住宅ローンの超低金利時代にも変化の兆しが出てきた。住宅金融支援機構は、長期固定金利型住宅ローン「フラット35」の2018年1月の金利を発表したが、返済21年以上も20年以下も最低金利は2ヵ月ぶりに上昇に転じた。これまで住宅ローンの超低金利時代が続いてきたが、今後の金利動向はどのようになっていくのだろうか。また今のタイミングで借り換えをする場合に注意するべきポイントなどを解説する。

住宅ローン金利の現状と今後の見込み

2018年1月に入り、住宅ローン金利の現状はどのように動いているか確認してみよう。

住宅金融支援機構の長期固定金利型住宅ローン「フラット35」の2018年1月金利は、「フラット35」の借入21年以上35年以下で年1.36%~年1.99%、借入20年以下で年1.30%~年1.93%となっている。前月の2017年12月金利は、「フラット35」の借入21年以上35年以下で年1.34%~1.99%、20年以下で年1.27%~1.92%となっており、この2ヵ月だけを比較すると大きな変化は感じられないかもしれない。(金利は融資率9割以下、新機構団信付き)

しかし、直近12ヶ月ほどの動向を比較すると、緩やかながらじわじわと金利上昇の傾向がうかがえるのではないだろうか。

フラット35金利動向(借入期間21年以下35年以下)

2018年1月 / 年1.36%~1.99%
2017年12月 / 年1.34%~1.99%
2017年11月 / 年1.37%~1.99%
2017年10月 / 年1.36%~1.97%
2017年9月 / 年1.08%~1.66%
2017年8月 / 年1.12%~1.69%
2017年7月 / 年1.09%~1.64%
2017年6月 / 年1.09%~1.64%
2017年5月 / 年1.06%~1.63%
2017年4月 / 年1.12%~1.67%
2017年3月 / 年1.12%~1.67%
2017年2月 / 年1.10%~1.65%
2017年1月 / 年1.12%~1.69%
(金利は融資率9割以下、新機構団信付き)

上の表は長期固定金利型住宅ローン「フラット35」の金利動向だが、ネット系を含むメガバンクを見ると2018年1月に固定金利を引き上げたところも出てきている。変動金利については、ほぼ現状維持に留まったようだが、2月以降の住宅ローン金利の動向は特に注目したいところだ。

緩やかながらも上昇の傾向が現れているかもしれないが、まだまだ低金利であることには変わりがない。今のタイミングで借り換えをする場合には、どのようなことに注意すれば良いか確認してみよう。

 (1)「変動金利」選択ならリスク対策をする

住宅ローンには、全期間同じ金利が適用される「全期間固定金利型」と、5年、10年など一定期間だけ同じ金利が適用される「固定金利期間選択型」、市場金利の変動に伴って定期的に金利が変動する「変動金利型」があるが、この「変動金利型」を選択する場合には、金利上昇によるリスクを想定しておかなければならない。

住宅金融支援機構の2017年度民間住宅ローン利用者の実態調査によると、全体の約5割が「変動金利型」を選択しており、その割合はおおむね増えているとされる。

しかし一方で、「変動金利型」を利用した約4割の人が将来の金利上昇によってどれくらい返済額が増えるかについては理解していないか、不安に感じているという調査結果もでている。このような不安を感じてしまうのは、いざ金利上昇の時に対応策がわからないということが根底にあるのではないだろうか。

「変動型金利」を選択する場合は、目先の金利だけで判断せず、金利の動向チェックを習慣化すること、将来的に金利が上昇したときの対応策を具体的に想定しておくことがポイントとなるだろう。特に2018年は緩やかな金利上昇の可能性との見方もあり、2月以降の金利動向は注視しておいた方がよいだろう。

 (2) 金利差1.0%以下でもメリットが得られることもある

一般的に金融業界では、住宅ローンの借り換えでメリットが得られるとする目安は、住宅ローンの残高1000万円以上、借入残期間が10年以上、金利差1.0%以上と言われている。

なぜこのような目安があるのか、それは、住宅ローンの借り換え手続きには手数料などの諸費用もかかることになり、こういった費用をカバーできると想定されるのが上述のような目安とされている。しかし、低金利となっている現状においては、シミュレーションによっては金利差1.0%以下でもメリットが得られる可能性もある。

住宅ローンを取り扱うアルヒ株式会社が「フラット35」の借り換え経験者に対し、借り換え前後の金利差を調査したところ、全体の8割以上の人が「金利差1.0%未満」で借り入れをしたという結果も出ている。

たとえ金利差が1.0%以下でも、借り換え前の適用金利や借入残高など、個々の条件によっては現状の低金利での恩恵を受けられる可能性が十分にあるため、シミュレーションをしながら検討してみることが大切だ。

(3) 住宅ローン控除の適用要件はどうか確認する

基本的には、住宅ローンの借り換えによる新しい住宅ローンは「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」の対象ではない。しかし、次のような一定の要件に該当していれば、引き続いて住宅ローン控除を受けることが可能となっている。

A.    新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること
B.    新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど、住宅借入金特別控除の対象となる要件に該当していること

ここで注意しておきたいのは、「新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間」という要件である。低金利での借り換えによって、返済の期間を短縮したいという願望も出てくるかもしれないが、住宅ローン控除の要件を満たせなくなるため借入期間には気を付けたい。

なお、すでに住宅ローン控除を何年か受けている場合、新しい住宅ローンでの控除がさらに10年増えるわけではない。あくまで居住してからの通算10年となることを覚えておこう。

(4)団体信用生命保険での引受審査は大丈夫か

住宅ローンの借り換えをするということは、既存の住宅ローンは終了することになる。ここで注意したいのは、一緒に加入していた団体信用生命保険も終了するということである。そのため、借り換えの際に改めて保険加入の申し込みを行うことになり、加入審査の必要性がでてくる。

借り換え時の健康状態によっては、団体信用生命保険に加入できない、または、上乗せ金利の条件が適用される場合がある。低金利を期待して借り換えをしようとしても、スムーズに運ばない可能性もあることは注意しておきたい。

 (5) 借り換えの審査はより厳しくなる

住宅ローンは、新規の申し込みよりも借り換えの時のほうが、より厳しい審査になると言われている。既存の住宅ローンでの返済実績はもちろん、信用情報での与信も含め、改めて本審査を受けることになる。場合によっては借り換えを断られることや、減額での回答が返ってくるケースもある。

たとえ今現在、住宅ローンを契約しているとはいえ、ただ単にそれだけでは借り換え審査が有利であるということではないので注意が必要だ。

 (6) 手数料や諸費用を含めてもメリットがあるか確認する

借り換えは目先の金利だけではなく、次のような手数料や登記費用などの諸費用も必要になる。

A.    融資事務手数料
B.    保証料
C.    団体信用保険料
D.    契約時の収入印紙
E.    抵当権設定の登記費用
F.    適合証明発行費用(フラット35の場合)
G.    火災保険料 など

ちなみに、メガバンク系列ネット銀行で、借り換え融資額2000円、返済期間20年、借り換え前の金利2.0%、借り換え後の金利1.0%、元利均等でボーナス返済なしの毎月均等払いという条件でシミュレーションしてみると、融資事務手数料は43万2千円、登記関連費用の概算は16万5千円という算定になり、おおよそ60万円が手数料・諸費用等の費用と想定された。

手数料・諸費用はおおよそ50万から100万円の範囲内と言われている。手数料を含めた諸費用については、各金融機関でそれぞれ費用の設定が違っている。中には、団体信生命保険や保証料、印紙、一部繰上返済手数料などを無料としているところもあるため、最終的な適用金利、手数料・諸費用条件なども加味しながらのシミュレーションによって、どれだけのメリットが見えてくるかというところがポイントになってくるだろう。

 (7) 既存住宅ローンの固定期間の終了はいつか確認する

借り換えのタイミングを検討する場合、「とりあえず固定金利期間が終わるまでは……」と考えている人も一定数いるだろう。しかし、その固定期間の終了がいつ到来するかによっては、借り換えのメリットが大きいチャンスを逃す可能性もある。

なぜなら、固定期間が終了した時には、金利が上昇している可能性もあるからだ。今現在は低金利が続いている。しかし僅かながらも金利上昇の傾向になるかもしれない。「しばらく低金利が続きそうだから」と安心しきっては時機を逃してしまいかねない。

たとえ住宅ローンの固定期間中であっても、借り換えのメリットが受けられるかどうかは早めにシミュレーションをして検討したほうがよいだろう。

マイナス金利政策によって住宅ローンの低金利が続いてきたが、長期金利が上昇したために、住宅ローン金利にも動きが出始めている。今後の金利動向がどうなっていくのか、今のタイミングで借り換えをするべきなのかと迷っている人も多いだろう。しかし、迷う前にとりあえず現状の住宅ローンの金利や残高、返済期間をきちんと把握し、次に金融機関に相談してみるという行動に移すことだろう。そして、自分にとっての借り換えチャンスであるといえるかどうかしっかりと判断してみてはいかがだろうか。

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文・岩野愛弓(宅地建物取引士・住宅専門ライター)
 

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