『その靴、可愛いね。』普段は私の服装など気にしてないと思われた娘からと言われたとき、嬉しいのはもちろんですが、この靴の良さが分かる年齢になってくれたという複雑な思いが交錯しました。単にリボンがついただけ、装飾過多のデザインシューズではなく、大人だから許される『ユルさ』と『可愛らしさ』が同居する、危ういバランスがこの靴の魅力だと思っています。
そうしたバランスを保つためでしょうか、最近ではリボンタッセルを素足で履くスナップが男性ファッション誌や関連するブログなどで多く紹介されるようになりました。ですが素足履きがいいという風潮に流されるのはなく、シーンをわきまえた装いというのが大人にとって求められると思います。
リボンタッセルが誕生した背景を知り、各ブランドの名品に触れることでもっとも相応しい一足(二足目でも構いませんが)に出会えると思います。そしてじっくりと付き合う事です。そうした真摯な毎日をきっと誰かが見ています。
リボンタッセルの誕生 華やかさと豊かさの象徴
タッセルローファーと呼ぶべきか、リボンタッセルと呼ぶのが正しいのか。ここではより華やかな語感を覚える後者で統一させてください。
リボンタッセルのタッセルとは、房飾りの事を指します。カーテンをまとめておくベルトや紐についている房飾りなどをタッセルと呼ぶ事から、房飾りがついたローファーをリボンタッセル(ローファー)と呼ぶようになりました。
これはハリウッドスターのポール・ルーカスが作らせたと言われています。一説では、彼がイギリスから持ち帰った房飾り(タッセル)のついたひも靴を「よりシンプルに」と靴メーカーに依頼したことから始まりだたったようです。そして実際に制作を担当したのがアメリカ靴の名門オールデンでした。つまりオールデンが初めてリボンタッセル作りに携わったことになります。
このローファーは大戦終結後(1950年代)、アメリカ東海岸学生、いわゆるアイビーリーガースに大流行しドレスなローファーとして根付いていきます。卒業後エリートビジネスマンや敏腕弁護士となっても、紐靴の代わりにリボンタッセルを愛用するようになりました。
ハリウッドスターやアイビーリーガーという華やかさと豊かさの象徴に愛されたリボンタッセルです。着こなしについて考えてみました。
ショップスタッフによる着こなし提案
ダンディズムが香る ストイックな英国テイスト
2つとも同じ方の着こなしです。スリッポンタイプなので基本的にはスーツとのコーディネートはNGなのですが、ルールがないシーンであれば、問題なくおさまります。若い世代がスーツに使えば、躍動感を表現でき、落ち着いた世代であれば、若々しさが漂います。無理せず、きちんとソックスを履いた足元、好感度アップ間違いなしでしょう。
こちらも同じように、ごくマジメに着こなしていますが、ネクタイの剣の長さをずらすことで適度なラフさを加えています。キメ過ぎない計算高いアレンジです。優等生なんだけど、成績もいいんだけど不良な友達も一目置いてる。モテるよね。
この2枚も同じ方の着こなしです。ニットベスト(カーディガン?)を着ていることから寒い時期だと思います。海外ではこうした時期でも素足というコーディネートを良く見かけますが、バランスを考慮すると靴下を使ったほうが好感度は高めです。普通だけど気遣いが見える、清潔感がある、これが女子ウケの鉄則です。
ヌケ感を語れる上級者向けのスタイリング
前半の着こなしとは真逆のベクトル。この着こなしのような素足、ベルトレスのタックパンツなど、いわば『今』を象徴するような着こなしです。しかし、ここで登場するのはショップスタッフのツワモノばかりです。彼らをそのままコピーしてもこうした空気感はなかなか出せない難易度の高い着こなしです。まず潔い装いを踏まえてから、こちら側に挑戦してみましょう。
初夏に相応しい、清々しいベージュジャケットと白パンの組み合わせをコードバンと思われるリボンタッセルがしっかり引き締めます。ジャケット・パンツとも短めにし、靴をポイントにした着こなしと思われます。
オリーブとベージュという組み合わせなので、柔らかい印象を崩さないためにはスエードのリボンタッセルを選んだという例です。ストールを使うというコーディネートは難易度が高く敬遠しがちですが、思い切る、成りきるという志が必要な場合もあります。
これは偏差値高めのコーディネートです。実力が試されるので慎重に挑戦しましょう。コートを着て、素足というバランスは海外のファッションスナップでよく見かけますが、厚い上半身と、彼らの濃さがあってこそ成立するワザかも知れません。挑戦すると決めたら、堂々と構えることが大切です。