株価は業績や株式市場の地合いなどの影響を受けて動くだけでなく、どこの証券取引所に上場しているのかによっても影響される。

「日経平均株価が堅調に推移しているのに、自分が保有している銘柄の株価は大幅に下落しているのはなぜだろう」と思ったことはないだろうか。色々な要因がもちろん考えられるが、上場市場が関係していることも多い。一例を取り上げてみよう。

証券取引所の種類と特徴

国内で株式売買ができる証券取引所は東京、名古屋、福岡、札幌の4ヵ所にあり、主たる株式市場としては東京証券取引所一部(東証一部)が有名だ。ユニクロで有名なファーストリテイリング<9983>やソフトバンク<9984>など、日本を代表する企業が数多く上場している。

東京証券取引所は他の証券取引所があり、東京証券取引所二部(東証二部)や、JASDAQ市場(ジャスダック)、マザーズ市場に分かれている。一部と二部は比較的大企業向け、JASDAQ市場とマザーズ市場は新興市場向けと区分されている。地方の名古屋には名古屋証券取引所(セントレックス)、福岡証券取引所(Q-Board)、札幌証券取引所(アンビシャス)の4ヵ所がある。

証券取引所ごとに上場できる基準が決められているので、企業が好きな証券取引所に上場できるわけではない。

東証一部指定の主な要件としては、
・株主数が2200人以上、
・時価総額が40億円以上、
・流通株式が2万単位以上、
・最近2年間の経常利益の合計5億円以上、または時価総額が500億円以上
・最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
などがある。これを満たしてはじめて東証一部に上場できるのだ。

そこで、上場要件や企業カラーなどから上場する証券取引所を選ぶわけだが、設立まもないが将来有望な企業、たとえば人口知能(AI)やロボットによる業務自動化のRPA(Automation)といった最新技術を主要事業としている新興企業の多くが上場する証券取引所がマザーズ市場だ。

マザーズ市場では近い将来、東証一部へのステップアップを考えている成長企業向けの証券取引所で、企業には将来成長する可能性が求められる。企業によっては、新規上場(IPO)した時には個人投資家の人気が集まり、初めて値段がついた時には募集された時の価格(公募価格)の数倍にまで値上がりすることも珍しくない。

マザーズ市場指定の主な要件としては、
・株主数が200人以上、
・時価総額が10億円以上、
・流通株式が2,000単位以上
という風に、成長する可能性があれば、比較小さい企業であっても上場することが可能になる。

成長に期待が高まることで株価は買われて上昇しやすく、反対に、期待を裏切る決算内容で株価が下落に転じることはよくあることだ。

東証一部の代表的な株価指数には日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などがあり、マザーズには東証マザーズ指数がある。証券会社によっては地方の証券取引所に注文できない場合があるので注文時に気づくことはあるが、そうでない市場に上場している場合は、取引する株がどこに上場しているのかを気にせずに購入している人も多いかもしれない。上場している取引所が異なれば、その銘柄の値動きはまったく異なるものになるので、必ず確認しておきたい。

日経平均株価が上昇しても、マザーズが下落することはある

たとえば、日経平均株価は3月26日に2万347円で短期的な底を打ち、株価はその後上昇に転じていて、4月16日現在、2万1835円だ。一方、東証マザーズ指数も3月26日に1114ポイントで短期的な底を打ったが、株価は再び下落に転じていて、4月16日現在1122ポイントと、3月につけた安値に迫る値動きとなっていた。

日経平均株価(日経225)は東証一部に上場している日本を代表する企業225社の株価を調整して構成されているが、東証マザーズ指数はマザーズ市場に上場している全銘柄を対象に時価総額で調整して構成されている。マザーズに上場している銘柄と、東証一部に上場している銘柄の値動きはまったく異なるため、日経平均株価などの株価指数が堅調でも、東証マザーズ指数が軟調な場合には新興市場銘柄の株価は軟調にならざるを得なくなる。株を取引する場合には、どこの証券取引所に上場しているのかを必ず確認し、その銘柄が上場している株価指数に合わせた取引を考える必要があるのだ。

東証マザーズ指数は現在、3月につけた安値に向けて下落中であることから考えると、新興市場銘柄の多くで株価が下落している可能性が高いだろう。このような状況下で安値を割り込むような事態になれば、株価下落が株価下落をよりいっそう加速させることはよくあることだ。とりわけ上場要件を東証一部と比べてみても、小粒な銘柄が多くなることは想像に難くない。

小粒な銘柄になればなるほど値動きが大きくなりがちだ。株価が上昇している時には利益が発生しやすいが、一転して株価が下落に転じると損失が発生しやすいことになる。取引する銘柄を選ぶ時は、自分の投資スタンスに合った銘柄かどうか、上場している取引所がどこなのか、事前に確認しておくことが大切だろう。

文・横山利香(よこやまりか)/ZUU online

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