老後にどれくらいの生活費がかかるのか気になる人も多いだろう。2019年6月に発表された金融審議会市場ワーキンググループ報告書によると、老後の生活費で不足する平均金額は毎月約5万円だ。今回は老後の生活費の詳しい内訳と実際老後資金はどのくらい必要なのかを見てみよう。

老後の生活費の内訳 最も高いのは食費

現役と老後それぞれの2人以上の世帯における1ヵ月間の支出は、次の表のようになっている。

<2人以上世帯の1ヵ月の支出>
 

※総務省の「2019年6月家計調査報告」をもとに筆者作成

ほとんどの項目で現役から老後にかけて支出は減っているが保険医療費と交際費は増加傾向だ。交際費は1%しか増えていないように見えるが交際費の細目である贈与金については大幅に上がっている。子どもや孫への小遣いなどが増えていることが理由だろう。
 

交際費の内訳 現役世帯
(勤労者世帯)
老後世帯
(無職世帯)
贈与金 5,294 8,058
他の交際費 4,797 2,152

※総務省の「2019年6月家計調査報告」をもとに筆者作成

老後の収入は2人世帯で毎月約22万円

2019年1月に厚生労働省が発表した夫婦2人分のモデルケースの年金額は月額22万1,504円だ。これは夫の標準報酬(賞与を含む年収を月額換算したもの)が42万8,000円で40年間就業し妻がその期間すべて専業主婦であった場合である。ここまでのデータを確認すると以下のようになる。

月額収入:22万1,504円
月額支出:27万8,501円
不足金額:27万8,501円-22万1,504円=5万6,997円

毎月約5万7,000円が不足し、この金額を貯蓄から毎月取り崩すこととなる。

自分の老後の生活費と収入をシミュレーション

これらの支出額や収入額はあくまでも一例だ。収入や支出の額は自分ならではの数字に落とし込むことが重要になる。支出については、まず現在の支出を把握しよう。家計簿アプリなどを使うのも有効だ。そこから上記の生活費の内訳をもとに保険医療費や交際費を増やすなどの調整をして、老後の支出についておおまかに把握してほしい。

収入については、まず年金の受給見込額を確認しよう。現在50歳未満である場合、誕生月に届く「ねんきん定期便」には、誕生月現在の実績に基づいた受給見込額が記載されている。しかし引き続き60歳まで働いた場合や、その後も保険料を支払いながら働いた場合の受給見込額は「ねんきん定期便」では確認できない。

今後の保険料支払額を反映させた受給見込額は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認することができる。また年金の受給額は変更されることもあるので注意しよう。原則、物価が上がると年金額も上がり、物価が下がると年金額も下がることとなっている。しかし現在は「マクロ経済スライド」により実際の物価上昇率より低い上昇率が年金受給額に採用されることとなっている。

つまり物価などが上がっても年金額はさほど上がらないということだ。シミュレーションした結果、年金などの収入よりも支出のほうが多い場合には、その差額を毎月貯蓄から取り崩すことになる。老後に必要な貯蓄額についても確認が必要だ。

老後の生活費がまかなえない!老後資金の準備方法は?

老後の支出が多く取り崩すための貯蓄額が充分にない場合は、早めに準備を始めるべきだろう。老後資金というと貯蓄を増やすことを考えがちだが貯蓄は取り崩せば減る一方のため、長生きすると不足する可能性がある。限りある貯蓄よりも一生涯受け取れる「終身年金」を増やせないか検討してみよう。

老後の終身年金を増やす2つの方法 iDeCoと企業型確定拠出年金

終身年金とは、年金の受取人が亡くなるまでの間、一生涯年金を受け取ることができる年金保険のことである。一般的に国民年金加入者が受け取る老齢基礎年金も終身年金だ。老齢基礎年金以外で会社員や公務員が終身年金を増やす主な方法は「iDeCo(イデコ)」と「企業型確定拠出年金」の2つだろう。勤務先が企業型確定拠出年金を導入している場合にはその利用や拠出額の増額(マッチング拠出)、導入していない場合にはiDeCoを利用しよう。

1. iDeCo(イデコ)

iDeCoとは個人型確定拠出年金の愛称だ。iDeCoでは自分で毎月一定の掛け金を拠出し自分が選択した運用方法で投資信託などを運用する。掛け金とその運用益の合計額をもとに60歳以降に給付を受けることが可能だ。ただし加入期間が10年未満の場合、給付金を受け取れるのは61~65歳以降となる。

また、iDeCoの最大のメリットは税制優遇制度を享受できる点である。掛け金を拠出する際、運用益を受け取る際、そして老後に給付金をもらう際にも所得控除などの税制優遇措置が講じられている。給付金の受取方法は「一括」と「年金」の2種類だ。退職金のように全額一括で受け取るか、年金のように5年や10年など一定の期間で受け取るかが選択可能である。

2. 企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金は、企業型DCとも呼ばれる。企業が毎月一定額の掛け金を拠出し、その掛け金をもとに従業員が自ら運用する商品を選んで年金の資産運用を行う制度だ。企業型確定拠出年金では、従業員は一律全員が加入する場合と加入するかどうかを従業員が選択できる場合がある。

給付金はiDeCo同様、60歳以降にしか受け取れず、加入期間が10年未満の場合は給付金を受け取れるのは61~65歳以降だ。給付金の受取方法は、一時金形式か年金形式のどちらかを選ぶこととなっている。

老後の生活費を確認したら資産を増やす方法を考えよう

今回紹介した方法以外にも、つみたてNISAやNISAを利用した運用、不動産投資、副業、転職をするなど資産を増やす方法はたくさん考えられる。まずは老後の生活費から収支と貯蓄の確認をし、不足する場合には自分に適した方法で準備を進めることが賢明だ。

文・国分さやか(CFP®)
 

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