『訪日ラボ』より

台湾の夏「悪霊退散」グッズが売れ、車がお買い得になる理由とは?「鬼月」の禁忌を乗り越える業界の知恵

2020.8.1
ビジネス・キャリア
(画像=訪日ラボより引用)
(画像=訪日ラボより引用)

台湾人にとって、日本は最も人気のある海外旅行先です。2019年には約489万人の台湾人が日本を訪れ、約5,785億円を消費しました。

訪日外国人全体の約15%が台湾人で、訪日外国人による消費額の約12%が台湾人によるものだったことになります。

2020年には新型コロナウイルスの流行により、台湾人をはじめとする訪日外国人の客足は一切途絶えてしまいました。

しかし、日本に行けない時期でも台湾人の訪日意欲は根強く残っていることが、さまざまな調査により判明しています。

台湾は2020年10月頃より入国制限を段階的に解除する方針を検討していることが伝えられています。日本もビジネス目的の入国に限り、台湾からの入国を許可する方針を検討しています。

観光客の往来が復活する時期は未だ見えませんが、この期間を活用してターゲットとする国の文化をより深く知り、特徴に合ったインバウンド戦略を打ち出すことも大切です。

今回は台湾における伝統的な文化として、現在でも多くの方面に影響を及ぼしている「鬼月」を紹介します。

目次
台湾の伝統的習俗「鬼月」とは?

▶︎日本の「お盆」との違い
▶︎鬼月にしてはいけないこと
鬼月には車や家が売れない?逆手に取ったセールも開催中
▶︎鬼月なら格安で車が買える!ディーラーの取った戦略とは
▶︎不動産市場も善戦
悪霊退散スマホケース、幽霊探知機…鬼月にちなんだ面白商品
▶︎悪霊から身を守るお守り商品が登場
▶︎近所の人には売らない「魔除けの石鹸」
鬼月だからこそ実施できるインバウンド戦略とは?

台湾の伝統的習俗「鬼月」とは?

鬼月は、旧暦7月のことを指します。旧暦は新暦と日付の数え方が異なるため、旧暦の7月が新暦のいつに当たるかは毎年異なります。

例えば、2019年の旧暦7月は新暦8月1日から8月29日まででしたが、2020年の旧暦7月は新暦8月19日から9月16日までです。

中国語の「鬼」は、日本語の「霊」という意味になるため、鬼月を日本語に訳すと「霊の月」という意味になります。

鬼月が始まる旧暦7月1日には「鬼門」というあの世の扉が開き、鬼月の期間中は先祖が家々に戻るとされています。

この期間、人々は先祖を供養するために「普渡」という儀式を執り行います。普渡では肉、果物、菓子、酒などを先祖に供えて線香を焚き、先祖を敬い子孫の発展を願います。

普渡を執り行う日は家によりまちまちですが、旧暦7月15日の「中元節」には多くの寺院で普渡が盛大に執り行われます。

日本の「お盆」との違い

日本では、鬼月に似た習俗として「お盆」があります。

お盆は地域により旧暦7月15日か新暦7月15日のどちらかで執り行われるほか、沖縄では旧暦7月13日から7月15日の3日間に執り行われます。

日本のお盆も先祖の霊を迎えるという点では鬼月と同じですが、お盆では先祖の霊が家々に帰ってくると言われているのに対し、鬼月では先祖の霊だけでなく悪霊もこの世に帰ってくると言われています。

そのため、鬼月には先祖を迎え供養するだけでなく、悪霊に好かれたり悪霊を怒らせたりしないようにさまざまな禁忌が存在しています。

これらの禁忌は旧暦7月になると不動産や自動車などの市場の動きが鈍くなるほど、台湾の文化に色濃く影響を及ぼしています。

鬼月にしてはいけないこと

悪霊を避けるための禁忌として、最も知られているのは水を避けることです。

水辺には水死した幽霊が人間をあの世へ引きずり込もうとして待ち構えていると言われているため、旧暦7月の間は多くの台湾人が海水浴を控えます。

また、古家、病院、寺院は悪霊の溜まり場になるため特に夜は近付かない方が良いとされ、夜に口笛を吹いたり電話をかけたり服を干すことも悪霊を呼び寄せるため避けるべきとされています。

他にも、人を驚かせたり、肝試しをしたり、何もない場所で写真を撮ることも悪霊を呼び寄せるとされており、地域によっては更に多くの禁忌が存在しています。

鬼月は買い物も控えるべきだとされているため、この時期には不動産や自動車などをはじめとする市場も往々にして停滞気味になります。

一方この状況を打破するため、各業界では機知に富んだ販売戦略を打ち出しており、更には鬼月ならではの面白商品も登場しています。

鬼月には車や家が売れない?逆手に取ったセールも開催中

台湾では、鬼月に車を買うと事故に遭ったり故障する、家を買うと運が悪くなるといった噂が囁かれており、鬼月には自動車や不動産の売り上げが伸び悩みがちです。

一方、自動車業界ではこの状況を逆手に取り、鬼月限定の各種セールやキャンペーンを開催しています。

また、不動産業界では鬼月の売上目標を低く設定しているものの、伝統的習俗をあまり気にしない若年層が増えたことにより、以前ほどの売上低下は見られなくなったようです。

鬼月なら格安で車が買える!ディーラーの取った戦略とは

あるディーラーでは昨年の鬼月期間中、トヨタ・シエンタを通常価格より13万元(約47万円)引きの56万9,000元(約207万円)、三菱・グランドランサー(ギャランフォルティス)を通常価格より2万元(約7万3,000円)引きの61万9,000元(約226万円)かつ諸オプション贈呈という破格で発売しました。

別のディーラーではヒュンダイの売れ筋であるサンタフェやタスコンを月々8,800元(約3万2,000円)で購入できる分割払いを鬼月限定で提供することで、消費者の心を掴みました。

一方、トヨタ・ハイラックスなどの高級車市場には鬼月による売上低下はほぼ見受けられず、鬼月にもかかわらず一度に10台の売約が成立するなど、とても好調な状況が続いているとしています。

台湾のインターネット掲示板「Mobile01」では「鬼月に車を買うと事故に遭いますか?」という質問に対し「そんなものは迷信だ」「事故に遭うと思い込んで運転するから事故を招く」という冷静な意見が交わされていましたが、「鬼月のキャンペーンが必ず得という訳でもない、一年の中でどの時期が最も安くなるのか慎重な観察が必要」というように、鬼月のキャンペーンそのものを疑問視する声も見受けられました。

不動産市場も善戦

2019年の鬼月であった新暦8月には、降り続いた雨の影響もあり不動産成約数が前月から7%落ち込みました。

しかし、成約数そのものは年々上昇しており、2019年8月の成約数は2018年8月から8%増加しています。

例年、鬼月には不動産需要が減少することを見越して、各不動産会社では社員旅行を計画するなど業務を縮小しています。

ところが、近頃は若年層を中心に鬼月には不動産の選択肢も多く、内覧も混雑せず、担当者も時間があるためしっかりと相談に乗ってもらえるという認識が広がっており、鬼月による不動産需要の落ち込みは年々減りつつあるようです。

悪霊退散スマホケース、幽霊探知機…鬼月にちなんだ面白商品

自動車業界や不動産業界は鬼月の影響を相対的に受けやすいようですが、小売業界では鬼月の影響はあまり見受けられません。

鬼月の間も食料品や日用品は普段通り売り買いされているため、唯一の影響といえば普渡に用いる果物、菓子、酒や儀式用品の売上が伸びるという程度のようです。

一方、いくつかの店や企業では鬼月ならではの商品を展開しようと戦略を立て、消費者の注目を集めています。

悪霊から身を守るお守り商品が登場

台湾では、鬼月になると大手ECサイトのShopee(蝦皮購物)などを中心にさまざまなお守り商品が続々登場しています。

人気のあるものでは、「悪霊退散」と書かれたスマートフォンケースやTシャツ、悪霊の見かけを模したゴム製の握って遊べる玩具、お化けのデザインを象ったタトゥーシールなどがあります。これらはどれも100元(約370円)から360元(約1,300円)と手に入れやすい価格帯で発売されています。

また、価格は1,350元(約4,900円)と高めであるものの、幽霊探知機も売れ筋の商品となっています。

幽霊探知機は乾電池で動く小型のもので、周囲の電磁波を検知し変化があるとメーターが振れるというものです。

近所の人には売らない「魔除けの石鹸」

台湾・新竹にある一軒の化粧品店では、魔除けに効果があるとされているヨモギを使った石鹸を売り出し人気を博しました。

この石鹸は易学で森羅万象を表すとされている「八卦」を象っており、ヨモギ、ジャスミン、ハトムギなど天然の成分を組み合わせて作られています。

この石鹸はあまりにも人気を博したため、化粧品店では遠くから来た人により多く買ってもらう戦略を打ち出しました。

購入希望者は身分証を見せる必要があり、住所が新竹であれば1個しか買えないものの、台北であれば4個、高雄であれば8個というように遠ければ遠いほど多く買う権利が得られます。

鬼月だからこそ実施できるインバウンド戦略とは?

新型コロナウイルスの流行により、訪日台湾人の客足も途絶えてしまいました。しかし、台湾は2020年10月頃から徐々に国境を開放する計画を検討しており、日本もビジネス目的の訪日客から順に入国を許可する方針が話し合われています。

新型コロナウイルスの影響次第ではあるものの、来年になれば訪日外国人が少しずつ復活してくる可能性も期待できます。それまでに自社のターゲットとする訪日外国人の文化的背景をよく理解し、文化や習俗に合わせた戦略を練ることはとても重要です。

台湾人の場合、鬼月の間は海水浴や大きな買い物を控える傾向があります。鬼月で禁忌を回避したい心理だからこそ、かえって消費意欲を喚起できるキャンペーンを設計できれば、鬼月で抑圧された訪日台湾人からおおきな収益を得ることも可能かもしれません。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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