「親から習った金融知識」はいったん、忘れよう 鈴木隆史(日本私産運用協会代表理事)

2019.8.13
FINANCE
(画像=THE21オンライン)
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マネーリテラシーをどう高めるか

「日本人にはマネーリテラシーが足りない」とはよく聞く言葉だ。その理由として、「情報のアップデートができていない」ことを主張するのが、社会人に対するマネー教育に携わる「日本私産運用協会」の鈴木隆史氏だ。では、正しい金融知識を手に入れるためにはどうしたらいいのだろうか。

お金の考え方は「アップデート」が必要

「お金は卑しいものである」……そんな感情が、江戸時代以来根強く、日本人の中に残り続けています。その後、明治、大正、昭和、平成と時代は変われど、この考えは変わっているように思えません。衣食住や働き方などは高速に変化し、人々の考え方もそれに伴って変化しているのに、なぜかお金への考え方は昔のままなのです。

その結果、お金について学校でしっかりと習うこともなく、マネースクールの数もまだまだ少ないのが現状です。

本来は他の知識と同様、お金の知識もどんどんアップデートしていく必要があります。にもかかわらず、「お金の常識」が、古いままずっと残ってしまっているのです。

私たち日本私産運用協会は、正しい金融知識をより多くの人に身につけてもらうべく活動しています。お金についての知識や経験も含め、すべてが大事なプライベートアセットだと定義し、資産ではなく「私産」と表現しているのも、それだけ「知識」が重要だということです。

私たちは正しい金融知識を身につけるステップを「知る」「作る」「増やす」「活かす」の4つにわけてお伝えしていますが、その中でも今回は「知る」ことの重要性についてお伝えさせていただきます。

「お金を預けるなら銀行が正解」だった時代

親からこんなアドバイスを受けた方もいるのではないでしょうか。

「預けるなら郵便貯金や銀行が一番」
「将来のために貯金をしっかりしなさい」
「海外は危ない。日本が安全」

そして、それをそのまま信じている方も少なくないでしょう。

確かに、「かつての日本」では、この考え方でもお金を増やすことはできました。ただ、「現在の日本」では、これはまさに「アップデートされていないお金の知識」の代表です。

高度成長期を経てバブルが弾けた1991年の前後で、日本は大きく変化をしています。

2018年12月現在のメガバンクの普通預金は年間金利0.001%、定期預金で0.01%。つまり、100万円を1年預けても、定期でも100円しか増えません。ATM手数料1回分よりも少ないですね。

一方、1970年代の郵便貯金の定期預金は金利8%を超えていました。「10年定期で金利11.9%」というものすら存在していました。つまり、100万円を1年預けるだけで、8万円~11万円増えるということです。「預けるなら郵便貯金や銀行が一番」というのは、まさにその通りだったのです。

1970年台に郵便貯金で定期預金していた方が、もし現代にタイムスリップしてきたら、今のメガバンクの金利に対して大きな不満を持つでしょう。

資産が300倍!それでも大損!?

それでも、「少しでも増えるならいいじゃないか」と考える人もいるかと思います。ただし、実は知らないうちにお金が減っている、という事態になっていることもあるのです。

金利より「物価上昇率」が上回った場合、銀行に預けているお金は価値が下落していることになるからです。

例えば年利1%の銀行預金で100万円を預金していたら、1年後には101万円なっています。ただ、物価上昇率が2%なら、100万円の物は1年後には102万円になっています。そう考えると、1年で1万円、資産価値が減少したということになります。

こんな例もあります。

新潟貯蓄銀行(新潟市、現第四銀行)が1915年(大正4年)に「超長期」にて、年間金利6%の100年定期預金を募集しました。それが2015年に満期を迎え、実に当初の300倍以上になって戻ってきたのです。

ただし、その額は、1円が339円になっていたくらいのもので、今の価値だとどちらにしても「雀の涙」。当時の初任給は小学校教員で10~20円程度でした。当時の1円は少なくとも1万円ほどの価値があったと考えれば、1円だろうと339円だろうと、結局、資産は下がってしまったわけです。

これは極端な例ですが、現在の銀行金利は0.001%なのに対し、政府の物価上昇率目標は年間2.0%、実質は1.0%前後。金利0.001%に対して物価上昇率が1%なので、今、この瞬間にも銀行に預けている資産は価値が下落していることになります。

「右にならえ」では成功できない

一方、現代の方が1970年代に戻って11.9%の定期預金を見た時には、「怪しい」となるでしょう。ただ、これもまた、一面的な見方でもあるのです。

日本を出て、世界の金利事情を見てみると、”かつての日本”のような金利を付けている国は実際に存在しているからです。

これは、「株式市場」についても同様です。

日本の株式市場は、1991年までは安定して右肩上がりで推移し、1970年から1990年の20年間で日経平均は約10倍になっています。バブル期の上場企業社員の間では、自社株買いが流行ったそうです。株を買えば資産が増えるという時代でした。

一方、現代ではピークの約2分の1になっています。

もちろん、株価は上下を繰り返していますから、今でも株でお金を増やすことは可能です。ただし、「買えば上がる」という時代から、「上がるかもしれないし、下がるかもしれない」という時代になっているのです。

ただ、これもまた世界に目を向けてみると、世界平均株価は1970年代から現代まで継続的に右肩上がりです。”かつての日本”のような新興国が世界の経済を押し上げているのです。

私が言いたいのは、「金利が高い国にお金を置きましょう」という話ではありません。「右向け右」「みんながやってるなら私も」など、誰もがやっているからといって自分も同じことをしたところで、お金が増える時代ではない、ということです。

それでも、私産運用は人真似でいい!?

結局、大事なのは「私産」を増やし、自分の収入や支出を把握したうえで、長期の視点に立って計画的にお金を増やしていくということです。

ただし、それには時間もかかりますし、継続的な勉強も必要。「大変そうだな」と思う人が多いのではないでしょうか。

そこで、投資初心者の方にお勧めしたいのが、「信頼できる専門家を見つけ、その真似をする」ということ。一番いけないのは「自己流」で運用をしようとすること。世の中には書籍やインターネットの情報があふれていますが、それを断片的にかじったところで、うまくいきません。軌道に乗るまではまず、誰か特定の信頼できる専門家を見つけ、その人の真似をしながら投資をするのが、最も再現性が高く、ストレスなく資産を増やすことができます。

もうひとつ注意してほしいのが、「無理に節約して投資しない」ということ。私産運用は長い時間をかけて行っていくものですから、何より大事なのは習慣化。それがストレスになってしまっては続きません。

「自己流でやる」と同じくらいの大きな罠がもう1つあります「無理に節約して投資する」です。無理なダイエットが続かないのと同じように、無理な節約は長続きせず、途中で嫌になってしまいます。私産運用は習慣にしてゆくものですので、ストレスがない範囲で行なう必要があるのです。

長期的に時間をかけて取り組んでいきましょう。

文・鈴木隆史(すずき・たかし)日本私産運用協会代表理事
明治大学商学部卒業。食品(飲料メーカー)の営業と開発、青果物商社の営業マネージャーを経て、現在はファイナンシャルコンサルティング企業で活躍する。20代後半にビジネスにチャレンジするも失敗。クレジットカード7枚のリボルビング払いまで手を出し、一時は借金返済のためにトリプルワークを経験。自身がお金に関して何も知らなかったので、これから私産について勉強していく方々に分かりやすく伝えたいという想いが強い。子供向けファイナンシャル教育の底上げのためにも、まずは大人から基礎を学ぶ必要があると考えている。日本私産運用協会の理念に共感し、2013年に協会認定講師資格である私産運用プランナーに合格。以降、協会の講師とし公演活動を行う。ファイナンシャルプランナーの有資格者でもある。協会の理念を深く理解し、分かりやすく正確に伝えるその姿勢は、協会を代表する私産運用プランナーとして称賛を得ている。2015年より日本私産運用協会の代表理事に就任。また同年にファイナンシャルカンパニー日本法人の代表に就任。日本私産運用協会(『THE21オンライン』2019年02月19日 公開)

提供元・THE21オンライン

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