寄付を通じて地域振興に参加できるだけでなく、実質2,000円の負担で地域の特産品ももらえるとして人気の「ふるさと納税」。年々、寄付金額も増加しており、多くの人が注目している。しかし、ふるさと納税とは本当に得なのだろうか?ふるさと納税のデメリットについて確認していこう。

そもそもふるさと納税とは

ふるさと納税とは、寄付を通じて地域振興に参加できる制度のこと。“納税”と付いているが、実際には都道府県市区町村への「寄付」である。自分のふるさとや思い入れのある地域など、自分の好きな自治体に寄付を行うことで、その地域の活性化に参加できる。寄付したお金の使い道を指定することも可能だ。

ふるさと納税のそもそもの理念は、都心と地方の税収の格差是正にある。

ふるさと納税の導入が議論されていた2005年の都道府県別人口一人当たり税収額の格差 を見てみよう。全国平均を100%とした場合、税収が最も多かった東京都は178.8%、最小である沖縄県は56.6%だった。その差は3.2倍、差額は34.2兆円にも上っている。法人税の格差はさらに大きく、同じく全国平均を100%として、最大である東京都は266.8%、最小である長崎県は40.9%となっている。

この格差を生んでいるのが、進学や就職で都心へ人が集中することだ。地方で生まれ育った人は、その自治体から医療や教育など様々な住民サービスを受けて育つ。住民サービスを支えているのは地方自治体に収められる住民税だ。

しかし、住民サービスを受けて育った人が就職で都心へ生活の場を移してしまえば、その人は税金を都心の自治体に収めることになる。生まれ育った故郷の自治体には税収が入らないのだ。

この不公平さを是正し、地方自治体に税収をもたらすために生まれたのがふるさと納税だ。「今は住んでいなくても、自分を育んでくれたふるさとに自分の意思で納税できる制度」としてふるさと納税が作られた。実質的には居住地に納税する住民税を実質的に移転する効果がある仕組みだが、寄付金税制を活用することにより、法律上は寄付とそれに伴う税の軽減を組み合わせたものになる。

ただこの仕組みによって都心部の区などは税収を減らしているという問題もある。

ふるさと納税額は年々増加!その魅力は返礼品にあり

ふるさと納税の受け入れ額と受入れ件数は年々増加している。ふるさと納税の制度が開始した2008年度は約81億円だ  ったのが、2016年度には2,844億円にまで増えている。

ふるさと納税がここまで広がった理由の一つが返礼品(お礼の品)だ。自治体によっては寄付金額に応じて米や肉など地域の特産物が返礼品として送られてくる。寄付金額は自己負担額の2,000円を除いた全額が所得税や住民税から控除されるため、2,000円で特産品がもらえるお得な制度として急速に広まった。

一時は高額で購入な返礼品を自治体が競う状態となり、特産品以外の家電やブランド品、換金性の高いプリペイドカードなども返礼品を用意する自治体もあったが、現在は総務省より禁止されている。

デメリット1 減税・節税と思われがちだがそうではない

地方の特産品を実質2,000円でもらえる上に、地方活性化にも参加できるとして人気のふるさと納税だが、デメリットや注意点はあるのだろうか。

ふるさと納税のデメリットとは、実質的には「節税」ではない(ものの、そう思われがち)ということだ。ふるさと納税とは、寄付とそれに伴う所得税・住民税の控除という形をとっている。

しかし、実質的には住民税を移転するという考えのもとに生み出された制度だ。「税金が安くなった」と考えがちだが、実際には支払う先を変えているに過ぎない。

具体的に考えてみよう。3万円を寄付した場合、自己負担額の2,000円を除いた2万8,000円が所得税と住民税から控除される。「2万8,000円分税金が安くなった」と考えてはいけない。3万円はすでに支払っているのだ。実際には住んでいる自治体に支払うはずだった2万8,000円を、ふるさと納税先に支払っただけに過ぎない。

ただし、住民税を支払った場合はただ支払うだけだが、ふるさと納税を行えば寄付金に応じた返礼品をもらうことができる。そもそも所得税と住民税は必ず支払わなければならないものだ。支払先を変えただけと考えれば、マイナスになっているのは自己負担額の2,000円だけ。2,000円で特産品を買ったと考えればプラスになる。特産品によっては2,000円以上の価値がある場合もあるため、特産品選びはふるさと納税においてやはり重要なポイントと言える。ふるさと納税の返礼品を選ぶ際は、「この返礼品を2,000円で買うか、損はしないか」を基準に選ぶとよいだろう。

<関連記事>ふるさと納税の税金控除の仕組み 住民税や所得税はいくら安くなる?
<関連記事>家を買った人の「ふるさと納税」計算法 住宅ローン控除はどうなる?

デメリット2 返礼品の還元率は減少中

ふるさと納税のメリットとして挙げられる返礼品だが、その還元率は減少傾向にある。きっかけは2017年4月 に総務省が自治体へと行った自粛要請だ。ふるさと納税の返礼品は寄付額の3割以下に抑え、商品券や家電、宝飾品などの換金性が高いものに関しては自粛するように要請した。これにより、寄付額に対して高価な返礼品は消え、還元率は大幅に減少する結果となった。

ただし、ふるさと納税の実質負担額は、寄付金の上限額以内に抑えていれば2,000円。2,000円で買えると考えればまだまだお得な返礼品はそろっている。

返礼品のそもそもの理念は、その地域の特産品を送ることで、より地域への理解を深めて特産品の購買を促進。地域の活性化につなげるというものだ。自粛要請で高額過ぎる返礼品が消えたことで、そもそもの理念に立ち返ったともいえる。

人気の返礼品が必ず手に入るわけではないというのもデメリットだ。ふるさと納税はその年の12月31日まで寄付が行えるが、年末に近づくにつれて人気の返礼品はどんどんと完売になっていく。追加される場合もあるが、みんなが欲しいと思うものは集中するため、追加されてもすぐになくなってしまう。

デメリット3 確定申告の手間がかかる

ふるさと納税のデメリットとしてもうひとつ挙げられるのが「手間がかかる」ということだ。通常、給与所得者は勤め先での年末調整を行えば確定申告を行う必要がない。

しかし、ふるさと納税で所得税と住民税の控除を受けるには、確定申告を行う必要がある。確定申告は深刻時期が限られているため、かなり混雑する。さらに基本的には平日の午前8時半から午後5時までに限られており、平日に仕事をしている人にはかなりの負担となるだろう。

2月の第3、第4日曜日のみ申告の相談や申告書の提出ができる会場もあるが、この2日間には人が集中するためかなりの混雑を覚悟しなくてはならない。そもそも確定申告を行わなければならない自営業者や年収2000万円以上の人はいいが、給与所得者にとって確定申告の手間はかなりのデメリットといえる。

デメリット4 ワンストップ特例制度も手間はかかる

デメリット3で挙げた確定申告については、負担を大きく軽減してくれる制度が導入された。それがふるさと納税ワンストップ特例制度だ。2017年4月から導入されたこの制度を利用すれば、確定申告は不要になる。あらかじめふるさと納税を行う際に申請をしておけば、確定申告をしなくても翌年の住民税から控除を受けられる仕組みだ。

ただしワンストップ特例制度を利用したら手間がまったくかからないかというと、そうではない。ワンストップ特例制度を利用するには、「寄附金税額控除に係わる申告特例申請書」を寄付した自治体ごとに記入し、本人確認書類を添付して郵送しなくてはならない。ワンストップ特例制度を適用されるには、ふるさと納税を行う自治体の数を5団体以内にする必要があるが、5ヵ所分の書類を記入し郵送するのはやはりそれなりに負担となるだろう。

またワンストップ特例制度の申請書類はふるさと納税を行った翌年の1月10日必着だ。5ヵ所にふるさと納税を行ったが、1カ所だけ書類が届かなかったり不備があったりした場合、その自治体に寄付した金額は控除を受けられない。確定申告を行えばリカバーできるが、その場合は5ヵ所すべての寄付について申告をしなくてはならない。制度についてきちんと理解しておかなくては控除を受けられないので注意が必要だ。

<関連記事>ふるさと納税「ワンストップ特例」をしないと確定申告が必要?

デメリット5 所得によっては控除されない

ふるさと納税では、寄付したお金が返ってくるわけではなく、支払うべき税金が減額されるということ。つまり支払うべき税金額が寄付した額よりも少なければ損をしてしまうということなのだ。

控除される額にも上限がある。上限額は収入に応じて変わってしまう。自分の上限額は前年の所得を参考に予想することができるが、前年よりも所得が下がった場合は上限額が変わってしまうというのもふるさと納税のデメリットだ。本当の上限額が分かるのはその年の12月31日だが、ふるさと納税はそれまでに寄付をしておかなくてはならないため、上限額にゆとりを持っておかないと損をすることとなる。

上限額がわかりにくいというのもデメリットだろう。上限額は単に年収だけでは分からない。収入の種類、扶養の人数、保険料や医療費の支払い額によって変わってしまう。おおまかな例は紹介されているが、実際に自分の上限額を知ろうとすると、シミュレーターで試算したほうがいいだろう。

上限額を超えた額は控除を受けることはできないため、どうしても限度額以内に収めたいという場合は試算で出た限度額から20%ほど抑えた額に寄付金額の合計を収めるようにするとよいだろう。

ふるさと納税のデメリットも把握して寄付をしよう

ふるさと納税はそのお得さだけが喧伝されがちだが、もちろんデメリットもある。ふるさと納税で損をしないためには、あらかじめこれらのデメリットを頭に入れてから検討することが大切だ。

特に確定申告やワンストップ特例制度を利用するための書類の準備などは時間がかかり、大きな負担ではある。ただし、ふるさと納税はそもそも地域の振興のために生まれた制度だ。その理念をきちんと理解した上で、上手に制度を活用していきたい。

文・ZUU online編集部
 

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