カードローンは一般的に住宅ローンや自動車ローンなどの個別ローンと比べて金利が高いので、少しでも効率的に返済をしたいと考える人が多いだろう。カードローンにも住宅ローンと同じく繰り上げて返済する方法があるが、これを上手く利用することで返済額や返済期間が大きく変わってくる。今回はカードローンの繰り上げ返済のメリットとデメリットを紹介し、実際どれだけ効果があるのかシミュレーションを行う。

目次
1,カードローンの2つの返済方法
2, 繰り上げ返済の3つのメリット
3, 繰り上げ返済で支払総額は変わる?
4, 繰り上げ返済の2つのデメリット
5, 繰り上げ返済で無理のない返済を

1,カードローンの2つの返済方法

カードローンの返済方法には2種類あり、毎月決まった額を返済する定額返済が基本だが、各カードローン会社では、繰り上げて返済する臨時返済という方法も受け付けている。カードローンの金利は日割り計算のため、早めに返済することができればその分利息の総額も減る。2種類の返済方法について、詳しく見ていこう。

カードローンは約定返済が基本

毎月決まった日に決まった金額を返済していく方式を「約定返済」といい、カードローンの返済はこの約定返済が基本になる。約定とは「約束して決めること、契約」という意味だ。つまり、約定返済とは契約どおりに毎月返済することである。

カードローンでは実際に借りたお金である「元金」の返済と、その元金についた「利息」を支払わなければならない。利息のつき方はカードローン会社によって異なるが、約定返済では毎月の返済額を元金と利息の両方に振り分ける。つまり、返済額はすべてが借りたお金の返済のためではなく、一部が利息に充てられるのだ。

カードローンの繰り上げ返済は全額が元金の返済に充てられる

繰り上げ返済とは、時期を定めず借入残高の一部または全部を返済することである。「臨時返済」「追加返済」「随時返済」と呼ばれることもある。

ポイントは、繰り上げ返済のお金は全額が元金の返済に充てられる点だ。カードローンの利息は、借入残高と金利、そして借入日数によって決まる。繰り上げ返済によって元金である借入残高が減れば、支払う利息の総額を抑えることができる。

2,カードローン繰り上げ返済の3つのメリット

カードローンは約定返済が基本であるため、繰り上げ返済を行う場合は自分で手続きをする必要がある。繰り上げ返済を行うと以下のようなメリットがあるので、ぜひ検討したい。

メリット1……利息の支払総額を抑えられる

まず、カードローンの利息のつき方をおさらいしておこう。ほとんどのカードローン会社では、約定返済での返済金額を決める方法として「元利定額返済方式」と「残高スライド元利定額返済方式」のどちらかを採用している。

「元利定額返済方式」では、「元金と利息を合わせて一定額」を毎月の返済日に返済していく。例えば、毎月の返済金額が「5万円」と決まっていれば、この5万円の中に元金と利息が含まれている。残高が500万円でも50万円でも、完済するまで変わらず月々5万円ずつ返済することになる。ただし、5万円の中の元金返済分と利息分の割合は、カードローンの残高によって変わっていく。

「残高スライド元利定額返済方式」は、元金と利息を合わせて一定額を返済していく点は「元利定額返済方式」と同じだが、その返済額が借入残高によって変動する点が異なる。例えば、借入残高が500万円なら月々の返済額は5万円、300万円なら4万円というように、残高に応じて返済額が変わるのだ。カードローンの毎月の返済額のうち、元金返済分の割合が変化するのは元利定額返済方式と同じである。

このように、約定返済での返済では全額が元金に充てられるわけではなく、一部が利息の返済に充てられる。利息は借入額が多ければその分大きくなるので、毎月の返済額に占める利息の割合は、返済初期のほうが大きくなり、その分元金の返済が少なくなる。

しかし、繰り上げ返済では返済額がすべて元金の返済に充てられる。約定返済の場合は、月々5万円の返済を10ヵ月続けても、実際の元金の返済額は50万円に満たない。繰り上げ返済であれば、50万円がすべて元金の返済に充てられる。カードローンの利息は元金をベースに計算されるので、元金が減れば利息を減らすことができ、結果として支払い総額が少なくなる。

メリット2……返済期間が短縮される

カードローンの返済は、月々の返済金額が同じであれば、300万円を返済するよりも500万円を返済するほうが、当然返済期間は長くなる。

前述のとおり、繰り上げ返済では支払い総額を少なくすることができるが、元金を減らすことにより、同時に返済期間も短縮することができるのだ。

メリット3……返済した分、利用限度額まで借りられる

カードローンは、申込者の年収や他の借入状況に応じて利用可能枠、つまり借入限度額が決まる。カードローンでは、借入限度額の範囲内であれば何度でも自由に借入ができる。

例えば借入限度額が500万円の人の場合、残高が450万円であれば、あと50万円しか借入ができない。しかし、繰り上げ返済をして残高を300万円まで減らしていれば、あと200万円まで借り入れられるというわけだ。

突然お金が必要になることもあるが、その時にカードローンを利用できないとなると、条件の悪いローンを組むことになるかもしれない。そうならないためにも、ボーナスなどの臨時収入があれば積極的に繰り上げ返済に回し、借り入れられる金額に余裕を持たせておきたい。

3,繰り上げ返済をすると、カードローンの支払総額はどれくらい変わるのか?

前述のとおり、繰り上げ返済を利用すると約定返済のみの場合よりも支払総額と返済期間が短くなるが、実際どれほどの効果があるのだろうか。ここでは、その効果をシミュレーションによって比較してみよう。

以下の借入条件でカードローンを利用し、約定返済のみで返済した場合と半年後に20万円繰り上げ返済した場合の、それぞれの完済年月と総返済額を表1にまとめた。

<借入条件>

  • 借入金額    :100万円
  • 借入日    :2020年6月1日
  • 返済方式    :元利定額返済方式
  • 金利        :年利15.0%
  • 約定返済    :毎月26日に3万円ずつ返済

表1.約定返済のみの場合と繰り上げ返済を併用した場合の返済シミュレーション

約定返済のみで返済 繰り上げ返済を併用
返済開始年月日 2020年7月26日 2020年7月26日
繰り上げ返済 2020年12月1日に20万円
返済完了年月 2024年3月 2023年4月
利息分 32万1,210円 21万4,929円
返済総額 132万1,210円 121万4,929円
※Numbersより筆者作成

このケースでは、繰り上げ返済を併用した場合、総返済額が10万6,281円少なくなっている。また、返済が完了するまでの期間も11ヵ月短くなった。借入金額や返済方式、金利、毎月の返済額によって結果は変わるが、繰り上げ返済の効果の目安にはなるだろう。

4,カードローン繰り上げ返済の2つのデメリット

繰り上げ返済はカードローンの負担を軽くするための有効な方法ではあるが、利用の仕方を間違えると逆効果になることもある。ここでは、繰り上げ返済を利用する際のデメリットを見ておこう。

デメリット1……繰り上げ返済をすると手持ちの資金が減る

繰り上げ返済の額は多ければ多いほど利息の軽減が期待できるが、預金のほとんどを繰り上げ返済に使ってしまうと、急にお金が必要になった時に対応できなくなる可能性がある。繰り上げ返済はあくまで余裕資金で行うことが大切だ。少なくとも生活費の3ヵ月から半年分の預金は、口座に確保しておこう。

デメリット2……繰り上げ返済をしても約定返済は継続する

繰り上げ返済は約定返済とは別に扱われるので、まとめてお金を返済したからといって、約定返済が猶予されたり減額されたりすることはない。上記のシミュレーションの例では、2020年12月1日に20万円を繰り上げ返済したからといって、同月26日の約定返済がなくなるわけではないのだ。

例えば12月1日に20万円を繰り上げ返済した後、銀行口座の残高が3万円未満になった場合、そのまま26日を迎えると約定返済ができず延滞が発生してしまう。そうなると、他のローンやクレジットカードなどを申し込む際に参照される信用情報に傷がついてしまう。遅延損害金を支払わなければならなくなることもあるので、注意しなければならない。繰り上げ返済を行うときは、その後の約定返済のスケジュールも確認しておくことが大切だ。

5,カードローンの繰り上げ返済を上手く取り入れて無理のない返済を

繰り上げ返済は、返済額がすべて元金の返済に充てられる返済方法だが、いざという時に手元の資金が足りなくなり、追加で借り入れたり、別のローンを組んでしまったりしては元も子もない。無理のないカードローンの返済計画を立て、繰り上げ返済を上手く取り入れていくことが大切である。

文・松岡紀史(ライツワードFP事務所代表)
 

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