現在の保険料は妥当なのか。保険料の相場はどのくらいなのか。こういった悩みを抱える人は少なくない。ただ、高い保険料を払っているから安心できるのかというと、あながちそうとも言い切れない。医療保険選びをする際は、保険料だけでなく保障内容や払込期間についても慎重に検討する必要があるのだ。

保険料の相場はどのくらいなのか?

医療保険の見直しをするきっかけの中でも特に多いのが、「保険料」に関する悩みである。「現在加入している商品の保険料は妥当なのか?」「もっと安い医療保険はないのだろうか?」「友人に比べて毎月の保険料が安いが、本当に大丈夫なのだろうか?」というように、保険料に関する悩みは尽きない。

保険料は家計において一定割合を占める支出であるうえに、長期間払い続けなければならないものでもある。そのため、「保険料を安く抑えたい」と考えるのは当然であろう。ただ、保険には「万一の事態への備え」という性格があるため、毎月の保険料が周囲の人に比べて安いと、「保険料が安いのはいいが、保障は十分なのだろうか」と不安に思う人もいる。

では、世間の人々は毎月どのくらいの額を保険料の支払いに充てているのだろうか。

●年間払込保険料の平均はどのくらい?
生命保険文化センターの調査によると、2016年における年間払込保険料の平均は男性が22万8,000円、女性が17万4,000円となっている(『平成28年度生活保障に関する調査』より)。これは医療保険だけでなく、個人年金保険など加入している商品全ての保険料をもとに算出された数値ではあるが、自分が現在支払っている保険料と比較する際の参考にはなるだろう。

ちなみに、2001年における年間払込保険料の平均は、男性が31万5,000円、女性が24万9,000円であった。15年間で男性は約8万7,000円、女性は約7万5,000円、年間払込保険料が少なくなっているのだ。

これは、乗合代理店が増えて保険の見直しや比較検討が積極的に行われるようになってきたこと、安い保険料で手厚い保障を得られる収入保障保険の登場、掛け捨てタイプの終身医療保険の普及など、様々な要素が影響しているのであろう。

医療保険で大切なのは保険料ではなく保障内容

医療保険をはじめとする生命保険の保険料は、予定利率や予定事業費率、責任準備金の額(将来の保険金等の支払に充てるための資金)を基に算出される。そのため、予定利率や予定事業費率の変化により保険料が改訂されると、同じ保障内容でも加入時期によって保険料に差が出る可能性がある。また、解約返戻金がある商品はそうでない商品に比べて積み立てておくべき責任準備金の額が大きく、保険料が高くなる。さらに、保険料の払込方法には「終身払い」「10年払い」「60歳払い済み」「65歳払い済み」というようにいくつかの種類があり、同じ商品・同じ保障内容でも払込期間によって保険料が変化する。

つまり保険は、保険料が高ければ高いほど保障内容も優れている、というものではないのだ。上では年間払込保険料の平均値について紹介したが、現在支払っている保険料が平均以上であるからといって安心することはできないし、平均以下であるから保障内容が悪いというわけでもない。

もちろん、同じ商品であれば入院保障日額を上げたり特約を付加したりすることで保険料が高くなるが、異なる生命保険会社・異なる商品であれば、同じ保障内容でも保険料に差が出る可能性がある。医療保険選びをする際は、「保険料が高いか安いか」「保険料の相場はどのくらいなのか」ということではなく、「自分にとって必要十分な保障になっているかどうか」「ニーズに合った内容かどうか」という点を重視することが大切なのだ。

保険料をいつまで払う?着目すべきは払込期間

医療保険に加入する際は、「保険料をいつまで払うのか」という点についてもよく考えてみる必要がある。近年は保険料が生涯にわたり上がらない終身医療保険の人気が高まっているが、若い頃は問題なく保険料の払い込みができていても、年金暮らしになるとそれが困難になるケースがあるのだ。

●65歳を区切りに世帯年間払込保険料が減少
生命保険文化センターが2015年に実施した調査によると、世帯主年齢別の世帯年間払込保険料の平均は以下のようになっている(『平成27年度生命保険に関する全国実態調査』より)。

・29歳以下……24万2,000円
・30歳以上34歳以下……27万6,000円
・35歳以上39歳以下……32万9,000円
・40歳以上44歳以下……41万円
・45歳以上49歳以下……44万2,000円
・50歳以上54歳以下……49万8,000円
・55歳以上59歳以下……49万2,000円
・60歳以上64歳以下……43万4,000円
・65歳以上69歳以下……33万9,000円
・70歳以上……29万9,000円

50歳半ばをピークとして少しずつ高くなっていた保険料が、65歳を区切りとして大幅に安くなっているのだ。もちろん、年金生活になったことで保険内容を見直したり、子供の自立により死亡保険の保障額を小さくしたり……といったことも影響しているのだろうが、老後の保険料負担を抑えるために短期払いを選択し、65歳までに保険料の支払いを終えている可能性も十分考えられる。

●終身払いにすることで老後の家計が圧迫されるケースが
終身医療保険に加入する場合、終身払いにすることで保険料を安く抑えることはできる。しかしこの払込方法では、退職して収入が減った老後も、亡くなるまで保険料を支払い続けなければならない。保険料を終身払いにすることで、老後の家計が圧迫されてしまう可能性があるのだ。

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険会社の『健康のお守り』という商品で、具体的にシミュレーションしてみる。40歳男性が入院保障日額1万円で加入する場合、月額保険料は終身払いで3,957円、60歳払い済みで8,045円となる(2018年6月現在)。

保険料だけを比較すると後者の方が割高なようにも思えるが、働き盛りで収入が安定している時期に支払う月額8,045円と老後に支払う月額3,957円とでは、その性質が大きく異なる。「80代、90代になってからも滞りなく保険料を支払えるだろうか……」と不安に思う人も多いのではないだろうか。

●保険料を短期払いにして老後に備える
医療保険は、保険料を単純に比較するだけでは内容の良し悪しを測ることができない。上述のシミュレーション例のように、全く同じ保障内容でも払込期間によって、月額保険料に倍以上の違いがでるケースがあるからだ。たとえ倍以上の保険料になったとしても、老後の保険料負担がなくなるのであれば十分価値があるのではないだろうか。

医療保険に加入する際は「現在の保険料を安く抑える」ことだけを考えるのではなく、「老後の保険料負担を軽くする」という点についても入念に検討することをおすすめする。収入が安定しており、ある程度の余裕があるのであれば、短期払いを選択して老後の負担をなくすのも1つの選択肢ではないだろうか。

無理なく払い続けられる保険料を設定する

医療保険に加入する際は、もう1つ気を付けなければならないポイントがある。それは、「保険料を無理なく払い続けられる額に設定する」ということだ。

平均寿命が伸びている現在、保険期間が終身の医療保険はマストといっても過言ではない。ただし、保険期間を通して保障を得るためには保険料を払い続けなければならず、これが難しくなり契約が失効した場合は、それ以降保障を受けることができない。もちろん、経済状態が安定した後で再度保険に加入するという方法もあるが、健康状態によってはそれが難しい可能性もある。

保険料について考える際に大切なのは、「相場がいくらなのか」「高いのか」「安いのか」、ということではなく、「払い続けられるのか」ということなのだ。

●年収に占める保険料の割合は適正か?
生命保険文化センターが実施した「世帯年収に占める年間保険料」に関する調査によると、2015年における全国平均は7.4%となっている(『平成27年度生命保険に関する全国実態調査』より)。年収600万円の世帯の場合、約44万4,000円を年間保険料として支出している計算になるのだ。

現在の保険料が適正なのかどうか迷っているならば、世帯年収に占める年間保険料の割合を計算してみてはいかがだろうか。もちろん、年齢や家族構成、年収などによって多少の違いは生じるだろうが、「現在の保険料を払い続けられるかどうか」判断する際の一材料にはなるだろう。

●自営業者とサラリーマンで異なる考え方
自営業者・会社経営者とサラリーマンとでは、保険料に関する考え方を変えなければならないケースがある。

というのも、自営業者・会社経営者とサラリーマンでは、失業した場合に受けられる保障が大きく異なるのだ。サラリーマンが失業した場合は失業手当が支給されるが、自営業者が廃業したり経営する会社が倒産したりした場合は、これを受け取ることができない。そのため自営業者・会社経営者が失業した場合、たちまち保険料の支払いが困難になる可能性が考えられるのである。

起業して数年しか経っていない人や今後数十年にわたって会社を存続させられるかどうか不安な人、現在の収入がいつまで続くか不安な人は、多少負担が大きくなってしまっても収入が安定しているうちに保険料を払い込んでしまうことを検討してみてはいかがだろうか。

医療保険は相場にこだわらず自分に合ったものを選ぶ!

医療保険選びにおいて多くの人が着目する保険料。しかし、保険料の相場はあってないようなもので、保障内容や払込期間などによってその額は大きく変化する。医療保険選びをする際は自分に合った保障内容になっているかどうか、無理なく払い続けられる保険料になっているかどうか、保険料の払込期間はどうするのか、といった点について慎重に検討することが大切である。これまで保険料をもとに保険の良し悪しを判断してきた方は、これを機に違う観点からの保険選びをしてみてはいかがだろうか。

文・曽我部三代/ZUU online
 

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