医療保険が必要かどうか見極める3つのポイント

2018.9.13
運用・家計
(写真=pixfly/Shutterstock.com)
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医療保険の世帯加入率は90%を超えている。ニーズの高さは必要性の高さなのかもしれない。一方で、医療保険は不要であるという声も聞く。いったいどちらが正しいのだろうか。不要論の根拠や医療保険の経済合理性を検証した上で、必要かどうかを見極めるためのポイントを探る。

9割以上が加入している医療保険

生命保険文化センターの調べによると、世帯のうち誰かが医療保険に加入している割合は2015年時点で91.7%であったことが分かっている。世帯主の85.1%、配偶者の69.6%が加入している。医療費を民間の保険で補てんしたいという意識は相当に高いらしい。

医療保険の保障範囲は「入院」と「手術」

ここで医療保険についておさらいしておこう。医療保険は医療費のすべてをカバーしてもらえるという誤解があるようだが、実際は違う。保険金支払いの対象となるのは原則として「一定以上の入院」と「所定の手術」だ。医療保険に関しては入院と手術が保障の2本柱となる。

「一定以上の入院」なので、通院や日帰り入院は特約を付けない限り対象外だ。入院は治療を目的としたものに限られ、検査入院や分娩のための入院、糖尿病の教育入院などは認められない。また、入院期間には60日や120日といった支払限度日数が設けられているのが通常だ。保険期間中に支払える入院給付金の上限を定めた通算支払限度日数もある。要するにどんな場合でも支払われるわけではないのだ。

「所定の手術」とは、すべての手術が対象ではないことを示している。どの手術が対象となるかは約款に詳しく書かれているが、おおむね公的健康保険が適用される手術と考えて差し支えない。また、治療が目的の手術に限られるので、美容や健康のための手術は含まれない。歯科治療でも一般的な虫歯治療は対象にならないことが多いようだ。また、カテーテル手術やレーシック手術は除外されているケースもあるので注意したい。

特約を付ければ充実するが保険料もアップ

医療保険はメジャーな保険に成長したが、保障内容の理解はさほど進んでいない。その原因は特約の種類の豊富さにある。医療保険は「第3分野保険」に該当するので、生命保険会社だけでなく損害保険会社や共済組合も参入できる。そのため商品数が非常に多く、各社が特色を出そうとさまざまな特約を用意しているためだ。

代表的な特約にはどんなものがあるのか。入院や手術がなくても医療機関にかかるだけで給付金が支払われる「通院特約」、ガン・脳卒中・急性心疾患の際の保障を手厚くした「三大疾病特約」、公的健康保険適用外の先進医療が受けられる「先進医療特約」、乳がんや子宮筋腫など女性特有の病気に対して保障を上乗せする「女性疾病特約」、病気やケガがなく保険を使わない期間が続くと一定期間ごとに祝い金がもらえる「健康祝金特約」などだ。消費者からは特に先進医療特約やガン特約に対する関心が高い。

特約は後から追加することも可能で、増やせば増やすほどカバー範囲が広がるが、保険料も増えるので注意したい。

「医療保険は不要」と言われる理由

医療保険不要論の主な根拠には、「貯蓄があれば問題ないはず」と「払った金額に給付金が見合わない」の2つがある。保険とはいざという時の損失が大きく、他に代替手段がない経済的ダメージに備えるものだが、前者は代替手段があるじゃないかという主張である。また後者は、コストとリターンのバランスを考えたものだ。

医療費の自己負担額は月8万円までで良い

医療保険を考える際に不可欠なのが「高額療養費制度」の知識だ。公的健康保険に加入していれば、自己負担は原則3割で良いことは知られている。1万円の医療費が発生しても会計で支払うのは3,000円で良いことになる。しかしもっと高額な医療費が発生した場合はどうだろうか。入院や手術で合計100万円かかってしまった場合は、30万円支払わなければならないのだろうか。

実際には8万円程度で済む。なぜか。健康保険の高額療養費制度により、年収と年齢に合わせてひと月に支払わなければならない医療費の上限が決められているからだ。

自己負担上限額(70歳未満)

年収約1,160万円~    25万2,600円+(医療費-84万2,000)×1%
年収約770~約1,160万円    16万7,400円+(医療費-55万8,000)×1% 
年収約370~約770万円    8万100円+(医療費-26万7,000)×1%
~年収約370万円        5万7,600円
住民税非課税者        3万5,400円

たとえば発生した医療費が100万円で窓口での自己負担額が30万円の場合、年収約370~約770万円の人であれば8万7,430円、年収約770~約1,160万円であれば17万1,820円が自己負担の上限だ(※あくまでも試算なので、実際の金額とは多少異なる)。この程度であれば、確かにある程度の貯蓄があれば保険がなくても問題ないように思える。

では、高額療養費制度の上限を超える医療費が発生することはあるのだろうか?実はある。高額療養費制度は公的健康保険の制度なので、保険が適用されない医療は対象外なのだ。差額ベッド代や先進医療の技術料など、全額自己負担の医療費は上限額に含まれない。つまり、保険適用外の医療にまで備えたいということであれば、医療保険を検討する意味はある。

保険はだいたいが「損をする」商品

次は医療保険が割に合う商品なのかどうかだ。損か得かを考えるには、支払った保険料を上回る給付金が受け取れるかを考えれば良い。

まず、ある30歳男性が平均的な医療保険である入院日額1万円の掛け捨て型終身保険に加入したとする。保険料は2,500円~4,000円といったところだが、便宜上3,000円と仮定する。それを寿命の80歳まで50年間払い続けたとすると、支払った保険料総額は150万円だ。

一方、もらえる給付金の方はどうだろう。保険期間中(終身なら一生涯)の間にケガや病気による入院や手術がなければ、基本的に保険料は「払い損」になる。商品によっては健康祝金をもらえるものもあるが、その場合保険料もアップするのでここでは考えない。

先ほどの男性が治療のために10日間入院して手術したとすると、医療保険からは1万円×10日=10万円の入院費と1件につき20万円の手術給付金、合計30万円が支給される。ガンや三大疾病などの特約を付けていれば給付金は上乗せされるが、これも保険料をプラスしないといけないのでここでは除外する。

支払い総額が150万円なので、単純計算では手術を伴う10日間の入院を5回はしないと元が取れないことになる。どうだろう、病院にかかる頻度は人によって異なるが、確率としてはそう多くはないだろう。ただ、上記のケースに当てはまる人にとっては、医療保険は心強い存在であることには間違いない。

保険とはそもそも「損をする」のが前提で、たまたま不幸に当たってしまった人にみんなが出し合ったお金を支援する仕組みである。将来の予期できない経済的ダメージには備えたいが、経済的合理性を優先させたいのであれば、保険ではなく貯蓄など他の手段で備えることが望ましい。

医療保険の必要性を見極める3つのポイント

結局、医療保険が必要かどうかは個人の価値観や状況によって判断が異なってくるようだ。医療保険の必要性のポイントを3つに絞ってみたので参考にして欲しい。

(1)貯蓄ができるか否か

生命保険文化センターの調べによると、入院経験がある人の1回の入院にかかった自己負担額は平均して22.1万円だそうだ。高齢になるほど頻度も費用も高くなるが、公的医療は高齢者の負担が軽くなるよう配慮されている。したがって大ざっぱに見積もって150万円ほどあれば貯蓄でも医療費に備えることは可能だ。貯蓄ならば、医療保険のように治療内容や入院のタイミングによって給付が受けられないなんてことはない。ただし予想以上にかかってしまった時は、医療保険のほうが結果的に手厚くなるケースもある。注意したいのが、保険は加入していればいつでも給付金が受け取れるが、貯蓄の場合は貯まる前に入院・手術が発生してしまうと間に合わないことだ。医療費は貯蓄でも備えられるが、早めに確保しておくことが重要である。

(2)手厚い医療を受けたいかどうか

公的健康保険の範囲内での治療にとどめるのであれば、高額療養費制度の恩恵もあって何百万円もの医療費がいきなり発生することはない。したがって医療保険の必要度も下がる。しかし、もしもの時は1人部屋でゆっくり過ごしたい、保険適用外の治療方法も試してみたいということであれば、医療保険でカバーするのもひとつの手だ。たとえば差額ベッド代は1人部屋なら1泊5,000円から1万円、2~4人部屋でも2,000円から5,000円追加料金が発生する。特別室は高級ホテル並みだ。特に贅沢をするつもりがなくても、部屋の空き状況や体の症状によっては必要になることもある。先進医療も該当する病気になるとは限らないが、あれば安心だ。ただし保障範囲は商品ごとに違うので、約款は必ずチェックしたい。

(3)経済合理性か安心感か

損得勘定でいうと、医療保険はお得な商品とは言えない。保険全般に言えることだが、ほとんどのケースで受け取るお金は支払うお金を下回る。しかし保険とは、発生する確率が低くてもいざという時のために備える性質のものであり、医療保険もそのひとつである。経済合理性を優先するのであれば貯蓄を、変化するリスクに対応できる安心感を優先するのであれば、保険を選択するのが良い。

以上、医療保険の必要性の見極め方について解説した。1976年にアクサ生命保険が日本で最初の医療保険を販売開始して以来、必要論・不要論が幾度となく議論されてきた。しかし、誰がいつどのくらいの医療費が発生するか予想できない限り、加入時点でそれが正しいかどうか証明することは誰にもできない。保険は、言い方は悪いが、一種のギャンブルであることを知るべきだ。多額の医療費がかかる方に掛けるなら保険に、範囲内に収まる方に掛けるなら貯蓄に掛金をベット(Bet)すれば良い。答えは保険期間を終えてみないと分からない。保険選びはあなたの価値観が反映される。まずは自身の価値観の確認が必要だ。

文・篠田わかな(フリーライター・ファイナンシャルプランナー)
 

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