「富裕層はワインを飲む」そんなイメージを持っていないだろうか。実際、筆者の回りにいる高収入経営者でお酒を飲む人は、例外なくワイン好きで銘柄にも詳しい。ある不動産経営者は1本数十万円もするワインを指して「熟成と値上がり益を期待して買った。値上がりしなければ自分で飲むという出口戦略がある」と話をしてくれたことがある。

なかには趣味が高じて飲むだけでは飽き足らず、自分のワイナリーを持ってしまった人もいる。今回はワインを飲み、集め、そしてワイナリーを持ってしまった経営者の話をお伝えしよう。

ワイン愛飲家、コレクター、そしてワイナリーオーナーへ

その経営者は元々ワイン愛飲家だった。ビジネスで成功を収め、趣味でワインを楽しんでいた彼はいつしかコレクターとなり、Opus Oneを中心にロマネ・コンティ、ラ・ターシュ、エシェゾー、リシュブールなどの高級ワインを多数保有、最終的には自前のワイナリーを設立するまでになった。

そのコレクションを拝ませてもらう機会があったのだが、ワインコレクションというよりワインの博物館といったほうが正しいだろう。1本1000万円以上するものや、熟成を通り越してワインとして飲めなくなってしまったヴィンテージなど珍しいワインがズラリ。これらのコレクションの総額1億円以上と思われる。

経営者はワイナリーをどう見る?

経営者はワイナリーを「稼げるビジネス」とは位置づけていないのは明らかだ。ワイナリーは設立に建物や醸造設備などで、数千万から数億円という巨額の資本が必要となる。また、ブドウは植樹から果実を付けるまで数年間かかるのでその間は一切キャッシュフローを生み出すことはない。「設立からワイン販売まで最低5年位はかかる」という専門家もいるほどで、これほどの巨額の費用を一般人が趣味で始めることは不可能である。

いざワインの製造が始まっても、フランスやカリフォルニアのブランドワインのように高額で売れることはほとんどない。広告宣伝などのマーケティング活動なくして売上をあげることも難しい。国内のワインマーケットは海外のブランドワイン勢だけでなく、国内の大手メーカーも多数参入するレッドオーシャンである。自前で持つビジネスとして考えると、5年もの歳月と、数千万から数億円のイニシャルコストに加え、巨額のランニングコストはどう考えても割に合わないのだ。

それでもワイナリーを保有する理由は?

それでもワイナリーを保有する理由は何なのだろうか。筆者が思案の末にたどり着いた答えは「育成ゲーム」である。経営者の仕事はズバリ「育成」である。自分のビジネス、資産運用、後世の担い手など形は変われど、それまでの人生で培った知識や経験、ノウハウを総動員して育てるのが仕事である。

彼らにとってワイナリーも育成対象そのものだ。ワインは製造を開始してから何年、時には何十年も熟成させて最高の名作になる。その待っている期間たるや、どんな仕上がりにあるだろうかと思案を巡らせる事に醍醐味があると言えよう。そんな「育成」という概念が色濃く出るワインという趣味を生産する側に回ることは究極の育成ゲームだ。

ぶどうの品種や土、職人や熟成環境などあらゆる要素がワインの育成に直結している。これほどお金や知識の必要な育成ゲームは他にないだろう。そんな育成ゲームの末に生み出されるワインはまさに世界にたった一つの芸術品である。

高収入経営者が辿り着く育成ゲーム?

育成することにかけてはプロ中のプロである高収入の経営者にとっては、ワイナリー経営は時間とお金をかけて取り組めるやりがいのある育成ゲームと考える。ビジネスや投資、人材の育成に飽きて暇になった経営者の行きつく先はワイナリーというのは、とても面白くある意味納得感のある話と言えよう。

文・黒坂岳央(高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)/ZUU online
 

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