新型コロナで中国の生鮮食品ECが急成長

ECが飛躍的に発展している中国では、海鮮、青果など新鮮度が価値に影響する商品のEC化はアパレルなど一般の商品より比較的遅かった。2005年から天猫(Tmall)や京東(JD)など大手EC企業が生鮮食品に特化したECサービスを始めたが、他の商品にはない冷蔵運送、新鮮度維持などの課題がうまく解決できず、商品者からのクレームが多発した。

これらの課題を解決するため、「毎日優鮮」や「フーマー(盒馬鮮生)」といった新興企業が実店舗と倉庫を一体化させ、消費者がアプリで注文すると、1番近い店で出荷される「前置倉」モデルと、オンラインとオフラインを融合させた「O2O」モデルの構築を始めた。配送効率を引き上げ、総合ECモールで購入すると配送に1日以上かかるところを2時間以内に抑えることに成功。当時、業界は過熱し投資家達から熱い視線を向けられた。

しかしサプライチェーン、倉庫、冷蔵運送などの構築には多額の資金が必要であったため、黒字化への道のりは遠く投資家達が相次いで撤退した。厳しい市場競争において2019年には経営破綻に追い込まれる生鮮食品EC企業が続出した。

そんな背景下にあった生鮮食品EC業界にとって新型コロナウイルスは紛れもなく転機である。中国では今年1月末にコロナの感染が拡大し、市民は在宅を余儀無くされ、外食ができず、新鮮な野菜や食料品をスマホから購入するようになり、生鮮食品EC業界が再び注目を浴びる様になった。リサーチ会社「易観」によると、2020年Q1の生鮮食品EC業界のアクティブユーザー数は前年同期より66%も激増した。

テンセントが支援する「毎日優鮮」の注文数は前年より300%も急増し、客単価は120元(約1800円)に上がった。また中高齢者のアプリ需要も上がり、40歳以上のユーザー数は237%増加した。

さらに7月に毎日優鮮は4億9500万ドルと、業界過去最大金額の資金調達に成功した。この資金調達の成功は業界発展の自信に繋がったと言われた。

また、アリババ傘下の生鮮食品スーパーである「フーマー」は感染が最も危険とされた時期のDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)が前年同期より127%増加し、オンラインの注文割合が50%から80%に増えた。

▲2020年3月各生鮮アプリのMAU(万人)(出典:iiMedia Research,チャイトピ!より引用)

業界トップ企業の発展に期待

コロナ禍を追い風に中国生鮮EC業界は急速な発展を実現させたが、その勢いがコロナ収束後も維持し消費者の生活圏の一部になれるのか懸念されている。

中国生鮮食品EC業界で代表的な企業は「Dmall(多点)」、「フーマー」、「毎日優鮮」の3社だ。

ビジネスモデル別でみると、「Dmall」は生鮮企業にECプラットフォームを提供している。現在102社以上の小売企業と提携しており、約1万3000店舗がプラットフォームに登録している。

フーマーは“スーパー+レストラン”の実店舗を運営している。スマホアプリでの注文も可能で、最速30分以内の送達サービスを提供している。

毎日優鮮は「前置倉」モデルを採用しており、店舗と倉庫を一体化させている。消費者がアプリで注文すると1番近い店から出荷される仕組みだ。

実店舗を運営するにはサプライチェーンから物流整備と、かかるコストが著しく高く、会社運営を資金調達に依存する企業が多い。アリババによる強力な支持を持つ「フーマー」や、テンセントの支援を得た「毎日優鮮」はしばらく資金繰りの懸念はなさそうだが、下位プレイヤーはどんどん淘汰されていくだろう。

コロナが収束しつつある中国では生鮮食品アプリの使用人数が減ってきているが、前年同期よりは増加傾向である。中国リサーチ会社「QuestMobile」によると、5月の生鮮食品ECアプリのMAU(月間アクティブユーザー数)は前年同期より21.9%増加している。コロナが中国消費者の生鮮食品の消費習慣へ影響を与えたのは明らかである。今後、毎日優鮮やフーマーなど業界トップ企業のさらなる発展が期待できるだろう。

提供元・チャイトピ!

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