相次いでEC関連サービスを打ち出す

中国IT大手のテンセントは以前にECサイトを立ち上げたが大きな成果を挙げられず、その後自社のEC事業を売却し、大手EC企業に出資する形でEC業界での勢力を強めた。そんなテンセントが再び見せた最近の一連のEC開発動向に注目が集まっている。

5月、テンセントは「小鹅拼拼」というミニプログラム(wechatに組み込まれているインストール不要のミニアプリ)をリリースした。名前から仕組みまで中国EC新勢力の拼多多(pinduoduo)と酷似しており“共同購入サービス”でEC市場に参入しようとしている意図見てとれる。

リリースから2ヶ月後の7月14日にもテンセントはWeChat上でECツール「微信小商店」のテスト運営を始めた。「無料出店、サービス料金ゼロ、ライブコマース支援」を謳っており、WeChatを通して商品販売を行う個人や中小企業の注文管理、マーケティング、物流管理、決済などを支援する。

▲「小鹅拼拼」(左)と「微信小商店」(右)
(画像=チャイトピ!より引用)

巨大なWeChat圏から生まれたEC形態

テンセントは2005年からEC業界に進出し、C2Cの「拍拍网」、B2Cの「QQ商城」を立ち上げた。さらに2012年にはECサイト「易迅网」を買収した。しかしどのサイトも強敵アリババには敵わず、2014年には傘下のEC事業を中国EC2位の「京東」に売却し、京東の株式を取得、それ以降テンセントは自社ECを断念し、EC企業への出資という形でEC業界での存在感を強めた。
「拼多多(pinduoduo)」、「唯品会(VIPshop)」、「有賛(youzan)」、「每日優鮮(MISSFRESH)」などの有数のEC企業らがテンセントからの出資を受けており、テンセント陣営についている。その中でもWeChatの拡散力を利用した「拼多多」、WeChat上でのEC店舗運営の支援サービスを提供する「有賛」が特にテンセントとの関わりが深い。

▲テンセントのEC勢力図
(画像=チャイトピ!より引用)

 

中国のEC業界はアリババや京東(JD)などの大手の勢力が圧倒的に強く、後発企業にとってはその2強に打ち勝つ突破口を見つけることがかなり重要だ。
その鍵となるのが12億人ユーザーを抱える国民的チャットアプリ「WeChat」である。EC事業の展開にはサプライチェーンからオンライン決済までの一連のインフラが必要となる為、情報発信からオンライン決済、ネット通販など様々な機能を持つスーパーアプリに成長したWeChatが持つ拡散力と決済機能が後発企業にかなり有利に働く。そのためWeChat圏で多くのEC業者が誕生している。

現在WeChat上のEC業者は主に以下の4種に分かれる:

  1. 「拼多多」など第3者ECプラットフォームがWeChatでミニプログラムを開設
  2. 「スターバックス」などの有名ブランドがWeChatでミニプログラムを開設
  3. 「有賛」、「微盟」をはじめとするSaaSサービスを提供する企業
  4. 「微信小商店」などテンセントが開発したEC支援ツール

テンセントの決算報告によると、WeChatのミニプログラムのDAU(1日当たりのアクティブユーザー数)は4億人を突破し、もたらした年間取引額は8000億元(約12兆2600億円)に達している。WeChatはいつの間にか中国ECの一大勢力となっていたのだ。

今回テンセントが発表した「微信小商店」によりテンセントが“自社ECを諦めていない”ということを示したとの意見が多い。「微信小商店」はWechat上にある中小企業と個人のEC支援が目的で、アリババや京東にとって大きな脅威となる存在には及ばないが、同じくWeChatでEC支援サービスを提供する「有賛」や「微盟」にとって競合的な存在と言える。そのため「微信小商店」公開後に「有賛」と「微盟」の株価は下落した。今後WeChat圏のEC競争はさらに激化するだろう。

提供元・チャイトピ!

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