不動産投資ローンの繰り上げ返済するメリット・デメリット どんな人が繰り上げ返済をしたほうがいいのか?

2019.11.29
INVESTMENT
(写真=designer491/Shutterstock.com)
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不動産投資のローンを(一部)繰り上げ返済したい理由には、「利回りを改善したい」「金利上昇リスクを軽くしたい」などがあるだろう。ここでは、繰り上げ返済のメリット・デメリットと、繰り上げ返済でどれくらい得をするかを解説していく。

目次
1,繰り上げ返済をする前の2つチェックポイント
2,不動産投資の繰り上げ返済の3大メリット
3,不動産投資の繰り上げ返済の3大デメリット
4,繰り上げ返済を実行するときのポイント
5,繰り上げ返済のシミュレーション
6,どんな人が不動産投資の繰り上げ返済に向いているのか?

1,繰り上げ返済をする前の2つチェックポイント

繰り上げ返済のメリット・デメリットの話に入る前に、考慮すべきチェックポイントを2つ挙げておこう。

チェックポイント1,そもそも繰り上げ返済ができる契約か

1つ目のチェックポイントは、「そもそも繰り上げ返済ができる契約かどうか」である。マイホームローンでも不動産投資ローンでも、繰り上げ返済ができない契約は少なくない。

たとえば三井住友銀行のアパートローン(不動産投資ローン)の場合、「固定金利期間中の繰り上げ返済は原則できない(一部繰り上げ返済も含む)」となっている。あくまでも「原則」なので繰り上げ返済が不可能というわけではないが、同銀行の場合は固定金利なら清算金と手数料、変動金利なら手数料を支払わなくてはならない。

繰り上げ返済のルールは、金融機関によって異なる。まずは、自身の契約の繰り上げ返済の条件がどうなっているかを確認してみよう。

チェックポイント2, 規模拡大を狙うならあえてしない手も

もう1つのチェックポイントは、「本当に自分が繰り上げ返済をしたほうがいいタイプかどうか」の見極めだ。

同じ住宅系ローンでも、マイホームローンと不動産投資ローンでは性格が異なる。マイホームローンでは、余裕資金があるなら「繰り上げ返済をしたほうが賢い」という意見が多い。繰り上げ返済によって、支払い総額を減らせるからだ。

一方不動産投資では、繰り上げ返済をしたほうがいいとは限らない。繰り上げ返済をする・しない、どちらを選択すべきかは投資家のタイプによる。今後所有する戸数・棟数を増やしていきたい人は、繰り上げ返済をしないほうがいいだろう。手元に余裕資金があるなら、それを元手(頭金)にして別の物件を買うほうがいい。

税理士大家さんとして知られる石井彰男氏は、著書『不動産投資のお金の残し方 裏教科書』で「繰り上げ返済するよりも、新たな物件を取得したほうが得をすることが明らかなのです」と述べている。ネット上で他の不動産投資家の意見を見てみても同じ意見が多いようだ。

2,不動産投資の繰り上げ返済の3大メリット

逆に言えば、「これから先、規模拡大を考えていない」という人は、繰り上げ返済を実行したほうがベターということになる。以下のメリット・デメリットを踏まえて検討するといいだろう。

メリット1:返済総額を抑えられる

繰り上げ返済した金額は、元金の返済に充てられる。元金が減ればそれに伴って金利部分も減るので、結果的に返済総額を抑えられるわけだ。繰り上げ返済では、「毎月の返済額を減らす」または「返済期間を短縮する」のどちらかを選択することになる。

メリット2:金利上昇リスクのダメージを減らせる

不動産投資ローンの代表的なリスクに、「金利上昇リスク」がある。現時点では十分な利回りが出ていている物件でも、金利上昇が起これば毎月の返済額が膨らみ利回りが悪化してしまう。繰り上げ返済でこのリスクを完全になくすことはできないが、返済総額を抑えることで金利上昇によるダメージを和らげることができる。

メリット3:生活設計の自由度が上がる

これは「返済期間を短縮する」を選択したときだけのメリットだが、返済が早く終わることでオーナーの生活の自由度が上がると考えることもできる。繰り上げ返済で返済期間を短縮すれば、丸々家賃が入ってくる状況を早期に実現できる。これにより、当初の予定よりも早く会社を辞めることもできるかもしれない。

またローンを早めに完済することで、物件を売却しやすくなる。それによって、物件価格が上がっているタイミングで売却できる可能性も高くなる。

3,不動産投資の繰り上げ返済の3大デメリット

繰り上げ返済は、以下のデメリットも考慮して検討すべきだろう。

デメリット1:手元資金が少なくなる

不動産投資では、手元資金に余裕を持たせておくことが大切だ。繰り上げ返済をすれば、当然ながら手元資金は少なくなる。そんなときに想定外の修繕や稼働率低下が発生すれば、破綻リスクが一気に高まる。繰り上げ返済をしても、手元資金に余裕があるか。この点をシビアに見てほしい。

デメリット2:他の資産運用に回したほうが効率的

繰り上げ返済のメリットの一つは、「金利上昇リスクによるダメージを減らせる」だった。しかし現在のような低金利の状況では、繰り上げ返済による返済総額の減少効果は薄い。まだしばらく低金利の状況が続くと見るなら、余裕資金を繰り上げ返済に充てるのではなく、別の資産運用に回したほうがいいという考え方もできる。

たとえば、5,000万円の不動産ローンを組んでいて、300万円を繰り上げ返済しても収支の改善は限定的だ。期間短縮では約135万円、返済額軽減では約64万円の削減効果しかない。

しかし、この300万円で年率3%の配当が得られる株式を運用すれば、1年目に9万円のリターンが得られる。これを20年間で複利運用していくと、リターンは242万円になる。

資産運用にはリスクがあるが、繰り上げ返済を選択すれば確実に返済総額を減らせる。言い換えれば、繰り上げ返済は100%確実なローリターンの運用とも言えるので、自分の資産や性格を考慮して検討するといいだろう。

デメリット3:想定外の経費がかかる

繰り上げ返済をすると、手数料や清算金を課せられることがある。借りた金額を早く返しているのに手数料などが発生するのは、金融機関にとっては貸したお金の金利が利益の源泉だからだ。親や友人から借りたお金を早く返せば喜ばれるが、金融機関はお金を早く返されると迷惑なのだ。

4,繰り上げ返済を実行するときのポイント 返済総額を抑えたいなら「期間短縮」を選択すべき

メリットとデメリットを比べて、不動産投資の繰り上げ返済はメリットのほうが大きいと感じた人もいるだろう。実際に繰り上げ返済をする際は、「期間短縮」か「返済額軽減」を選択する必要がある。
  • 「期間短縮」――返済額を変えずに、返済期間を短縮する
  • 「返済額軽減」――返済期間を変えずに、毎月の返済額を減らす
どちらを選択するかで、返済総額は大きく変わってくる。

「期間短縮」を選んだ場合は、「返済額軽減」よりも返済総額がかなり少なくなる。返済期間や繰り上げ額によっては「期間短縮」と「返済額軽減」の返済総額の差が倍以上になることもある。

「それなら期間短縮を選択したほうがいい」という結論になりそうだが、「返済額軽減」には毎月の返済額を抑えられるという魅力がある。不動産投資では、手元資金を残しておくことも大切だ。この点を重視する人は「返済額軽減」を選ぶといいだろう。

5,繰り上げ返済のシミュレーション 300万円繰り上げで130万円お得

最後に、不動産投資で繰り上げ返済をした場合、しなかった場合の返済総額の差を見てみよう。条件は以下のように設定した。

●    当初借入額:5,000万円
●    金利:2%
●    返済方式:元利均等
●    繰り上げ返済時期:借り入れ後から10年後
●    繰り上げ返済金額:300万円

この条件をもとに、繰り上げ返済なし・繰り上げ返済あり(期間短縮)・繰り上げ返済あり(返済額軽減)の3パターンを比べてみよう。
 
  毎月返済額 総返済期間 総返済額 差額
繰り上げ返済
なし
18万4,809円 30年 6,653万1,240円 0円
期間短縮 18万4,809円 28年1ヵ月 6,518万3,730円 −134万7,510円
返済額軽減 16万9,633円 30年 −64万2,240円 −64万2,240円

同じ繰り上げ返済でも、「期間短縮」と「返済額軽減」では返済総額の差が倍以上になる。端的にいえば、総返済額の減少という実をとるか、手元資金がショートするリスクを回避するか、という選択になるだろう。

なお上記の差額から、最終的に繰り上げ返済の手数料などが差し引かれることがある。その額は金融機関によって異なるが、三井住友銀行の場合、自身でパソコンを使って手続きをするなら5,500円、書面を通して行うなら1万6,500円がかかる。
※2019年10月1日現在(消費税込)

6,どんな人が不動産投資の繰り上げ返済に向いているのか? 

繰り上げ返済をしたほうが返済総額は少なくなり、机上で見るとメリットが大きいように感じられる。しかし、不動産投資では手元資金を確保しておくこと(=繰り上げ返済をしないこと)も重要ということを忘れてはならない。

手元にお金を残しておくと使ってしまう、そんな傾向がある人は繰り上げ返済をしたほうがベター。そうでない場合は、今後の投資計画などを考えて慎重に判断したいところだ。

文・本間貴志(不動産ライター)
 

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