目次
中国ECサイトがコンテンツ強化
ライブコマースブームが落ち着く
「社区团购」、「同城零售」などECの細分化市場が過熱化

新型コロナウイルスのパンデミックは世界経済及び社会に大きな影響を与え、人々の生活を一変させた。この1年間、中国のEC業界ではライブコマースが一気に流行し、海鮮食品ECに注文が殺到したり、政府がネット大手への独占規制強化を行うなど、様々な出来事が起きた。

チャイトピ!はそんな2020年を振り返り、中国EC業界のトレンドをまとめてみた。

中国ECサイトがコンテンツ強化

アリババや京東といったEC大手が依然として大きな勢力を持つ中、地方市場のユーザーを獲得し急成長した拼多多(pinduoduo)をはじめ、ショート動画などのコンテンツサイトもEC機能を導入し、EC大手と市場シェア争いをしている。そしてそんな彼らに脅威を感じたEC大手らはコンテンツ強化に力を入れ出した。この1年間の主流のECアプリ機能調整を見てみよう。

▲テスト中のタオバオの「逛逛」機能(weiboより)(写真=チャイトピ!より引用)

 

アリババ傘下のタオバオ(淘宝)は11月からコンテンツ機能の「逛逛(guangguang)」の内部テストを行っている。同機能はトップ画面に設置され、KOLが配信した文章や画像、動画などのコンテンツが一覧で表示される。一部の動画には商品リンクが貼られており、配信内容の多くがグルメや旅行などの生活関連である。ユーザーにタオバオでコンテンツを閲覧させることが狙いだと見られる。

▲天猫アプリのライブ配信と「点評」機能(チャイトピ!よりキャプチャー)(写真=チャイトピ!より引用)

 

同じくアリババ傘下のECアプリ天猫(Tmall)は12月、トップページに「ライブ配信」チャンネルの入り口を設置した。さらに商品に点数をつけ、レビューを書く機能「点评」をナビに入れ、ユーザーによるコンテンツ作りを推進している。

▲京東・ユーザーにレビューを促す機能「有奖晒单」 (チャイトピ!よりキャプチャー)(写真=チャイトピ!より引用)

 

また、中国ECシェア2位の京東(JD)は5月にアプリをバージョンアップし、ユーザーのレビュー配信を促す機能を追加した。

ライブコマースブームが落ち着く

中国ではライブコマースが2019年から話題となり、2020年には新型コロナによりブームが一気に拡大した。市場規模は2017年の190億元から2020年には1兆元にまで急増した。

リアル店舗が新型コロナの影響を受け売上が落ち込み、各ブランドは一斉にオンラインマーケティングに戦略転換した。販売と宣伝効果が非常に高いライブコマースによるマーケティングは、様々な企業に活用されマーケティングの主流となった。

▲各ライブコマースプラットフォームの消費者利用率(出典:中国消費者協会)(写真=チャイトピ!より引用)

 

特にトップクラスの人気を誇るKOLのライブ配信は驚愕の売上を出し続け、各ブランドがこぞって彼らに商品宣伝を依頼する。中国EC最大のセールイベント「ダブル11」の前夜のライブ配信でもKOLのトップ1位、2位に並ぶ李佳琦(Austin)と薇娅(viya)のそれぞれの配信視聴者数が1億人を超え、取引額も30億元を超え、SNSで話題になった。

しかし、トップクラスのKOLが出した成績が盛り上がりを見せる裏では、人気と売上の格差がますます広がっているKOLの影響力の二極化、視聴者数や売上の水増し問題がますます深刻化している。さらには2020年下半期から有名KOLが販売した商品の偽物、品質問題などが多発、特に11月に起きたkuaishou(快手)の有名KOL・辛巴(Simba)が関係した偽物事件の影響が大きい。

▲辛巴チームの偽物販売についてのSNS投稿(チャイトピ!よりキャプチャー)(写真=チャイトピ!より引用)

 

辛巴のライブ配信チームメンバーの1人が紹介した燕の巣(中国の高級食材)が実は砂糖水であることがSNSユーザーの通報により発覚した。その後地元の市場監督管理部門が事件を調査し、辛巴チームを90万元(約1437万円)の罰金で処罰した。

これらの問題を受け、中国規制当局は一連の規則を打ち出し、KOLの実名認証を義務つけるなどライブコマース業界への規制を強化している。政府の規制強化を受け、今後業界の熱気は落ち着くと分析されている。

「社区团购」、「同城零售」などECの細分化市場が過熱化

ネットショッピングと言えば、日本でいう楽天やAmazonなどの総合ECモールがまず頭に浮かぶだろう。中国EC市場は競争が厳しく、細分化市場が着々と開拓されている。その中でも特に「社区团购」と「同城零售」がホットな投資分野である。

▲住宅地向け共同購入サービス(左)・市内即時配達サービス(右)各関連アプリ(チャイトピ!作成)(写真=チャイトピ!より引用)

 

「社区团购」とは日本でいう住宅地向け共同購入サービスである。住宅地の住民をターゲットに生鮮食品ECサービスを提供するのだ。2019年からアリババ傘下のフーマー(盒马鲜生)をはじめ、大手らによる生鮮ECサービスが一時流行したが、生鮮食品EC のサプライチェーン、物流コストはかなり高く、黒字化の道筋が見えず、数々のブランドが倒産に追い込まれた。しかし2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大が生鮮食品ECに予想外のビジネスチャンスをもたらした。アリババの他に、京東や拼多多もスタートアップに投資、畑違いのネット配車・滴滴(DiDi)も社区团购サービスの「橙心优选」を打ち出し市場参入を果たした。

「同城零售」は市内即時配達サービスのことであり、「社区团购」と比べ、サービス提供エリアが比較的広い。市内の住民をターゲットにECサービスを提供しているのだ。アリババ傘下のフードデリバリーサービス・elemeやそのライバルである美団は事業を拡大し、スーパーやコンビニをはじめ百貨店などとも提携し、消費者に生活用品などのECサービスを提供している。配達は1時間から半日以内の送達が一般的である。

中国総合EC市場はアリババと京東の2強局面が安定している。後発の企業たちは大手との正面競争を避け、細分化市場を皮切りに市場進出を行っている。そんなプレイヤー達に警戒してEC大手らも投資や自社開発を積極的に展開し、影響力拡大に励んでいる。
 

 

提供・チャイトピ!

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