人類の歴史の中で、最も価値のあるモノの代表として扱われるのが、金(ゴールド)です。
海賊は金を求めて大海を冒険しましたし、錬金術師は鉛を金に変えようと奮闘しました。
また、国家経済の基盤となったり、光り輝く宝飾品として世のお金持ちを虜にしています。
金は、今年8月の時点で、1グラムあたり約57ドル(およそ6200円)の価値がつけられています。
しかし、その希少性と本質的な価値にもかかわらず、金は私たちにとって最も価値のある物質ではありません。
ここでは、金より価値のある10の物質について、ランキング形式で発表していきます。
1位の値段を聞くと卒倒してしまう可能性があるので、ご注意を。
第10位 冬虫夏草
冬虫夏草(とうちゅうかそう)は、きのこの一種で、広くは、セミや蛾の幼虫に寄生するセミタケ、サナギタケなどを指します。
ただ、中国では、チベットを原産とするオオコウモリガの幼虫に寄生するオフィオコルディセプス・シネンシスのみを「冬虫夏草」と呼びます。
また、冬虫夏草という名前は、チベットで「菌が冬は虫の姿で過ごし、夏になると草となる」と考えられたことから命名されました。
これらの菌は、土中にいる幼虫に寄生して体内でゆっくりと成長。春頃に幼虫の養分を利用して菌糸を伸ばし始め、夏に地面から顔を出します。
地中部は幼虫の姿がそのまま残っていますが、地上部は、子実体のみの冬虫夏草となります。
採取された冬虫夏草は、乾燥後、漢方の薬や薬膳領地の食材、バイアグラなどとして重宝されます。
冬虫夏草は非常に希少であり、1グラムあたり110ドル程度で、金の約2倍の価値があります。
第9位 イリジウム
「イリジウム」は、地殻に存在する元素の中で最も希少なものの一つです。
虹のように様々な色調を示す事から、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられました。
地殻中にはほとんどなく、主に地球内部のマントルか、あるいは隕石の中に含まれています。
イリジウムは1803年に発見され、これまでに見つかっている金属の中でも、一二を争う密度の高さを誇ります。
また、耐食性に優れているため、プラチナを含む合金の硬化剤として最適です。
他にもさまざまな用途があり、薄型LEDテレビや高級な万年筆のペン先にも使用されています。
イリジウムは、その希少性と入手の難しさから、価値も非常に高いです。
1グラムあたり約215ドルで、金の約3.75倍の価値があります。
第8位 ロジウム
市場の変動にもよりますが、世界で最も高価な金属の一つであるのが「ロジウム」です。
ロジウムは、プラチナグループの貴金属に属する銀白色の金属で、腐食しにくく、化学的に不活性という特徴があります。
ロジウムは主に、自動車の三元触媒(排出ガス中の3種類の有害成分を浄化するための触媒)に使われており、その使用量は世界全体の約80%を占めています。
また、防サビ効果もあるため、ホワイトゴールド(白色金)や純銀などのコーティングに適しており、誰もが一度はロジウムに触れたことがあるかもしれません。
しかし、ロジウムの主な消費分野は自動車産業であり、この使い途の狭さから価格が高騰しています。
コロナが流行する前は、1グラムあたり950ドル前後で取引されていましたが、現在の価格は少し冷え込んでいます。
それでも8月時点で、1グラムあたり550ドルの値をつけており、金よりはるかに価値があります。
第7位 ヘビの毒
「ヘビの毒」というと、大ケガや死をもたらす悪いものというイメージが強いでしょう。
確かに、ヘビ毒がそのまま体内に注入されてしまうと、大惨事を起こしかねません。
しかし、ヘビ毒には、抗生物質や鎮痛剤といった医薬品の一部として、非常に高い価値があります。
ヘビ毒から作られた鎮痛剤は、血栓を溶かしたり、血圧を下げたりと、当たり前のように使われています。
一方で、毒の採取は一筋縄ではいきません。
ヘビの口を開かせて、乳搾りをするように、毒液を抽出しなければならないため、危険性が高く、手間やコストもかかります。
さらに、最も凶暴な毒ヘビほど、毒の価値は高くなります。
例えば、キングコブラの毒には、強力な鎮痛成分が含まれており、その毒の価格は1グラムあたり3785ドルです。
また、ヘビの中で最も強い神経毒を持つとされるサンゴヘビでは、1グラムあたり4000ドル。
金の11倍弱の価値があります。
第6位 大紅袍(ダーホンパオ)
まさか世の中に”金より価値のあるお茶が”存在するとは思いもしないでしょうが、「大紅袍(ダーホンパオ)」はその一つです。
ダーホンパオは、同名の木の茶葉から作られる中国茶で、その製法は伝統を重んじた厳しいものです。
価値が高い理由は、ダーホンパオの母樹が世界に6本しか残っていないことに由来します。
中国・福建省にある武夷山(ぶいさん)の断崖に生える母樹は、国宝に指定されており、盗難や伐採の危険性を鑑みて、政府が厳重に監視しています。
ここから茶葉を得るには、摘む・枯らす・冷やす・加工する・炒る・練る・焼くの7つの工程が必要です。
ダーホンパオの茶葉は緑褐色で、ランの香りがし、後味が長く続きます。
一般的な茶葉と違って、ダーホンパオは9番茶まで出すことが可能です。
また、ダーホンパオには血行を良くする成分が含まれているため、あらゆる病気の治療に使われてきました。
ダーホンパオの茶葉は1グラムで、金1グラムの25倍近くの価値があります。
第5位 プルトニウム
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がお好きな方は、「プルトニウム」と聞いてピンと来るかもしれません。
そう、タイムマシーンのデロリアンを時空に飛ばすための燃料に使われたのが、プルトニウムでした。
しかし、デロリアンに乗らないのなら、プルトニウムに接する機会もないでしょう。
プルトニウムは、放射性の高い物質であり、骨に蓄積する恐れがあるため、取り扱いには危険が伴います。
(映画内でも、防護服を着ていたことを思い出してください)
プルトニウムの同位体には核分裂性のものがあり、核兵器や原子炉の核となる物質です。
1938年に初発見されましたが、希少性が高く、収集は困難をきわめます。
人の手で合成されたのは、1940年頃のマンハッタン計画が初めてです。
どのようにして入手したかにかかわらず、その価値は非常に高く、金の70倍以上の価値があると言われています。
第4位 レッドダイヤモンド
ダイヤモンドと聞くと、どうしても無色透明な宝石を思い浮かべがちです。
しかし中には、赤色をしたダイヤモンドなるものがあります。
この「レッドダイヤモンド」は、ダイヤの中で最も希少価値の高い宝石用原石です。
今日までに見つかっているレッドダイヤモンドは30個程度で、そのほとんどが半カラット(約0.1g)以下となっています。
ここからは値段が大きく跳ね上がり、レッドダイヤモンドは、市場の状況にもよりますが、1グラムあたり500万ドルという高値で取引されます。
2011年に最大のものが800万ドルで落札されましたが、その大きさはわずか5.11カラットで、1グラムの金より少し重い程度でした。
レッドダイヤモンドの価値は、金の8万7719倍と推定されています。
もちろん、この小さな宝石が何千個も掘り出されれば話は変わってきますが、とんでもなく希少なので、そんなことは起こりそうにありません。
第3位 カリホルニウム
「カリホルニウム」は、1950年に初めて発見された合成元素です。
カリフォルニア大学の放射線研究所で作られたことにちなんで名付けられました。
実用化されている元素であり、合成されてもいますが、生産量は非常に少なく、きわめて高価です。
いくつかの同位体が地殻中でも発見されていますが、最も一般的な同位体(カリホルニウム252)の半減期がわずか2.6年であるため、まとまった量が見つかることはありません。
最も半減期が長いのは、カリホルニウム251の898年です。
最初に製造されたときは、半減期が44分のものが約5000個しか作られませんでした。
カリホルニウムは、さまざまな産業分野で多様な使い途があります。
同位体の中には中性子を放出するものがあり、これは原子炉を起動させるためによく使われます。
また、脳腫瘍や子宮頸がんの治療にも使用されるものもあります。
大量生産ができないため、カリホルニウムは価値が高く、1グラムで約2700万ドル。
市場で価格は変動しますが、平均して、金の約47万3684倍の価値があります。
第2位 フランシウム
「フランシウム」は、自然界で最も希少価値の高いアルカリ金元素の一つです。
地殻中には、常に20〜30グラムほどしか存在しません。
トリウムやウランにも微量に含まれていますが、半減期が22分と極端に短く、常に崩壊を繰り返しています。
また、放射性物質であるため、合成して作ることが困難です。
これまでに生成・分離された最大のサンプルは、30万個の原子で構成されていましたが、それでも観測するには小さすぎます。
フランシウムは非常に希少かつ、急速に崩壊してしまうため、商業的な用途がありません。
現在の唯一の用途は科学的研究ですが、その中で「ある種のガンの診断テストに役立つかもしれない」と言われています。
1グラムのフランシウムの価格は約10億ドル。しかも1時間も経たないうちに消えてしまう10億ドルです。
価値は、金の1754万3859倍になります。
第1位 反物質
「反物質(Antimatter)」は、多くの人にとってSFの世界のものですが、現に実在し、20世紀初頭からその存在が知られていました。
この世にある物質の最小単位を「素粒子」と呼び、一般に、粒子と反粒子が対になって存在します。
粒子と反粒子は、プラスとマイナスのような関係にあり、お互いが出くわすと、打ち消しあって消滅してしまいます。
この粒子で構成されるのが物質で、反粒子で構成されるのが「反物質」です。
しかし、私たちの身の回りに反物質は存在しません。もし反物質に触れてしまうと、物質である私たちの身体は爆発して、消滅するでしょう。
反物質は現在、粒子加速器で作ることができますが、問題は物質と接触すると両方が消滅してしまうことです。
普通の容器では保存できないので、電磁界の中で保存しなければなりません。
それでも安定した保存は難しく、これまで最も長く保存できた期間でも405日です。
反物質は、医療用の画像処理や宇宙船の推進力など、理論段階のものを含め、多くの用途が考えられています。
反物質は値段はありませんが、NASAが1999年に見積もった結果、1グラムで約62.5兆ドルと算出されました。
これは気の遠くなるような値段で、現在、存在が知られているものの中で最も高価なものとなっています。
金と比べると、反物質は10億9649万128070倍の価値があります。
参考文献
Top 10 Things Inherently More Valuable Than Gold
提供元・ナゾロジー
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