コップに残った氷をバリボリと噛む癖はありませんか?
氷を噛んだり、砕いたりすることは、周囲の人には耳障りかもしれませんが、本人にとっては、心を落ち着かせる行為となっています。
中には、ストレス解消やリラックス効果を得ている人もいるようです。
しかし、この「氷を噛む」行為には、身体への害はないのでしょうか。
ピッツバーグ大学ヘルスサイエンス(UPHS)の小児歯科医、マシュー・クック(Matthew Cooke)氏が、氷を噛む危険性と治し方について説明しています。
「氷を噛む」危険なワケとは?
クック氏は「原因が何であれ、氷を噛む習慣はやめる価値がある」と言います。
一番の問題は、歯への悪影響です。
氷を噛み砕いていると、歯の表面を覆う「エナメル質」にヒビが入り、熱いものや冷たいものに敏感になる知覚過敏を発症する危険性があります。
もし歯の一部が欠けたりすると、その部分に虫歯ができやすくなります。
細菌が作り出す酸が、エナメル質の内側にあり、歯の軟らかい層として知られる「象牙質」に浸透しやすくなるからです。
クック氏いわく、すでに歯の詰め物や歯列矯正、その他の治療中の方ほど、氷を噛むことで歯にダメージを負うリスクが高いとのこと。
ダメージのて移動に応じて、簡単な詰め物から、麻酔を必要とする深刻な処置である根管治療まで、さまざまな修理が必要になります。
とくに、歯がまだ軟弱なお子さんは要注意です。
それでは、氷を噛む習慣をやめるには、どんな方法があるのでしょうか?
氷を噛む習慣をなくす4つの方法
クック氏は、効果的な方法として、4つのパターンを推奨します。
1つ目は、氷を口の中で溶かすようにすることです。
角氷を砕くのではなく、口の中に入れて溶かしてみましょう。
氷を噛むことにひんやりとした爽快感を求めているのなら、溶かすことで十分に満足のいく冷たさと爽快感が得られます。
最も大事なのは、歯や歯茎を傷つけないことです。
2つ目は、そのものズバリ、氷の摂取をやめることです。
氷を口に入れると、どうしても噛んでしまう人は、氷を使うこと自体をやめるといいかもしれません。
氷の他にも、飲み物を冷やす方法はいくつもあります。
グラスに氷が入っていなければ、誘惑に負けることもありません。
また、歯へのダメージを防ぐだけでなく、製氷機に残るバクテリアを避けることもできます。
3つ目は、柔らかい素材の氷に変えることです。
それでも氷を食べたい人は、かき氷のような柔らかい状態にすると良いでしょう。
ただし、その上にたっぷりとシロップをかけると、結局は歯に悪影響となるので、量を減らすか避けるようにしてください。
そして4つ目は、氷の代わりにヘルシーな食材を食べることです。
氷を噛むことに歯ごたえを求めているなら、野菜スティックやスライスしたリンゴ、レンコンなど、ほどよい食感のある食材に変えると良いでしょう。
氷ほど硬くない上に栄養価も高いので、一石二鳥です。
歯ごたえのある食材は、口の中を保護する唾液の分泌を促進し、虫歯を防ぎます。
また、野菜や果物の繊維質は、歯をきれいに保つのにも効果的です。
専門家の中には、「氷を噛む行為は鉄分が不足して貧血になっている証拠である」という意見もありますが、まだ科学的には実証されていません。
上記のいずれの方法でも氷を噛むのをやめられない場合は、食生活の改善や鉄分補給が助けになる可能性もあります。
永久歯になった歯は、一生使う大切な道具です。
食べ物を噛めなくなったり、虫歯に苦しむくらいなら、氷食をやめる方が良いでしょう。
参考文献
The Cold Hard Truth on Why You Should Never Crunch Ice With Your Teeth
提供元・ナゾロジー
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