最近やたらマイナス金利で住宅ローンがお得という事を耳にすることが多いが、マイナス金利の事や住宅ローンの事が良くわからないという人も多いだろう。そこでマイナス金利と住宅ローンについて考えてみよう。

マイナス金利って?

2016年1月29日、日銀が日本初めてマイナス金利政策の導入を発表した。日銀が金融機関から預かっている当座預金の一部の金利をマイナスに引き下げる政策だ。

そこで日銀は当座預金で預かっている一部の金利を2月16日から−0.1%に引き下げたのだ。それに伴い各銀行は預貯金の金利を引き下げ、保険会社は貯蓄性の高い一時払い終身の一部等を売り止めにし始めた。国内の資産運用会社の多くがMMFの運用も難しくなり顧客に資金を返還する繰り上げ召還を決めた。そして長期金利の代表である国債も初のマイナス金利に転じたのだ。

手堅い金融商品が厳しい状況にあり、お金を手堅く増やす方法が減少してしまったことになる。

一方で、住宅ローンの金利も下がっているので、持家購入を考えている人にとっては住宅ローンが高金利時に借り入れた人より有利である。すでに住宅ローンを組んでいる人は借り換えをした場合、予定していた借金の返済の総額が減るかもしれないのだ。

借金を減らすのも家計のキャッシュフローの改善につながるのは確かだが、マイナス金利で住宅ローンがお得と安易に考えるのは危険だ。そこでいくつかの注意点を考えてみたい。

金利より重要なのは「頭金」

金利が低い今がチャンスと思って、充分な頭金がないまま住宅ローンを組むのは安易すぎである。例えば、5年後に頭金500万円を準備して家を建てようとしていた30歳の人が今なら金利が安いからということで頭金なしで家を建てることにしたとしよう。

物件は2500万円で月々7万円前後の返済が可能だとする。頭金のない今は2500万円全額ローンになる。金利が1.1%の全期間固定金利を組んだとすると月々の支払いが71742円で35年の返済になる。完済時65歳で利息支払いは総額で513万1649円だ。

今度は、5年後に同じく2500万円の物件を頭金500万円で2000万円のローンを組んだとしよう。金利は1.5%の全期間固定金利だとすると月々の支払いが月々70910円で29年の返済になる。完済時64歳で利息支払いは総額で467万6484円になるのだ。

金利が低い今を逃して金利が多少上昇したとしても、頭金をしっかり準備した方が結果的に月々の支払額も支払年数も支払利息もお得なのだ。つまり金利より返済年数の方が利息に大きく影響してくるのだ。

「変動金利」の住宅ローンでは意味がない

「固定金利」と「変動金利」では、借入時において変動金利の方が金利が低い。「固定金利」は金利が約束されている為その間の返済額は確定されるので、今後金利が上昇しようが下降しようが影響がないということだ。

それに比べ「変動金利」は金利が上昇すれば返済額が増え、金利が下降すれば返済額が減る。そのため「変動金利」を選択して、今後金利が上昇してしまった場合マイナス金利の恩恵を受けられないことになる。

「固定金利」と名前がついているが、固定期間が終了した後に変動金利となる「期間選択型固定金利」も変動金利と同じく将来金利が上昇すれば返済額は増えてしまう。案外「期間選択型固定金利」を完全に固定と勘違いしている人もいるので要注意である。

金利が上昇しても月々の支払いに上限枠があるから大丈夫と思っている人も多く見受けられる。実際は、金利上昇において月々の支払いの上限枠を超えた上昇分の支払いは一番最後に付け足され支払期間が延びてしまうのだ。

金利がもっと下降したら?

とはいえ、もっと金利が下降すれば今「全期間固定金利」で組んだ住宅ローンより、利息支払いが少なくてすむかもしれないのだ。確かにフラット35は史上最低金利を更新したが果たして今後に比べて今が最低になるのかわからない。

金利が下降したらその時は借り換えをすればいいと思いがちだが、借り換えをした際に借り換え手数料などの諸経費も含めて支払総額を減らすには一般的に「金利差1%」「残債1000万円」「残年数10年以上」が必要といわれている。

「金利差1%」は今後考えにくいため、金利の低いローンに借り換えることは事実上ないに等しいだろう。

既存の住宅ローンの借り換え

すでに住宅ローンを「変動金利」組んでいて、これを機に金利上昇時に不安のない「全期間固定金利」の住宅ローンに借り換えをしようとお考えの方も多いだろう。マイナス金利といっても「変動金利」に比べ「固定金利」は金利が高いため月々の返済額は増えてしまう。

加えて、借り換え手数料も大きく負担になる。そして前述したがこの借り換えで「変動金利」から「期間選択型固定金利」の変更では全く意味がないので注意が必要だ。借り換えの審査も簡単に通ると考えるのも安易である。

マイナス金利であるないにかかわらず、ライフプラン全体を考え住宅ローンのあり方を吟味するのが重要であることを忘れてはならない。

文・廣木智代(ファイナンシャルプランナー(CFP))/ZUU online

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