東レ経営研究所は9月9日、4~6月期GDP(国内総生産)2次速報を受けて、日本経済の今後の見通しの改定を行った。それによると経済活動が新型コロナウイルスの感染拡大前のピーク(19年7月~9月)の水準に戻るのは5年後の2025年ごろになると予測している。この見通しによると、GDPの実質成長率の見通しは2020年度が−6.7%、2021年度が2.9%となっている。「自粛モードを継続しながらの経済活動拡大になるため、景気回復ペースは緩慢になる」と同研究所は分析している。

こういう予測は毒にも薬にもならないケースがほとんどだが、一つ言えることは「庶民」には実感がないだろうが、新型コロナウイルス来襲前は日本は好景気状態にあったということである。2019年10月1日の消費増税でギアは落としていたものの、2008年9月のリーマン・ショックから雌伏7年ほどした。2015年あたりでは完全にリカバリーして、日本は好況期に突入していたということだ。それが新型コロナウイルスで未曽有の大不況に突入したのだ。これはあくまでも大企業&上場企業による経済指標によるものではあるのだが。

それでも戦後最大の不況と言われたリーマン・ショックからの立ち直りは7年ほどを擁したことを考えると、コロナ以前の水準復帰は5年後の2025年というのは少し甘すぎないだろうか。例えば来年に延期された東京五輪・パラリンピックの中止がかなり現実味をもって語られ始めているが、これは今回の同研究所予測には盛り込まれているのだろうか。中止は心理面も含め、かなりの打撃になると思うが。また、2019年に3188万人の史上最高を記録した訪日外国人もその水準まで戻るのは相手のあることでもあり、5年では無理だろう。

TBSの夕方のNスタというニュース番組を9月17日に見ていたら、9月にはすでにコロナ関連の倒産が47件あり、このままなら92件ペース(東京商工リサーチ調べ)。「支援を受けたりなんとかヤリクリをしていたのに9月あたりから限界がきている」と東京商工リサーチは指摘。それと気になったのが、2月以降のコロナ関連倒産は511件に上るが、業種別では、飲食業76件でトップ、第2位がアパレル関連で58件、第3位が宿泊業で47件となっていること。飲食業や宿泊業にはGo To イートキャンペーンやGo To トラベルキャンペーンのテコ入れがあるが、アパレルにはそんな支援はない!Go To ウェアキャンペーンはさすがに認められないだろう。ファッション&アパレル業界は自助努力しかないようである。

感染者数は落ち着いていると言っても、1日あたりの東京の感染者は2ケタ台になることは滅多にない。秋の訪れとともに気温が低下し、これはどう推移するのか、こればかりは注視するしかない。再拡大の可能性は低くない。

明るい話題は、ワクチン開発がそろそろ実用段階に入りそうだというぐらいだが、これもどの程度の効能があって、副作用はないのかと疑心暗鬼である。愚直に「マスク、手洗い、三密避けよ」と自己防衛していくしかないようである。

文・久米川一郎/提供元・SEVENTIE TWO

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