無重力の宇宙では、排泄物がトイレから浮き上がり、宙を漂います。

宇宙飛行士たちはトイレ問題に悩まされてきたのです。

また宇宙では資源も限られてくるため、排泄物やゴミをできるだけリサイクルしなければいけません。

そこでNASAは将来の火星ミッションで活躍する「新しいトイレ」や「リサイクル」のアイデアを世界中の人から募ることにしました。

この新しいキャンペーンは、現在クラウドソーシング・プラットフォーム「HeroX」との提携によって開催されており、受賞者には賞金1000ドル(約11万4千円)が与えられます。

目次

  1. 長期宇宙旅行の課題
  2. 宇宙で使えるリサイクルアイデア募集!賞金総額2万4000ドル

長期宇宙旅行の課題

人間が生きていくには、「資源の循環」が欠かせません。

人間は食物を食べて排泄したり、酸素を吸って二酸化炭素を吐いたりします。

地球の環境システムは、そんな人間の廃棄物をリサイクルして、再び「消費できるもの」に変換してくれています。

NASAが火星ミッションに向けて「宇宙トイレ」のアイデアを募集中 賞金は「$1000」
(画像=宇宙ではリサイクルが課題 / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

しかし当然のことながら、宇宙空間では地球のリサイクルシステムの恩恵が受けられません。

長期宇宙旅行では、人工的なリサイクルシステムが必要になるのです。

さらに宇宙では廃棄物の処理の仕方にも注意を払わなければいけません。

例えば昔のジェミニ宇宙船では、トイレの吸引機や大便バッグにトラブルが生じたため、船内に排泄物が漏れ出しました。

宇宙飛行士たちは、「トイレの中で1週間を過ごしたような気分」を味わったと言われています。

もちろん現在の宇宙トイレではそんなこともなく、尿も飲料水として再利用されています。

NASAが火星ミッションに向けて「宇宙トイレ」のアイデアを募集中 賞金は「$1000」
(画像=ISSに採用された新型のトイレ / Credit:James Blair – NASA – JSC、『ナゾロジー』より引用)

しかし将来の火星ミッションは、地表での滞在も含め2~3年かかり、宇宙空間を航行する移動期間も9カ月に及ぶと考えられています。

そのためNASAは、さらに効率化されたリサイクルシステムや快適なトイレを生み出さなければいけません。

そして今回、世界中の人に賞金付きでアイデアを募集する「Waste to Base Challenge」というキャンペーンを開始しました。

宇宙で使えるリサイクルアイデア募集!賞金総額2万4000ドル

Waste to Base Challengeでは、トイレのアイデアだけでなく、以下の4つのカテゴリーで、廃棄物の管理とリサイクルに関するアイデアを募集しています。

  • ゴミ
  • 糞尿
  • 発泡スチロール
  • 二酸化炭素

NASAによると、「理想は、廃棄物のすべてが分解され、新しいものにリサイクルされること」としています。

もちろん完全には不可能ですが、できるだけ理想に近いアイデアが生まれることを期待しているようです。

NASAが火星ミッションに向けて「宇宙トイレ」のアイデアを募集中 賞金は「$1000」
(画像=宇宙の長期滞在に役立つリサイクルアイデアを募集する「Waste to Base Challenge」 / Credit:HeroX_Waste to Base Materials Challenge: Sustainable Reprocessing in Space(2022)、『ナゾロジー』より引用)

例えば、廃棄物をロケットの推進剤や3Dプリンターの原料に変換する方法を発見できるかもしれません。

また廃棄物を必要物にリサイクルして、何度も循環させることが可能かもしれません。

そして各カテゴリーの受賞者にはそれぞれ1000ドル(約11万4千円)が贈られます。

さらに審査員たちは4つのアイデアを「クラス最優秀賞」として選出し、追加で1000ドルの賞金を贈ります。

賞金総額は2万4000ドル(約274万円)であり、良いアイデアは今後のNASAのミッションに使用されるかもしれません。

ちなみに18歳以上であれば、個人・チームを問わず、世界中の人が参加できます。

もしかしたら将来、あなたの考えたトイレが火星や宇宙船で使用されるかもしれません。

一般人でもNASAのミッションの一端を担える稀なチャンスなので、ぜひ積極的に参加してみてくださいね。


参考文献

Waste to Base Materials Challenge: Sustainable Reprocessing in Space

Could YOU design a toilet for a trip to Mars? NASA challenges entrepreneurs to invent a way for astronauts to relieve themselves comfortably on the nine-month journey to the Red Planet


提供元・ナゾロジー

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