今月15日にトンガで発生した大規模な海底火山噴火は、悪夢のような大災害ですが、これは惑星科学にとって重要な知見をもたらす出来事になりそうです。
広島原爆の500倍に相当すると計算された噴火爆発は、水と溶岩がどうのように相互作用するかを知る貴重な機会を提供しています。
NASAの科学者たちは、これが火星や金星の地形形成を理解するために役立つと考えているようです。
惑星科学にとって重要な出来事
プラハにあるチェコ科学アカデミー(CAS)地球物理学研究所の惑星火山学者ペトル・ブロシュ(Petr Brož)氏は、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山のここ数週間の進化を研究することは「惑星科学にとって重要だ」と話します。
「ここで得られる知識は、火星や太陽系内の他の場所で、水と溶岩の相互作用がどのような結果をもたらすか明らかにするかもしれません」
トンガの海底火山活動については以前から活発化していることがわかっており、2015年には、海底火山から噴出した火山灰と溶岩で火山島が急速に形成されている様子が確認されています。
このため、NASAのゴダード宇宙飛行センター( GSFC)の研究者などは、ここにかなり関心を向けていたのです。
この画像は2013年と2015年の同一地点の衛星写真ですが、それまで存在しなかった島が数年で形成されているのがわかります。
赤丸の場所を拡大したのが下の画像です。
火山島は通常、侵食が激しく数カ月程度しか続かないため、形成される過程をじっくり研究することはできません。
しかし、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイは何年も生き残ったため、研究者たちは衛生観測や海底調査を使用して、島がどのように形成され、侵食され、持続するかを調査することができました。
海底噴火は陸上で発生するものとは大きく異なり、さまざまな地形を生み出す可能性があります。
大量の海水が存在する場所で起きた噴火は、爆発がより激しくなる可能性があり、また、溶岩は急速に冷却されるため、溶岩から放出されるガス量を制限できます。
ここで見られた知識は、火星で見つかった小さな円錐形の火山が、数十億年前にまだ海の存在していた環境でどのように形成されたかを理解するのに役立つのです。
また、香港大学の惑星科学者ジョセフ・ミチャルスキー(Joseph Michalski)氏は、海洋環境は火星のような小さい低重力の惑星環境を模倣しているため、低重力で形成される特徴についても光を当てるものだ、と話します。
フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイは、昨年12月から連続的に小さな噴火を起こしていて、火山島は急速に拡大しました。
そして1月15日、火山は突然の巨大な爆発を起こしたのです。
ほんの週週間前まで大きく広がっていた火山島は、現在ほとんど残っていません。
ずっとこの火山島を研究していたNASAのジェームズ・ガービン(James Garvin)氏のチームは、島の侵食や安定性に関する理論モデルの論文を書き上げ、提出する直前でしたが、この突然の出来事に研究を仕切り直さなければならなくなったと語ります。
これは1945年に広島に投下された原子爆弾の500倍以上に相当する威力の爆発だったと推定されています。
未曾有の大災害ですが、研究者たちはこれら一連の劇的な出来事は、惑星の進化や火星の地形を特徴づけた要因について、時代の最前列で研究できる機会であると考えています。
ここから研究者たちは惑星の歴史を語る新しい物語を構築できるだろうと語っています。
参考文献
How the Tonga eruption is helping space scientists understand Mars
Expanding Islands In The South Pacific
提供元・ナゾロジー
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