ダイハツのDNGAプラットフォームを採用し、今では貴重な5ナンバー・サイズ、AセグメントのSUVにニューブランドということで発表時から話題を集めたダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」に試乗した。

5ナンバー・サイズの価値

現在のマーケットはクロスオーバーSUVが主流だが、SUVはBセグメントでも大きめにデザインされ、Cセグメントに近いサイズにするなど、より大きなサイズにするのが定番だ。しかし「ロッキー」と「ライズ」はAセグメントのサイズを守り、全長3995mm、全幅1695mmで、今や貴重な5ナンバーサイズのボディとし、車両重量もFFモデルで970~980kgと軽量にまとめ上げ、小さいことの価値を主張している。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

そのため、市場でもライバルはスズキ・クロスビーやシエラあたりしか存在せず、SUVに乗りたいがボディサイズが大きいのはイヤという人にとっては、ジャストフィットするクルマだ。ダイハツのメイン・ターゲットは軽自動車からの乗り換えユーザーで、トヨタの狙いはミニバンやCセグメントのクルマからのダウンサイザーを取り込むという販売戦略も巧みだ。
 

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また、「ロッキー」と「ライズ」はニューブランドにふさわしく、最新のDNGAプラットフォームとDモノコック・ボディ、シャシーも最新スペックで、ダイハツ・オリジナルのベルト式CVTとギヤ駆動を並列配置する「D-CVT」を搭載。エンジンはダウンサイジング・コンセプトの1.0L・3気筒ターボを採用するなど、メカニズム的にも全面的に最新のユニットを投入した、意欲的なクルマということができる。
 

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さらに5ナンバーのコンパクトサイズであるものの、ラゲッジ・スペースは上下可変式デッキボードを採用し、下段にした時で369Lを確保し、ボードを取ると80Lのアンダーボックスのスペースを使用することができるなど、高い利便性を備えておりBセグメントのクルマを上回るユーティリティを持っている。
 

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また、最小回転半径4.9m(17インチタイヤは5.0m)という取り回しの良さ、高めのシートポジションによる視界の良さや乗り降りのしやすさという市街地での扱いやすさもアピールポイントだ。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

そしてステレオカメラを使用した、運転アシスト機能を備え最上級モデルはACCを装備。同時に最新のスマートフォン連携を実現するなど、このクラスの常識を越える最新の装備を充実させている点も評価できるところだ。

アップライトな運転姿勢

試乗したロッキーは16インチ・タイヤを装着した中心グレードの「X」。ライズは最上級の「Z」グレードでこちらは17インチ・タイヤを装着したモデルだ。ロッキーは、これまでのダイハツのデザインとは少しテイストの異なる、スクエアでソリッドなデザインが印象的だ。
 

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最上級グレードの「ライズ Z」。ボディカラーはターコイズブルーマイカ・メタリック(画像=AUTO PROVEより引用)

一方のトヨタのライズは、スクエア系のデザインを生かし、フロントグリルやバンパーのデザインを変えることで、上級SUVのRAV4に通じる雰囲気に仕上げ、ダイハツとトヨタでのデザインの差別化を図っている。
 

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シートに座ると、ドライビングポジショがかなりアップライトである点に気づく。もちろんSUVは着座位置が高めなので違和感はなく、乗り降りがしやすい、運転中のアイポイントが高く視界が広い、ということで運転しやすい。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

また運転席がアップライトであることは居住スペースの拡大に役立っており、リヤシートに座っても十分な足元スペースが確保されているわけだ。リヤシートの足元スペースもBセグメントのハッチバックより余裕が感じられ、前後シートの間隔は900mmと十分に広い室内スペースだ。

1.0Lの1KR型3気筒ターボエンジンは低速トルクが太く、低速でもフレキシブルで動力性能は十分だ。トランスミッションはD-CVTで、発進は金属ベルトのCVTで途中からギヤによるダイレクト駆動が加わるシステムだ。加速フィーリングにはリニア感があるが、アクセルオフでの回転落ちがもう少しレスポンスが向上すればという気がした。
 

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98ps/140Nmの1.0L・3気筒ターボ・エンジン(画像=AUTO PROVEより引用)

市街地では静粛性も満足できるレベルで、荒れた舗装路でもフロアからの振動はよく抑えられている。ただ、急加速などでエンジン回転数が4000pmを超えるとエンジン・ノイズがかなり気になってくる。

4WDモデルが秀逸

乗り心地はSUVらしさを求めてやや固めの設定だ。そのためコーナリングでのロールも少なく、ピッチングもよく抑えられ、ブレーキを掛けたときのアンチダイブ効果も高くフラットな乗り心地といえるが、荒れた路面ではボディの動きの収まりがもう少し欲しい。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

17インチのタイヤは16インチより少しゴツゴツ感が強まる。標準装着タイヤで比べる限り16インチサイズの方がバランスが良い感じだ。

ところが、「G」グレードの4WDモデルに乗ってみると17インチでもバランスが良く、乗り心地、接地感も1枚上手だ。当然ながら4WDモデルはFFモデルより約70kg重く、リヤの荷重も大きい。さらにリヤ・サスペンションの構造も専用で、それが結果的に乗り心地や接地感の良さにつながっているのだろう。

 
4WDモデルは、新開発の「ダイナミックトルクコントロール4WD」で、ジェイテクト製の電子制御カップリングを採用し、走行条件に合わせて自在にリヤの駆動力を可変制御するシステムになっている。

メーターパネルにある駆動力配分のモニターを見ると、ドライ路面でも発進加速、急加速、コーナリング時などに瞬間的にリヤに駆動力が配分されるなど、積極的に作動していることがわかる。雨天などではよりリヤの駆動力配分がアップするはずだ。

4WDモデルはリヤのアンダーフロアのラゲッジスペースがFFモデルより少し浅いものの、乗り心地や車体の動きのバランス、巧妙な4WDシステムをなどを考えると、FFモデルを上回る付加価値があると感じた。

コネクト機能も新たな魅力

ダイハツはこのロッキーから、新開発の「ダイハツ・コネクト」を導入している。試乗車はオプションの9インチ・ディスプレイ・オーディオを装備しており、SDL、Apple Carplayによりスマートフォンの連携が可能だ。そのためナビゲーションもスマートフォン・アプリのナビを使用でき、音楽、ストリーミング、SNS、ニュースや天気予報、情報検索なども利用できるなど、従来のカーナビ装備より、はるかに高機能になっている。
 

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ディスプレイ・オーディオとスマートフォンを接続。Lineカーナビを起動した状態。ナビ画面は9インチ・ディスプレイに表示される(画像=AUTO PROVEより引用)

さらに事故や故障時に対応する「つないでサポート」や、ドライバーの状況を家族などの見守り者にメール送信する「見えるドライブ」、駐車位置情報やガソリン残量などクルマの状況を記録し、スマートフォンで確認できる「見えるマイカー」、そして車検や点検時期をディスプレイに表示し、メール送信により告知する「つないでケア」の機能を搭載。

またオプションのデイスプレイ・オーディオ、またはナビを装着すると車内Wi-Fiサービスも1GB/月を無料で提供されるなど、従来のこのクラスでは考えられない、コネクト機能を利用することができる点も大きなアピールポイントだ。

なおライズはトヨタ仕様のコネクト機能を装備し、ディスプレイ・オーディオを選択するとSDL規格のスマートフォン連携が可能になっている。
 

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ステレオカメラを採用した新世代スマートアシスト(画像=AUTO PROVEより引用)

安全装備としては、新世代のスマートアシスト、「G」グレード以上は全車速追従ACC、レーンキープアシストなども含むスマートアシスト・プラスが装備されるなど充実している。

ロッキーとライズは5ナンバーならではの取り回しの良さ、機動性、経済性の高さに加え、安全装備、コネクト機能の充実でも、これまでのクラスの常識を越えるレベルに達していることは評価すべきである。<松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

【主要諸元】
ダイハツ ロッキー 諸元表
トヨタ ライズ 諸元表

【価格】

ダイハツ ロッキー

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(画像=AUTO PROVEより引用)

トヨタ ライズ

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(画像=AUTO PROVEより引用)

提供元・AUTO PROVE

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