乱立するキャッシュレス決済サービス。結局、生き残るのは?

2019.7.7
FINANCE
(画像=THE21オンライン)
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話題の「QRコード決済」、そのメリット・デメリット

昨年、次々にQRコード決済サービスが登場し、大きな話題となった。また、政府が「2025年までにキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げる」という目標を発表し、キャッシュレス決済全体への関心も高まっている。あまりに多くのサービスが乱立し、わかりにくい状況になっているキャッシュレス決済サービスの現状とこれからについて、専門家に解説してもらった。

様々な電子マネーが共存するのは日本だけ

今、メディアを賑わせているのはQRコード決済ですが、実際にキャッシュレス決済の中心になっているのは、依然として、VISAやマスターカード、JCBなどのクレジットカードです。

次いで、よく使われているのが、電子マネー。JR東日本が発行しているSuicaなどの交通系ICカードや、イオンリテールのWAON、セブン&アイ・ホールディングスのnanacoなどがあります。

海外でも各地に乗車券として使われているICカードがありますが、電子マネーとしても使えるケースは限定的です。「支払いはクレジットカードですればいい」という考え方だからでしょう。日本のように様々な電子マネーが共存し、利用されている国は、他にあまりありません。

キャッシュレス決済を「現金以外の決済方法」という広い意味で捉えると、大学生よりも若い人たちの間で、iTunesギフトカード(コード)やGoogle Playギフトカード(コード)の利用がかなり広がっています。大学生だと半数くらいはクレジットカードを持っているのですが、それは使わず、これらのカードを使っている人も多くいます。

また、NTTドコモやau、ソフトバンクのキャリア決済を利用する人も増えています。

国際ブランドのデビットカードも増加中

VISAのデビットカードも、近年になって利用が増えています。

日本はもともとデビットカードが少なかったのですが、15年ほど前からVISAが普及のための取り組みを進め、楽天銀行などのネット銀行やスルガ銀行がVISAのデビットカードを出し始めました。5年ほど前からは、メガバンクや他の地銀も口座開設者に対してVISAやJCBのデビットカードを発行するようになり、利用が拡大しています。

デビットカードは銀行口座と紐づけられていて、決済をすると即時に口座から代金が引き落とされます。クレジットカードと違って審査がないので、利用者にとって作りやすいカードですし、支払いが滞って個人信用情報に載ったりするリスクもありません。

VISAやマスターカードのプリペイドカードも、通信キャリアが契約者に配り始めたことで、発行枚数が増えています。

QRコード決済は話題先行で浸透せず?

最近、新たに続々と登場しているキャッシュレス決済サービスは、スマホを使ったものです。スマホが誰もが持つものになったことで、様々な企業が参入しています。

Apple PayやGoogle Payは、「カードをスマホに入れる」という発想でできたサービスです。

これらは、スマホをリーダーにかざすことで決済できるので、使い方は電子マネーと近いのですが、大きな問題は、お店などの事業者がリーダーを設置しなければならないことです。

そこで、リーダーが不要なスマホ決済として、QRコード(またはバーコード)による決済が登場しました。

しかし、QRコード決済は、従来のキャッシュレス決済と、使い方が大きく違います。

いざ使ってみれば、便利なものではあるのですが、メールアドレスやSNSのIDをQRコードで交換することに慣れている若い世代ならともかく、多くの人にとっては、使い方がわからないでしょう。「コストが安い」というサービス提供者側の論理で作られたもので、利用者の側に立っていないサービスだと、私は思っています。

実際、話題性の割には、利用者が増えていません。QRコード決済に参入した各社も、誰もが使うサービスにしようというよりは、一部の人に使ってもらえばいいと考えているのではないでしょうか。

世界の中でも日本はスマホ決済が進んでいる!?

Apple PayやGoogle Payの利用も、一部の人だけに留まっています。キャッシュレス決済のサービスは多様化しながらも、中心は誰もが使えるカードタイプという状況が続くでしょう。

「中国ではQRコード決済が普通になっているじゃないか」と言われるかもしれませんが、そうなっている国は、世界でも中国などの一部の国に限定されます。

スマホ決済ということで言えば、インドやケニアも進んでいますが、「おサイフケータイ」がある日本も、世界の中ではかなり進んでいるほうです。少なくとも先進国においては、キャッシュレス決済といえば、スマホ決済よりもカード決済なのです。

北欧では、外出するとき、念のために現金も持って出たけれども、帰るまでまったく使わなかった、という生活をしているくらいキャッシュレス決済が普及していますが、多いのはデビットカードなどのカードでの利用です。

QRコード決済の本命はどこか?

さて、QRコード決済とひと口に言っても、様々な種類があります。例えば、LINE Payが銀行口座やコンビニから事前にチャージしておくプリペイド式なのに対して、横浜銀行の「はまPay」は銀行口座からの即時払いです。Origami Payは、クレジットカードからの支払いか、銀行口座からの即時払い。PayPayはプリペイド式ですが、不足分はクレジットカードからの支払いになります。

これらのうち、どれが生き残るのかはわかりませんが、大々的にキャンペーンをしているPayPayや、LINEに付随しているLINE Payが有力ではないでしょうか。細かいサービスの違いで選ぶ人も中にはいるものの、認知度で選ぶ人が多数だと思います。

多くの種類のクレジットカードに対応している楽天ペイやAirPay(リクルートライフスタイル)も有力ですが、各社とも、対応する支払い方法は増やしていくでしょう。

キャッシュレス決済は無人決済店舗へ向かう?

スマホ決済は、今は注目されていますが、いずれ状況が変わるかもしれません。その未来を見据えているのが、アマゾンが運営する無人決済店舗「Amazon Go」です。

利用者は、スマホでAmazon Goアプリを起動させ、表示されたQRコードをゲートにかざして入店します。そのあとは、欲しい商品を手に取って、そのままゲートを通って退店するだけ。決済は自動的に行なわれます。

アマゾンもAmazon PayというQRコード決済サービスを提供していますが、本命はAmazon Goなのではないでしょうか。

セキュリティを事業者任せにしてはいけない

今年10月に予定されている消費税引き上げのあと9カ月間は、中小小売店などでキャッシュレス決済をすると、代金の5%がポイントとして還元されるようになります。政府がキャッシュレス決済を後押しすることを、国民の目にはっきりと見える形で示した、初めての施策です。

これを機にキッシュレス決済をもっと利用しようと思うけれども、セキュリティが気になる、という人もいるでしょう。セキュリティに不安を感じる人は、日本人には特に多いようです。

そこで、最後に、セキュリティの考え方についてもお話ししましょう。

確かに、セキュリティの問題はあります。しかし、例えばクレジットカードなら、不正使用を検知したり、被害を補償したりする仕組みが作られています。QRコード決済でも、クレジットカード支払いにすることができるものがありますし、経産省もセキュリティ対策に動いています。

また、現金も、盗まれたり、落としたりすることもあるわけですから、セキュリティが万全だとは言えません。

結局、キャッシュレス決済も現金と同じで、不正利用されないよう、自分で気をつけることが不可欠なのです。サービスを提供する事業者が対策をするのは当然ですが、それに頼って「安全神話」を信じてはいけません。

文・山本正行(やまもと・まさゆき)
山本国際コンサルタンツ代表
1963年生まれ。東京都出身。2009年に山本国際コンサルタンツを設立。あらゆるキャッシュレス決済サービスの仕組みやビジネスを専門にコンサルタントとして活動。行政のアドバイザーなども務め、法制度にも詳しい。日本経済新聞社運営のWebサイト「リテールテックJAPAN」のキャッシュレスに関するコラムの他、専門誌への執筆も多い。近著に『カード決済業務のすべて』(金融財政事情研究会)、監修書に『60分でわかる! キャッシュレス決済 最前線』(技術評論社)がある。

提供元・THE21オンライン

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