住宅ローン控除を受けるには、初年度に必ず確定申告が必要だ。2年目以降は、会社員の場合なら会社の年末調整で処理されるので確定申告が不要になる。万が一、年末調整を忘れてしまっても、確定申告をすれば税金は戻ってくる。

住宅ローン控除とは一定の条件を満たした場合に税金が還付される制度

住宅ローン控除で税金を抑えられるが、どのような仕組みなのだろうか。年収1,000万円の人の場合、どのくらい税金が戻ってくるのかも併せてシミュレーションしてみよう。

住宅ローン控除の仕組み

住宅ローン控除とは、一定の条件のもとマイホームをローンで購入したり、省エネやバリアフリーなど増改築したりする場合に税金が還付される制度である。控除される税金は住宅ローンの年末残高の1%であり、10年間控除される。特例として消費税10%の住宅の購入や増改築をし、2019年10月~2020年12月31日までに入居した場合は控除期間が13年間に延長される。

1回に控除できる金額は通常40万円までであり、住宅ローン控除としてカウントされる年末残高は4,000万円が上限だ。長期の居住や環境などに配慮した一部の住宅は、年間50万円までの控除が認められる。控除対象になる税金は所得税だが、所得税から控除しきれないときは、13万6,500円を上限に住民税からも控除可能だ。

【住宅の購入と増改築に関する住宅ローン控除の違い】

住宅の購入 住宅の増改築
控除対象借入限度額 4,000万円
(一部の住宅は5,000万円)
4,000万円
控除期間 原則10年間
(消費税10%に伴う特例に該当すれば13年間)
控除率 【10年目まで】ローン借入金年末残高×1%
【11~13年目】以下のいずれか小さい額
ローン借入金年末残高×1% or 建物本体価格×2%÷3
控除対象 所得税からの控除を優先住民税は課税総所得金額の7%
(上限13万6,500円)が限度

※国税庁のホームページより筆者作成

これらの住宅ローン控除を受けるには、一定の要件に該当する必要がある。

住宅ローン控除の主な要件

住宅ローン控除の要件は住宅の購入と増改築で異なる部分もあるが、大枠は同じであり主な要件を確認しておこう。

  • 新築、取得、増改築の日から6ヵ月以内に居住する
  • 住宅ローン控除を受ける年の12月31日時点で居住している
  • 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
  • 新築、取得、増改築をした住宅の床面積が50平方メートル以上、かつ半分以上が居住用であること
  • 10年以上の住宅ローンを契約していること
  • 増改築の場合は工事費用が100万円超、かつ半分以上が居住用部分の工事費用であること

    増改築の場合は工事費用の最低金額や工事対象の要件もあるため、念のために事前に確認しておくといいだろう。

年収1,000万円の人は住宅ローン控除でいくら減税されるのか

ここまで説明した住宅ローン控除でどのくらい税金が還付されるのだろうか。還付の金額は収入や借入金額などで異なるが、年収1,000万円の人のマイホーム購入を例に住宅ローン控除のシミュレーションをしてみよう。条件は以下のように設定する。

<シミュレーション条件>

  • 年収1,000万円の会社員
  • 扶養控除内の配偶者あり
  • 所得税71万円
  • 住宅ローン借入金額5,000万円
  • 借入金利1%、借入期間35年間

    借入をしてからちょうど1年後が年末とすると、初年度の借入金年末残高は約4,880万円になる。住宅ローン控除の金額は年末残高の1%で本来なら48万8,000円だが、上限額があるため今回の控除額は40万円が適用される。初回は確定申告、翌年は年末調整により控除金額分が還付され、所得税として支払う金額は31万円で済む。

    住宅ローン控除は毎年続くため、総額ではかなりの金額になることがわかるだろう。シミュレーション条件が変わらないとして、10年間でどのくらい控除されるのか確認してみよう。

【住宅ローン控除の減税比較】

住宅ローン控除の期間 住宅ローン借入金年末残高 控除額(100円未満切り捨て)
1年目 4,880万802円 40万円
2年目 4,758万9,556円 40万円
3年目 4,636万6,145円 40万円
4年目 4,513万444円 40万円
5年目 4,388万2,328円 40万円
6年目 4,262万1,674円 40万円
7年目 4,134円8,355円 40万円
8年目 4,006万2,245円 40万円
9年目 3,876万3,215円 38万7,600円
10年目 3,745万1,134円 37万4,500円

※知るぽると「借入返済額シミュレーション」より筆者作成

10年間の住宅ローン控除の総額は396万2,100円と大きな金額になる。消費税10%の物件を買い、控除期間が13年間の場合はさらに控除金額を増やすことができる。11~13年目の控除額は「借入金年末残高×1%」か「建物本体価格×2%÷3」のいずれか少ないほうが控除できる金額だ。今回は「借入金年末残高×1%」として計算すると、控除額は3年間で104万3,300円増え、総額では約500万円にもなる。

【住宅ローン控除の減税比較(11年目以降)】

住宅ローン控除の期間 住宅ローン借入金年末残高 控除額(100円未満切り捨て)
11年目 3,612万5,873円 36万1,200円
12年目 3,478万7,298円 34万7,800円
13年目 3,343万5,276円 33万4,300円

※知るぽると「借入返済額シミュレーション」より筆者作成

上記のシミュレーションでは全額を所得税から控除できるが、引ききれない場合は13万6,500円を限度に住民税からも控除できる。いずれにしても住宅ローン控除の減税効果はかなり大きい。住宅ローン控除は会社の年末調整で簡単に申請できるが、初回のみ確定申告が必須なため、忘れないように手続きしよう。

住宅ローン控除を受けるなら初年度の確定申告は必須

住宅ローン控除を受けるには、初年度に確定申告をする必要がある。住宅ローン控除の確定申告は決して難しい作業ではないため、早めに手続きをして期限内に申告できるようにしたい。

初年度の住宅ローン控除に確定申告が必要な理由

住宅ローン控除を受けるには初年度に確定申告が必要だが、そもそもなぜ初回のみ確定申告しなければならないのだろうか。

確定申告とは、1年間の所得を計算し自己申告することで、所得税を納税したり還付を受けたりする手続きのことだ。会社員の場合は、会社があらかじめ概算で所得税を源泉徴収してくれており、最終的な納税額は年末調整で決定する。そのため会社員は確定申告する必要はないが、初年度の住宅ローン控除の申請は年末調整では対応できないため、確定申告が必要になる。

確定申告書はAとBのどちらを使うのか

確定申告が初めての場合、提出する「確定申告書」が2種類ありどちらを使えばいいのか迷うかもしれない。確定申告書には「確定申告書A」と「確定申告書B」があり、どちらを使っても問題はないが、以下の4つの所得のみの場合は「確定申告書A」を使用しよう。一般的に会社員が当てはまるはずだ。

【所得の種類とその内容】

所得の種類 内容
給与所得 勤務先からの給料、賞与などの所得
雑所得 他の9種類の所得に当てはまらない所得、公的年金の所得
配当所得 法人から受ける剰余金や利益の配当など
一時所得 生命保険や損害保険の満期金など

※国税庁のホームページより筆者作成

確定申告書は国税庁のホームページからダウンロードできるほか、電子申告(e-Tax)のサイトにある確定申告書作成コーナーから項目をオンラインで入力して出力も可能だ。

確定申告の時期や方法

確定申告は書類の申請期限があるため、遅れないようにしよう。毎年の申告時期と申告方法は以下の通りである。

<確定申告の時期>
原則として毎年2月16日~3月15日(土日祝と被る場合はずれる)

還付申告は上記の時期以前でも行えるため、早めに申告手続きをしても問題ない。また、確定申告の方法は以下の3つがある。

<確定申告の方法>

  • 管轄地域の税務署に直接提出に行く
  • 管轄地域の税務署に郵送で提出する
  • e-Tax(電子申告)を利用する

    管轄の税務署が近い場合は書類を直接持っていきやすいが、確定申告の時期は税務署が最も混雑するため、時間がかかる可能性がある。質問がない場合は、送料がかかるものの郵送を選択するほうが便利だ。郵送の提出日は消印で判断されるため、申告期限ぎりぎりの時は郵便局の窓口で確認しよう。郵送も必要ない方法としてe-Taxを利用するのも便利だ。

    e-Taxはオンラインで確定申告を完結させることができ手続きの手間はかからないが、マイナンバーカードやICカードリーダライタが必要なことから避ける人も多かった。現状は事前にe-Tax用のIDとパスワードを発行すれば、マイナンバーカードやICカードリーダライタを使わずに電子申告できるようになっている。難点としては、IDとパスワードを発行するのに税務署に1度行かなければいけないことだ。

    e-Taxは便利ではあるが、確定申告が毎年必要でないなら直接持参や郵送で済ませてもいいだろう。IDやマイナンバーカードなども必要なく、オンラインで必要項目を入力して確定申告の書類を印刷することも可能だ。どの方法で確定申告しても結果は変わらないため、自分のしやすい方法で手続きするといいだろう。

住宅ローン控除の確定申告に必要な書類

上記のいずれの方法で確定申告をしても、必要な書類は共通している。具体的に何が必要なのか確認しよう。

【住宅ローン控除の確定申告に必要な書類と入手先】

住宅ローン控除の確定申告に必要な書類 入手先
確定申告書A
(一般的に会社員が該当)
税務署や国税庁のサイト
(特定増改築等)
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
税務署や国税庁のサイト
本人確認書類として以下のいずれか
・マイナンバーカード
・マイナンバー通知カード
またはマイナンバー記載の
住民票+運転免許証等の本人確認書類
市町村役場等
建物・土地の登記事項証明書 法務局
(オンライン申請可)
不動産売買契約書(請負契約書)の写し 不動産会社との契約時に入手
源泉徴収票 勤務先
住宅ローンの借入金残高証明書 金融機関から郵送される

※フラット35のホームページより筆者作成

住宅ローンの借入金残高証明書は通常なら毎年10月下旬ごろに送付されることが多いが、初年度は1月下旬ごろに送付する金融機関もある。確定申告の時期が近づいてくると書類について不安になることもあるため、住宅ローンの契約時に確認しておいてもいいだろう。

購入する住宅によっては上記以外に、以下の書類も必要になる。

<一定の耐震基準を満たす中古住宅の場合>
耐震基準適合証明書または住宅性能評価書の写し

<認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合>
認定通知書の写し

いずれも契約した不動産会社から入手できる。対象の住宅を購入した人は手元にあるか確認しておこう。

住宅ローン控除の確定申告後はいつ還付金が還付されるのか

住宅ローン控除の確定申告をした後、還付金はいつごろ受け取れるのだろうか。

国税庁によると、還付金の支払いまで1~1ヵ月半程度かかるとしている。e-Taxの場合は2~3週間程度が目安だ。受取の方法は、指定銀行口座への振込またはゆうちょ銀行や郵便局に直接出向いて受け取る2種類がある。還付金の振込を希望するときは、確定申告書第一表にある金融機関を記入する欄に必要事項を記載しておこう。

振込の場合、旧姓など名義が異なっていると振込できなかったり、一部のインターネット専用銀行は対象外であったりする点は注意したい。

会社員なら2年目以降は年末調整で住宅ローン控除が可能

住宅ローン控除1年目は確定申告が必須だが、会社員の場合、2年目以降は会社の年末調整で住宅ローン控除を受けることができる。個人事業主の場合は年末調整がないので、2年目以降も確定申告が必要だ。

会社員が年末調整で住宅ローン控除を受けるための手続きに必要な書類は次の2つだ。

「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」

1年目に住宅ローン控除のために確定申告を行うと、その年の10月下旬ごろに上述の証明書が1枚×9年分=9枚が送付されてくる。一度にまとめて送付されるので、紛失しないよう注意したい。

住宅ローンの年末残高証明書

住宅ローンの返済が滞りなく行われた場合の年度末残高証明書として、住宅ローンを組んでいる金融機関から翌年の1月下旬ごろ送付される。

2年目以降に住宅ローン控除を受けるための年末調整の方法は以下だ。

  • 住宅ローンの年末残高証明書の内容などを基に住宅ローン控除額を計算。
  • 「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」に記載。
  • 上述の書類に年末残高証明書を添付して年末調整の書類と一緒に提出。

年末調整で2年目の住宅ローン控除の手続きを忘れた場合は確定申告を

年末調整で2年目の住宅ローン控除の手続きを忘れてしまった場合でも、住宅ローン控除を受けられるのだろうか。

法律上では、翌年の1月末までは会社に再度年末調整を依頼して修正することが可能だ。だが、大企業など会社によっては締め切りが早く対応してくれないこともある。その場合は自分で確定申告をすれば、住宅ローン控除を受けることができる。

初年度の確定申告では、売買に関係する資料など多くの書類を集める必要があったが、2年目以降の確定申告では、その年度の源泉徴収票と住宅ローンの年末残高証明書を用意すればよい。

還付申告は5年間の申告期限がある

住宅ローン控除など税金が戻ってくる還付申告は、控除が発生した翌年の1月1日から5年間の申告期限内に手続きをすれば控除を受けることはできる。

通常の確定申告は2020年なら2月17日~3月16日までであるが、還付申告の場合は、5年間の申告期限内で税務署が開庁している日であればいつでも可能だ。

確定申告を行う機会の少ない会社員にとって、自身で確定申告を行うのはそれなりに手間がかかる。早めに書類などを準備し、会社の年末調整で終わらせておくに越したことはないだろう。

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文・國村功志(ファイナンシャルプランナー)
 

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