「持ち家は資産だと思ってたけど、これじゃ負債だ…」

持ち家は「持っている」ということで発生する意外な費用を見落としている人もいるようだ。賃貸と異なり、自分の家は自分で面倒を見なければならないからだ。

物件価格のほか固定資産税や修繕費など、持ち家ならではの特殊な事情で特殊な費用が発生する。

今回、多くの資産相談にのってきたファイナンシャルプランナーの筆者が、購入前に気をつけたい持ち家の落とし穴を3つ紹介する。

持ち家と賃貸それぞれに向いているケースも併せて確認しよう。

持ち家の意外な落とし穴3つ

持ち家は「持っている」ことにより税金などさまざまな費用が発生することをご存じの方は多いだろう。しかし、具体的にどんなお金が必要になるのか、明確なイメージがある方は多いかもしれない。

あらゆる維持費がかかる

持ち家には、あらゆる維持費が発生する。賃貸とちがい、自分の家はすべて、自分で面倒みなければならないのだ。

具体的には固定資産税や火災保険の保険料、修繕積立金、マンションであれば管理費や駐車場代が挙げられる。

修繕積立金は強制ではない。しかし、建物を維持するためには10~15年間隔でメンテナンスが必要だ。この費用は自分で貯蓄しておく必要がある。

また、賃貸物件であれば、給湯器が壊れた、水道の調子がおかしいなど、部屋の設備にかかる修理代は一部の例外を除き、大家が負担してくれる。しかし、持ち家であればこのような修理代は自分で負担しなくてはいけない。

資産価値が落ちる可能性

家の購入とは、ある意味投資であり損失を被るリスクもある。

不動産市場は常に変動しており、購入時よりも土地の価格が下落する可能性があるからだ。

建物の資産価値も、老朽化により下落していくのは避けられない。あまり考えたくない話だが、地震や豪雨などの災害が起きれば、資産価値がさらに急落することにも気を付けてほしい。

容易に引っ越しができない

意外な盲点として挙げられるのが、「容易に引っ越しできない」ことだ。

転勤や親の介護など、ライフイベントにあわせて柔軟に移動することが困難になる。

売却はできるが、希望価格で売却するためには時間がかかるケースもある。特に転勤が多い会社に勤めている場合には、デメリットに感じるだろう。

持ち家のメリットは?

持ち家にはメリットも多くある。特に住宅ローン完済後の持ち家は完全に所有者の資産となる点は賃貸にない魅力だ。

<持ち家のメリット>
● 将来的な資産の形成
● 住まいが安定する
● 増改築やリフォームを自由にできる
● 税金の控除
● 団体信用生命保険に加入できる

それ以外にも、家賃値上げの心配がなく安定した住まいを手に入れることができるうえ、増改築やリフォームも思いのままにできる。また、住宅ローン控除や固定資産税の減免措置を受けられる可能性があるため、支出を抑えられるなどのメリットもある。

団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んでいる契約者が亡くなった場合に、残債が完済される保険のこと。つまり、残された家族が住宅ローンの支払いを続けず安心して持ち家で暮らせるということだ。

持ち家が向いている人・賃貸が向いている人

持ち家が向いている人は「所有することに安定感や幸せを感じる」 人で、賃貸が向いている人は「所有することに囚われたくない」 人、ふんわりと、そんな風に定義してもいいかもしれない。しかし、結論からいうと「その人次第」だ。

持ち家か賃貸かは永遠のテーマと言っていいだろう。そこでここでは「持ち家に向いている人」と「賃貸に向いている人」の特徴について考えてみよう。

まず、持ち家に向いている人の特徴は以下の通りだ。

<持ち家に向いている人の特徴>
● 定年(65歳前後)時点で住宅ローンを完済できる見込みが高い
● 上場企業の正社員、公務員、高度専門職など収入が安定している
● 十分な貯蓄があり、頭金としてある程度まとまった金額を出せる
● 購入時点では健康状態に特段不安がない
● 生涯独身の可能性があり、老後に住む家を確保したい
● 転居を伴う転勤がない(もしくは単身赴任も可能)
● 「こういう家に住みたい、インテリアはこうしたい」など住環境にこだわりがある

一方、賃貸に向いている人の特徴は以下の通りだ。

<賃貸に向いている人の特徴>
● 住宅ローンであってもできれば借金をしたくない
● 転居を伴う転勤が多く、単身赴任も難しい
● 駆け出しの自営業など収入が不安定
● 健康状態に不安があり住宅ローンを組めない可能性がある
● 「便利で快適に暮らせれば十分」など、住環境、インテリアに強いこだわりはない

思い描く理想の家をかなえるほうを選択しよう

持ち家と賃貸には、それぞれさまざまなメリットとデメリットがある。

自分がどのような家に住みたいのか、どのようなライフスタイルを思い描いているかによってどちらに住むべきか変わってくるだろう。

まずは思い描く理想の家を考えてみることをおすすめする。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。