前回、2020MY(モデルイヤー)のR35型GT-Rニスモについてお伝えしたが、一方で標準車のGT-Rにはどんな改良が施されたのか。今回は標準車のGT-Rと「GT-R50周年記念特別仕様」モデルについてお伝えしよう。

トータルバランス

前回お伝えしたようにNISMOはよりRゾーンへと深化が加速している。つまりレーシングゾーンでありピュアなレーシングカーであるGT3からのフィードバックを多く盛り込んだ変更が取り込まれている。

その一方で標準車は、GT-Rの本来の姿ともいうべき「ロードゴーイングカー」としての深化が加速しているのだ。加速性能、ハンドリング、そしてクォリティにおいてトータルで深化させている。
 

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手前がGT-Rニスモ2020MY。奥が標準車のGT-R 2020MY(画像=AUTO PROVE)

新ターボチャージャー

標準車のタービンも変更された。レースエンジンに採用される技術のひとつ「アブレダブルシール」技術だ。ターボハウジングに樹脂を射出することで、空気漏れを防ぐシール機能を持たせる技術だ。ハウジングとコンプレッサーブレードとおのクリアランスを最小化するもので、吸入空気の漏れを最小限にし、過給レスポンスを向上させることができる。
 

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タービン内での空気漏れを防ぐシーリングでレスポンスを向上(画像=AUTO PROVE)

ハードパーツとしてコンプレッサーブレード、タービンブレードともに、17MYと同様にφ5612枚翼、φ53翼9枚という構成には変更ないが、こうしたシール技術によりわずかな変更が可能になり、ドライバビリティを向上させている。
 

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17MYに対してのレスポンス向上がデータ上明確に差がある(画像=AUTO PROVE)

このアブレダブルシールにより、過給効率が上がり、過給し始めのレスポンスが向上しているという。ニッサンのレスポンス解析によれば、1秒間あたりのトルク上昇速度が全域で約5%向上しており、50~60km/h/ 3速で2800rpm 4/8のアクセル開度加速の加速Gが17MYより高いGを発生させていると説明している。
 

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実用域での加速レスポンスが向上しているという解析データ(画像=AUTO PROVE)

TCUによるアグレッシブな制御

こうしたタービンの進化により、その効果をより実感させるためにDCTの制御変更も行なっている。2020MYではTCU(トランスミッションコントロールユニット)を新設定し、Aレンジ/Rモードの特性変更を行ない、積極的に低いギヤを選択する制御になっている。

ASC(アダプティブシフトコントロール)のシフトスケジュールをRモード専用に設定。コーナー手前で低いギヤを選択し、ダウンシフトによるターボラグを発生することなく、すぐさま過給されコーナーを脱出できるということだ。これが17MYモデルでは進入時に速度とシフトダウンがマッチングしないケースがあったということだが、TCU制御によりドライバーの意図通りに加速体制に入ることができるようになった訳だ。
 

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トータルバランスを向上させる狙いで究極のロードゴーイングカーへと深化した(画像=AUTO PROVE)

また同時に低ミュー路でABSが作動するシーンで、車輪速が急減することでダウンシフトやエンジンのオーバーレブする懸念があったが、2020MYでは車輪速の影響を受けない車体前後Gの信号をTCUのプログラムに取り込み、車体にかかる前後Gにより路面状況を判断。これによりABSが作動しても低いギヤが選択できスポーティな走りができるようになった。

サスペンションチューニング

こうしたパワートレーンの深化に伴い、サスペンションではステアリングを切ってからヨー発生までの応答性を3%向上させる変更を行なっている。と同時に、乗り心地の質の高さも向上させている。こうした乗り心地の変更は一般道を40km/h程度で車列に並んで走行している場合などで、その進化向上を体感できる。まさに究極のロードゴーイングカーへと深化している。

ブレーキの深化

ブレーキブースターのチューニングを行ない、初期の効き感を向上させ、短いストロークで効きがが立ち上がる変更を行なっている。こうした変更に伴い、ペダル操作性も向上させている。
 

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カーボンセラミンクなみに高い減速度を出せるようにチューニングした(画像=AUTO PROVE)

これはブレーキの高剛性化と感じる部分をペダル操作において不安がないように、大きな力を込めやすい足首の角度の領域を増やす改良を行なって対応している。ペダル操作性に磨きが掛かったということだ。

 
そしてホイールはGT-R史上最軽量の新デザインホイールを採用している。さらに外側面の剛性も歴代トップという。こうした変更もバネ下軽量により乗り心地に効果を発揮するわけだ。

エクステリアデザイン

ボディカーラーに新色が加わった。「ワンガンブルー」は従来のベイサイドブルーの陰影感をキープしながら、より鮮やかさを向上。また青透明ベースに光干渉顔料(シリカフレーク)を添加し、ベイエリアでの日没の余韻を感じさせるミステリアスな色の変化を愉しめるという。

そしてチタンマフラーだ。職人がひとつひとつ手作りで加工した青く輝くエキゾーストフィニッシャーを採用している。
 

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記念車のエンブレムとチタンマフラーが目を引く(画像=AUTO PROVE)

50周年記念車の投入

日本のモータースポーツの一時代を築き、スーパースポーツへと成長を遂げたGT-Rを記念するモデルだ。「GT-R 50th Anniversary」はプレミアム エディションをベースにドレスアップされている。
 

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新色のワンガンブルーに目立つホワイトのストライプ(画像=AUTO PROVE)

ボディカラーは3色でブルーには白のストライプ、白ボディには赤のストライプ、シルバーボディには白のストライプがデザインされている。ブルーボディにはブルーの切削アロイホイールが装備される。

また、オーナメント、エンブレムにも「50th Anniversary」のロゴがリヤエンブレムやホイールのリム、センターコンソール、メーター内、そしてシートなどに描かれている。

価格

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(画像=AUTO PROVE)

50周年記念モデル価格

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提供元・AUTO PROVE

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