医療費控除とは1年間に支払った医療費などが一定額を超えた場合、その年の所得からその超えた金額を控除でき税金が安くなる仕組みだ。控除を受けるには控除額を自分で計算して確定申告を行う必要がある。医療費控除の確定申告で知っておきたいポイントをみていこう。

医療費控除とは 申告期間や対象になる条件、控除額の計算方法

医療費控除の対象は、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費などの合計額が10万円(所得金額が200万円未満の人の場合は、所得金額×5%)を超えた場合だ。

医療費控除の申告期間は翌年以降より5年以内に行う

医療費控除は、払い過ぎた税金の還付を受けるため納税者が任意で行う還付申告にあたる。確定申告は翌年2月16日から3月15日までの間に行うのが原則(※2020年はコロナウイルス拡大のため4月16日まで延長方針)だが、還付申告は対象となる年の翌年1月1日から5年間はいつでも申告できる。たとえば2019年分の医療費控除の申告は、2020年1月1日から2024年12月31日まで可能だ。

別居でも生計を同一にしている家族に支払った医療費は控除対象になる

医療費控除では、納税者本人と「生計を同一にする」配偶者や親族のために支払った医療費も対象だ。同居は条件ではなく、納税者が生活費や学費などを仕送りしていれば、下宿して別居中の子供や単身赴任のため別居している家族に支払った医療費も控除対象になる。

医療費控除額の計算方法

医療費控除全体での控除額の上限は200万円だ。生命保険や損害保険、社会保険(健康保険)などから受け取った給付金があれば、その給付の原因となった病気やケガの治療などにかかった医療費を限度に、控除対象となる医療費から差し引く。

医療費控除額(最高200万円)=(その年に支払った医療費の総額)−(保険金などで補てんされる金額)−10万円

医療費控除かセルフメディケーション税制のどちらかを利用する

医療費控除の特例として、対象になる医薬品などを年間1万2,000円以上購入した場合に控除を受けられる「セルフメディケーション税制」がある。適用を受けるには健康診断や予防接種など、「健康の保持増進・病気予防のための取り組み」を行うことが条件だ。

通常の医療費控除の対象でもある人は、セルフメディケーション税制と通常の医療費控除のどちらか一方を選択し適用を受ける。

セルフメディケーション税制控除額(最高8万8,000円)=(対象医薬品の購入対価)−(保険金などで補てんされる金額)−1万2,000円

医療費控除の対象となる医療費交通費の一部やレーシックも控除対象

医療費控除の対象となる医療費の範囲は広く、病気やケガの治療にかかる治療費のほか、交通費の一部なども控除対象になる。

医療費控除の対象になるのは治療を目的とした医療費

医療費控除の対象となるのは次のような医療費だ。これら以外にも「治療を目的とした費用」は基本的に控除対象となる。

  • 医師、歯科医師による診療や治療の対価
  • 治療や療養に必要な医薬品の購入の対価
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などによる施術の対価(治療に直接必要なもの)
  • 保健師や看護師、准看護師による療養上の世話の対価
  • 助産師による分娩介助の対価
  • 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担金
  • 医師等による診療、治療、施術または分娩介助を受けるために直接必要な費用(通院費、入院時の部屋代・食事代、医療器具購入費など)

※2019年度 国税庁・タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費より抜粋

医療費控除対象にならない医療費

「美容や予防を目的とした費用」や「自己都合でかかった費用」など、次のような費用は医療費控除の対象とならない。

  • 人間ドックや健康診断などの費用(重大な疾病が発見され、引き続き治療を行った場合には控除対象)
  • 医師などに対する謝礼金
  • 病気の予防や健康増進のためのビタミン剤などの購入代金
  • 親族などに付き添いを頼んだ場合に付添料の名目で支払った謝礼金
  • 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金など
  • 通院に使ったタクシー代(公共交通機関が利用できない場合は控除対象となる)
  • 自己都合で個室等に入院した場合の差額ベッド代
  • 入院の際に購入した洗面具などの身の回り品の購入代金
  • 日常生活で使う眼鏡やコンタクトレンズの購入代金
  • 美容整形の費用

レーシック手術は医療費控除の対象になる 

控除対象となるかの判断が難しい医療費については、税務署で事前に確認したうえで申告を行うのが確実だ。たとえば視力矯正を目的とした「レーシック手術」の費用は、公的医療保険の適用されない自由診療だが、医療費控除の対象になる。

領収書のない交通費などは正確に記録を残しておく

通院に公共交通機関を利用した際の交通費など領収書がない費用は、税務署から説明を求められた際に説明できるよう、通院履歴(日付や病院・薬局名)と金額を正確に記録しておくことが大切だ。

医療費控除の適用を受けるための手続き 確定申告の手順を解説

医療費控除の適用を受けるための確定申告は、次のような手順で行う。

⑴必要書類の準備
⑵医療費明細書の作成
⑶確定申告書の作成
⑷申告書などを税務署へ提出

⑴必要書類の準備

医療費控除に必要な書類は以下だ。

  • 源泉徴収票
  • 医療費の領収書
  • 交通費の領収書
  • マイナンバーカード(または通知カードや住民票の写しなどマイナンバーが確認できる書類)
  • 本人確認書類(マイナンバーカードを持っていない場合)

医療費の領収書は2017年分の確定申告から提出不要になったが、控除額の計算や提出が必要な医療費明細書の作成には必要だ。加入する健康保険組合などから交付される医療費通知(「医療費のお知らせ」など)に記載された医療費については、医療費通知でも代用できる。

提出書類の簡略化に伴う経過措置として、2019年分の確定申告までは従来の領収書提出による方法でも申告できるが、控除を受ける医療費の領収書などは申告時の提出は不要だ。

ただし申告期限から5年間は税務署から提出・提示を求められる可能性がある。領収書を捨ててしまい金額や内容を証明できなくなると、遡って控除が否認される恐れもあるため、5年間は大切に保管しておこう。

⑵医療費明細書の作成

控除対象となる医療費はいくらか、医療費の領収書や交通費のメモなどをもとに医療費明細書を作成する。

医療費明細書は所定のフォーマットに手書きで作成してもよいが、国税庁サイト「確定申告書等作成コーナー」から作成するのが一般的だ。領収書をもとに金額などを入力すれば、明細書は自動作成される。

医療費の領収書の枚数が多い人は、「確定申告書等作成コーナー」のトップページから「医療費集計フォーム(エクセルファイル)」をダウンロードして、あらかじめ必要事項の入力・計算を済ませておくとよい。

医療費集計フォームには、「医療を受けた人」「病院・薬局などの名称」「医療費の区分」「支払った医療費の金額」「支払った医療費の金額のうち補填される金額」の入力欄があり、医療費の領収書などをもとに入力していくと医療費の合計額が自動で計算される。

確定申告書等作成コーナーで医療費控除の入力を行う時に、作成後保存しておいたファイルを読み込むことで入力したデータが反映され、医療費明細書が自動作成される。

⑶確定申告書の作成

確定申告書等作成コーナーから画面の指示に従い入力を進め、確定申告書を作成する。

⑷申告書などを税務署へ提出

作成した確定申告書に医療費明細書(または医療費通知)を添付して、次のいずれかの方法で税務署に提出する。

  • 【書面提出】持参(窓口提出・ポスト投函)
  • 【書面提出】郵送
  • 【e-Tax】により提出

確定申告書を提出する際には、申告書へのマイナンバーの記載と本人確認書類(マイナンバー確認書類・身元確認書類)の提示または写しの添付が必要だ。マイナンバーカードがあればマイナンバー確認と身元確認が1枚で済む。

マイナンバーカードを持っていない場合には、通知カードや住民票の写しなどマイナンバーが確認できる書類と運転免許証など身元確認書類がそれぞれ必要になる。e-Taxを利用する場合には、マイナンバーの入力は必要だが、本人確認書類の提示や写しの添付は不要だ。

扶養家族のいる世帯主の医療費控除をシミュレーション

医療費控除額がいくらになるのか、具体的な数字で計算してみよう。年間所得700万円、配偶者(妻)が前年に第1子を出産した人の場合、支払った医療費と受け取った保険金等の内訳は次のとおり。

  • (納税者本人)盲腸で入院・手術(医療費合計:25万円、受取保険金等:20万円)
  • (配偶者)出産で入院・通院(医療費合計:55万円、受取保険金等:42万円)

このケースでは支払った医療費から受け取った保険金などと10万円を差し引き、控除額は次のようになる。

医療費控除額=(25万円+55万円)−(20万円+42万円)−10万円=8万円

医療費から差し引かれる保険金には、健康保険から支給される出産育児一時金なども含まれる。

単身者の医療費控除をシミュレーション

扶養家族(生計を同一にする家族)のいない単身者のケースで考えてみよう。支払った医療費と受け取った保険金等の内訳は次のとおりだ。

  • 胃がんで入院・手術(医療費合計:80万円、受取保険金など:50万円)
  • 骨折で通院(医療費合計:5万円、受取保険金など:10万円)

年間所得が500万円の場合の医療費控除額

年間所得が500万円の場合、医療費控除の下限額は10万円だ。受け取った保険金などがあればその給付原因となった医療費の限度を差し引き、控除額は次のようになる。

医療費控除額=(80万円+5万円)−(50万円+5万円※2)−10万円=20万円

※2受け取った保険金は10万円であるが、その給付原因となった骨折の治療にかかった医療費5万円が上限となるため、差し引く金額は5万円となる

年間所得が150万円の場合の医療費控除額

同じ単身者でも年間所得が150万円の場合、医療費控除の下限額は所得金額の5%、つまり「150万円×5%=7万5,000円」になる。支払った医療費と受け取った保険金が同じであれば、控除額は次のようになる。

医療費控除額=(80万円+5万円)−(50万円+5万円)−7万5,000円=22万5,000円

年間所得が200万円未満の人は医療費控除の適用下限額が下がるため、1年間に支払った医療費(受取保険金控除後)が10万円以下でも控除を受けられる。

医療費控除の還付金は申告から通常1カ月~1カ月半程度で受け取れる

医療費控除適用の可否(控除下限額を超えるか)や控除額は、納税者本人の所得金額や受け取った保険金額、扶養家族のために支払った医療費の額によって変わる。支払った医療費の領収書などは大切に保管しておき、1年が終わったタイミングで毎年集計を行い申告漏れのないようにしよう。不備なく申告をすれば、申告から1カ月から1カ月半程度で還付金を受け取れる。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
 

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