KOLとはKey Opinion Leaderの略で、SNSにおいて消費者の購買意思決定に大きな影響力をもつ専門家を指しています。
台湾では商品を購入する前にSNSで情報を収集する傾向にあり、KOLからの高い影響力によって消費者の購買意欲を高めることが期待されています。
この記事では、化粧品やコスメなどの分野で高い訴求力をもつ美容系KOLに焦点をあて、AIテクノロジー会社iKalaが提供しているインフルエンサーマーケティングソリューション「KOL Radar」とファッション雑誌『ELLE』が2020年4月に共同で発表した「2020 美妝產業網紅社群洞察報告書(2020年美容産業におけるKOL報告書)」を取り上げ、台湾における最新美容系KOLトレンドについて整理します。
目次
同質性の高い美容投稿に消費者が情報疲れ
【2020年最新】台湾美容系KOL TOP10
台湾最新KOL動向からインバウンド戦略に
台湾KOLの概観
KOL Radarが自社のデータベースに収録されている50,000名以上のKOLについて分析しました。
その結果、現在台湾で活躍しているKOLのうち、61%が女性であり、31%が男性であることがわかりました。このほかにもペットなどのKOLも存在しています。
台湾のKOLが利用しているSNSについては、「Facebook(72%)」がもっとも多く、次いで「Instagram(70%)」「Youtube(20%)」という順になりました。
また、報告書によると、KOLの投稿内容が多様化しており、SNSの違いによっても変わりますが、全体的に「日常生活」「グルメ」「旅行」「ファッション」「美容」の5つのテーマによる投稿がもっとも多いことがわかりました。
台湾美容系KOLの最新事情
前述したように、台湾では美容をテーマにしたKOLが多く存在しています。ここからは、報告書から読み取れる台湾における美容系KOLの最新事情について解説します。
Instagramがもっとも人気のプラットフォーム
美容系KOLの人数や美容関連の投稿数から、美容系KOLがもっとも活用しているSNSプラットフォームはInstagramであるとわかりました。
その理由として、Instagramは写真や動画がメインのコンテンツであるため、化粧品の写真の投稿や化粧方法の実演など、写真写りにこだわりのあるコンテンツとの親和性が高いことが挙げられます。
また、消費者もInstagramで美容関連情報を収集する傾向にあり、美容系KOLのフォロワー増加率は15.43%に達しています。これは、FacebookとYoutubeの増加率よりも顕著なものです。
これにより、Instagramが抱えている数多くの美容系KOLとフォロワーを目当てに、多くの化粧品・美容会社がInstagramでKOLマーケティングを行っています。
Z世代の注目先:TikTok
現在、美容系KOLの多くはInstagramやFacebookなど、従来から台湾人ユーザー数の多いSNSを利用していますが、最近ではTikTokが新たなプラットフォームとして注目されつつあります。
Digital 2020によると、台湾ではTikTokの利用率は17%であり、Youtubeの89%、Facebookの89%、Instagramの54%と比べると、TikTokのユーザー数は決して多いとは言えません。
しかし、1990年代後半から2000年に生まれた10代から20代前半の若者を中心にTikTokは高い人気を誇っており、TikTok KOLの人数も増加しています。
報告書によると、現在台湾ではファッション・美容関連のTikTok KOLが約300名存在し、彼らのフォロワー数を合わせると200万人を超えるということです。
若者をターゲットにする化粧品・美容会社も次から次へとTikTok KOLと提携し、ハッシュタグチャレンジなど、消費者のエンゲージメントを高めることを重視するプロモーション手法が数多く見られています。
盛んになるKOLによるプロモーションや販売促進
冒頭で述べたように、台湾ではKOLが消費者の購買意思決定に対し高い影響力を持っているため、有用なSNSマーケティングと販売促進のためのプロモーション手法として、KOLは数多くの会社に取り入れられています。
報告書によれば、2割近くの美容系KOLは化粧品やコスメなどの企業と提携し、SNSで「団購」やKOLのフォロワーへのクーポンや割引の付与などのプロモーション活動を行ったことがわかりました。
(団購とは台湾においてよく見られる購入方式で、複数のユーザーが一緒に商品を注文することで、通常より安い価格で商品を購入できます。)
企業がKOLとフォロワーの間に構築されている強い信頼関係をもとに、KOLを用いて特別割引などの販売促進プロモーションを加えることで、消費者の購買意思決定プロセスを短縮化することができます。
その結果、商品のコンバージョン数・コンバージョン率が上昇し、売上の向上につながります。
同質性の高い美容投稿に消費者が情報疲れ
他方、多くの化粧品・美容会社がKOLを通じて、大量にFacebookとInstagramでプロモーションを実施することにより、重複性・同質性の高い美容関連投稿が散見され、消費者の興味を引くことが難しくなりつつあるという課題もあります。
報告書のデータによれば、美容関連投稿のエンゲージメント率はFacebookでは0.44%、Instagramでは2.33%しかなく、両SNSの平均エンゲージメント率より低いという現象が見られています。
そのため報告書では、KOLによるマーケティングが主流になっている台湾においては化粧品・美容商品の企業は美容系KOL以外のKOLと積極的にコラボレーションを実施したり、斬新な投稿内容を企画したりするなど、改めて消費者の注目を集める施策を練り直すべきだと提言されています。
【2020年最新】台湾美容系KOL TOP10
この報告書では、KOL Radarが美容を言及する投稿やInstagram、Facebook、Youtubeにおけるフォロワー数、投稿のエンゲージメント数などを指標にし、独自の計算方法を用いて、台湾でもっとも影響力をもつ100名の美容系KOLを選出しました。
彼らの投稿内容を分析してみると、美容以外にも、ファッション、旅行、グルメ、育児など幅広い分野に対して影響力を持つKOLでもあるとわかります。
報告書では、KOLが自分の生活の一面や価値観など多様な側面を見せることによって、消費者から共感を得やすく、その結果、彼らが投稿で言及している美容商品がより注目を集めりやすいという見解が示されています。
報告書に記載されている人気のKOL上位10位は以下のとおりです。
順位 | KOL名 | 類型 | フォロワー数 |
---|---|---|---|
1 | Hello Catie | 美容、育児、ファッション、日常生活、開封レビュー |
Facebook:324,451 Instagram:399,925 Youtube:944,000 |
2 | Sandy&Mandy | ダンス |
Facebook:2,511,803 Instagram:206,410 Youtube:1,150,000 |
3 | 黃小米 | 美容、旅行 |
Facebook:115,684 Instagram:188,453 Youtube:512,000 |
4 | 沛莉 Peri | 美容、育児、開封レビュー、ファッション |
Facebook:315,287 Instagram:156,836 Youtube:597,000 |
5 | 安啾咪 | 開封レビュー、美容、日常生活 |
Facebook:556,973 Instagram:421,567 Youtube:1,410,000 |
6 | Howhow | お笑い、ゲーム、日常生活 |
Facebook:547,683 Instagram:460,010 Youtube:1,220,000 |
7 | Gina | 美容、日常生活、旅行、グルメ、ファッション |
Facebook:438,513 Instagram:482,465 Youtube:595,000 |
8 | 我是查理 I'm Charlie | 美容、旅行、グルメ、ファッション、日常生活 |
Facebook:177,251 Instagram:268,396 Youtube:483,000 |
9 | Kevin老師 | 美容、開封レビュー、日常生活 |
Facebook:1,095,479 Instagram:128,091 Youtube:272,000 |
10 | 亞歷山大媽媽 | 育児、美容、グルメ、旅行、日常生活 |
Facebook:800,513 Instagram:1,003,203 Youtube:49,000 |
KOL Radar×ELLE【2020 美妝產業網紅社群洞察報告書】より、訪日ラボ編集部作成
TOP10のうちの、2位のSandy&Mandy、5位の安啾咪と6位のHowHowは、美容系の話題を専門に扱うKOLではありません。
しかし、この3名は自分の専門領域において多くのファンを持っているため、化粧品・美容会社が上手に彼らのパーソナリティを活用できれば、客層の開拓と話題作りに繋がることも可能だと考えられます。
台湾最新KOL動向からインバウンド戦略に
報告書から、Instagramは台湾の美容系KOL美容で現在もっとも利用されているSNSであることがわかりました。
そして、KOLの高い影響力と、クーポンや割引などとの相乗効果で、消費者の購買意欲を促進する効果が見られています。
一方、KOLマーケティングの普及により、一般の美容関連の投稿は台湾人消費者の目を引くことができなくなり、今後新たなプロモーション手法が求められるとも指摘されています。
インバウンド業界という分野においても、訪日台湾人へのプロモーション手段として、KOLを活用した施策が注目されています。
こうした台湾現地での最新のKOL動向を掴むことで、アフターコロナを見据えた訪日台湾人へのプロモーション戦略の見直しにも役立ちます。
<参考>
KOL Radar:2020 美妝產業網紅社群洞察報告書
DIGITAL 2020:TAIWAN
文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ
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