タバコを吸っている人は重症化しやすく死にやすいそうです。
英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の研究者たちによると、タバコを吸っている人は新型コロナウイルスに感染すると、入院する可能性が60~80%高く、死亡率も上がるとのこと。
以前には米国ユタ大学の研究者らによって「喫煙者は新型コロナウイルスに感染しにくくなる」とする報告がなされていますが、この論文は現在、政治的な理由(詳しくは後述)によって撤回されています。
研究内容の詳細は、医学関連の科学雑誌『Thorax』に9月27日付で掲載されています。
タバコを吸う人は感染した後がコワイ
新型コロナウイルスの感染が続くなかで、同じく呼吸器系疾患の原因となるタバコの存在は注目を浴びることになりました。
そこで先行するいくつかの研究では、新型コロナウイルスに対してタバコが与える影響が調べられてきました。
しかし残念なことに、結果は研究ごとにまちまちであり、混乱の要因となっていました。
そこで研究者たちは英国の42万人の被験者たちのデータを対象にして、新型コロナウイルスと重症度の関係を調べるために、新たに検査記録・入院データ・死亡率などを体系立てて調べました。
結果、新型コロナウイルスに罹患した場合、喫煙者は非喫煙者に比べて入院してしまうほど症状が悪化する確率が60~80%も高く、死亡率も高めであることが判明。
この結果は、タバコを吸っている人々は、新型コロナウイルスに感染した後に、重症化・死亡しやすいことを示します。
一方で、今回の研究でも実際にタバコを吸っている人が新型コロナウイルスに感染しやすいかどうかを調べられたものの、タバコが感染率を上げるという観察結果は導き出せませんでした。
次に研究者たちは42万人の遺伝子データを分析して、喫煙者になりやすい遺伝子を持つ人間のデータを分析しました。
すると喫煙者になりやすい遺伝子を持つ人間は、そうでない人間に比べて新型コロナウイルスの感染しやすさが45%高く、入院リスクも60%高いことが判明。
さらに大量喫煙にかかわる遺伝子(ヘビースモーカー遺伝子)を持つ人間は、2倍感染しやすく、5倍入院しやすく、10倍死亡しやすいことが示されました。
ただ、こちらの遺伝子に基づく分析はタバコを実際に吸っているかどうかではなく、タバコを吸いやすくなる遺伝子と新型コロナウイルスの関係性を述べているものであり、直接的な結果ではありません。
以上の結果から、タバコを吸っている人は新型コロナウイルスに「感染した後」に重症化・死亡しやすくなるのは間違いなさそうです。
一方、タバコを吸うことが新型コロナウイルスへの「感染そのもの」を増やすかどうかにおいては、遺伝学的にはあり得るものの、実際の観察結果ではそのような差はみられないと結論付けられます。
以降は、以前の論文が撤回された理由となります。
タバコ業界に関連する人間が行った研究は掲載してはならない
現在、欧州呼吸器学会では人々の健康を理由に、タバコ業界と関係がある人間の学会への参加、会議への出席、学界誌への論文掲載を禁止しています。
2020年7月30日に『European Respiratory Journal』に掲載された「喫煙者は新型コロナウイルスに感染しにくくなる」との研究内容を含む論文の著者の一部には、タバコ業界やタバコ業界が資金提供した組織と関係する人間が含まれおり、撤回されることになりました。
一方、論文を撤回した『European Respiratory Journal』の編集者らは、論文の科学的内容には問題がなかったと述べています。
提供元・ナゾロジー
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