まれることなく、スニーカーの売り上げ、利益が順調に伸びているのはなぜだろうか。

そもそもスニーカーは2万円前後で購入できる、比較的手の届きやすいブランド品だ。しかも、憧れのアーティストが着用しているモデルと同じものを、相応の値段で購入できる。供給される数が少ないほど稀少価値が高まる。ブランド価値を下げないために、シューズメーカーが意図的に生産数を制限している可能性も大いにあり、物欲をあおった結果、価格の高騰に拍車が掛かるという構図といえる。

発売すればプレミアのついた価格になるのが間違いないシリーズは、アディダス オリジナルスと音楽プロデューサー兼ラッパーのカニエ・ウェストがコラボした「YEEZY BOOST(イージーブースト)」シリーズ。そしてナイキとヴァージル・アブローがデザイナーのオフホワイトがタッグを組んで製作する「THE TEN(ザ テン)」コレクションだ。

「イージーブースト350」(定価2万8,000円)は20万円以上の値がつくこともザラで、ナイキ×オフホワイトの「エア ジョーダン1」(定価3万円)は39万8,000円でも買い手がつく状況だ。定価の10倍以上で売れるのだから、投資目的で転売するバイヤーも後を絶たない。

コラボに別注、製造中止モデルが狙い目

これらのモデルやシリーズの入手は難しいが、狙い目もある。ナイキ×コム デ ギャルソンの「VAPOR MAX(ヴェイパーマックス)」(定価2万円)は10万円以上で取引されているし、定期的にリリースされるナイキ×シュプリームのモデルは、未使用品であれば確実に定価の倍以上の値段になる。

最新モデルだけでなく、過去の名作にも光が当たっている。フランス製のアディダス「Syan Smith(スタンスミス)」、2000年頃に生産を中止してしまったアメリカ製のコンバース「ALL STAR(オールスター)」も、状態が良好であれば定価の倍以上で取引されることもある。生産国が異なるだけで付加価値がつくのだ。過去に購入して、靴箱に眠らせたままにしてあるスニーカーも、もしかするとその可能性を秘めているかもしれない。

人気モデルを入手するのはたやすくはないが、抽選モデルなら条件は同じ。スニーカーの専門サイトやブランドの公式インスタグラムで情報を逐一確認することで、購入できるかもしれない。投資効果は十分に見込めるので“履く投資商品”という見方もできるが、40代のビジネスパーソンなら足元のオシャレを楽しみつつ、スマートに乗り換えていくのが良いだろう。

文・名知正登(ファッションエディター)
 

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