『訪日ラボ』より

「計画旅行」から「衝動旅行」へ 中国で起きた変化:53.2%は「旅先でなにするか決める」

2020.10.17
ビジネス・キャリア
(画像=訪日ラボより引用)
(画像=訪日ラボより引用)

新型コロナウイルスの世界的流行により、旅行産業が大きなダメージを受けており、旅行者の旅に対する考え方や行動志向にも変化が生じています。

アフターコロナの旅行需要の回復に向けて、インバウンド担当者は海外における国内旅行の最新動向をキャッチする必要があるでしょう。

ここでは、日本のインバウンド市場を牽引する中国に焦点を当て、中国ネットのビッグデータを研究・分析する会社「比达信息咨询」が発表した「2020上半年度中国旅游行业发展分析报告(2020年上半期中国旅行業界発展分析報告)」を取り上げ、コロナ禍での中国人旅行者の行動や意思決定の変化について紹介します。

目次

コロナ禍の旅行トレンド:「周辺遊」「短・中距離旅行」が主力に

中国では、経済の成長と一人当たり所得の向上に伴い、人々の旅行に対する需要が拡大しており、旅行がより身近な存在になりつつあります。

報告書によれば、中国人の年間平均旅行回数は増加し続けており、2010年において1.6回だった年間平均旅行回数は、2019年には4.3回に上っています、

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年は旅行需要が大幅に減少し、報告書では年間平均旅行回数は2.8回にまで落ち込むと予想されています。それと同時に、旅行タイプ志向においても変化が起きています。

コロナ禍以前の旅行タイプ志向では「海外旅行」がもっとも人気であり、調査対象の過半数(52.3%)を占めていました。次いで「長距離の国内旅行」が26.9%、短・中距離の国内旅行である「周辺遊」が全体の20.8%でした。

しかし、今年はコロナ禍による渡航制限や移動によって感染リスクが高まることから、「周辺遊」が1位となり、回答率が75.9%となりました。コロナ禍以前に1位だった「海外旅行」を選んだ人は、0.7%とほぼ消失しています。

▲[コロナ前後旅行スタイルの変化-周辺遊が台頭]:比达信息咨询「2020上半年度中国旅游行业发展分析报告」より(画像=訪日ラボより引用)

このように2020年上半期において「周辺遊」が中国の全体の旅行市場を牽引している一方、下半期に入ると、「長距離の国内旅行」は回復傾向を示しています。

中国の大手オンライン旅行会社「携程」(Trip.comグループ:2019年10月まで、中国国内では「Ctrip」の名称で展開)が発表した2020年国慶節旅行の予測レポートは、今年の国慶節連休の旅行日数は去年と比べて1.7日増加するとみており、旅行に伴う移動距離も増加し、「長距離の国内旅行」がニュートレンドとなると予想しています。

情報収集手段1位は「RED」:短い投稿コンテンツが人気

こうした状況のなか、中国人旅行者がどのように旅行情報を収集しているのでしょうか。

下記は報告書に記載されている、2020年上半期において、中国人旅行者の旅マエにおけるオンライン情報収集手段のランキングです。

順位 旅マエの情報収集手段 利用率
1 RED(小紅書/小红书) 63.7%
2 抖音(ドゥイン/中国国内版TikTok) 56.5%
3 携程(Ctrip/シートリップ/シエチェン 52.3%
4 フリギー(Fliggy/飞猪) 40.7%
5 Weibo(微博) 38.9%
6 マーファンウォー(Mafengwo/馬蜂窩/马蜂窝) 37.6%
比达信息咨询「2020上半年度中国旅游行业发展分析报告」より、訪日ラボ編集部作成

このランキングでは、「RED」と「抖音」といった生活スタイル全般のコンテンツを提供するプラットフォームが携程やフリギー、マーファンウォーなど旅行分野に特化したOTAや口コミサイトを抑え、それぞれ1位と2位を獲得しました。

そして、情報収集の際によく読まれるコンテンツの形式は、旅行先のあらゆる情報を網羅する詳細な攻略法ではなく、文字数が少ない写真付きの「短图文」投稿や、「短视频」と呼ばれるショートビデオであることがわかりました。

さらに「RED」と「抖音」の利用は旅マエ段階のみならず、旅ナカ・旅アトでも旅行の写真や感想、おすすめの民宿・グルメなどの情報共有プラットフォームとしても用いられています。

順位 旅ナカ・旅アトの情報共有手段 利用率
1 RED(小紅書/小红书) 65.0%
2 抖音(ドゥイン/中国国内版TikTok) 54.0%
3 Weibo(微博) 37.1%
4 マーファンウォー(Mafengwo/馬蜂窩/马蜂窝) 34.6%
5 携程(Ctrip/シートリップ/シエチェン 30.0%
6 フリギー(Fliggy/飞猪) 22.3%
比达信息咨询「2020上半年度中国旅游行业发展分析报告」より、訪日ラボ編集部作成

カスタマージャーニーの変化:旅行者は「能動的」から「受動的」へ

なぜ、「RED」や「抖音」など旅行情報を専門に扱うメディアではなくても、中国人旅行者の間で多大な支持を集めているのでしょうか。

この報告書は、中国人旅行者の旅行先決定までの過程パターンである「カスタマージャーニー」の転換によるものだと指摘しています。

従来のカスタマージャーニーでは、中国人旅行者が能動的にOTAや旅行特化のコミュニティサイト、検索エンジンを通じて、自身のニーズに応じて旅行商品やサービスに関する情報を収集・比較検討し、旅行先の決定までに至ります。

一方、新型のカスタマージャーニーでは、「RED」や「抖音」が代表する生活スタイル全般を扱うコミュニティサービスやショートビデオプラットフォームが旅行情報と接触する主なタッチポイントとなりました。

そこでは消費者の購買意思決定に大きな影響力をもつKOLとKOCが多く活躍しているため、本来旅行に欲求を持っていない人でも、KOLとKOCが発信している旅行情報を含む多種多様なコンテンツ投稿に触れて旅行に対する購買意欲が喚起され、旅に出かけようとする「衝動旅行」ともいうべき傾向が増えています。(※中国ではKOLとKOCによって購買意欲が喚起されたことを「种草」と呼びます。)

▲[中国人旅行者のカスタマジャーニーの変化]:比达信息咨询「2020上半年度中国旅游行业发展分析报告」より(画像=訪日ラボより引用)

このカスタマージャーニーの転換から、中国人旅行者は能動的情報収集から受動的情報収集へと変わってきており、旅行先決定に至るまでにかかる時間も短縮されているという傾向がみられています。

報告書によれば、中国人旅行者の旅行先決定に至るまでにかかる時間は大幅に短縮されており、また、旅マエの段階で詳細な計画を練らずに「旅をしながら決める」人は53.2%ともっとも多く、「1~3日間で決める」は45.6%でした。3日間以上かける人は7.7%しかいません。

このような回答になった背景として、コロナ禍で「周辺遊」といった近場への旅行が主流となっていることで、遠距離旅行のように事前に綿密な計画を立てる必要がなくなり、新型のカスタマージャーニーへのシフトをさらに加速させていると報告書が指摘しています。

変化し続ける中国人旅行者の行動

新型コロナウイルスの流行拡大により、中国人旅行者の旅行における消費行動に新たな傾向が見られています。

上述したコロナ禍による旅行市場の変化やカスタマージャーニーの変遷から、中国人旅行者は旅マエの情報収集においては受動的となり、旅行先決定の過程ではKOLとKOCによるコンテンツに大きく影響されています。

そして、意思決定までにかかる時間も短縮され、「計画旅行」より「衝動旅行」という旅行パターンが増える傾向にあります。

こうした状況のなか、中国人旅行者の情報収集手段も変わり、従来の旅行に特化したOTAやコミュニティサービスより、「RED」や「抖音」などKOLとKOCが活用している生活スタイル全般のプラットフォームが利用されるようになっています。

現時点では訪日外国人観光客の入国は拒否されている状態が続いていますが、日本政府は東京オリンピックに向けて、訪日外国人観光客の受け入れ再開への本格的な検討を始め、早ければ2021年4月から実験的に運用するとしています。

インバウンド需要の回復に向けた準備がすすむ現在、インバウンド担当者は中国現地でのトレンドを掴みつつ、アフターコロナの客足の戻りを見据えたプロモーションプラットフォームの選定をはじめとする戦略の練り直しが必要でしょう。

<参考資料> 比达信息咨询:2020上半年度中国旅游行业发展分析报告

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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