「注意欠如・多動症(ADHD)」は小児期・青年期に多くみられる神経発達障害の1つだ。2022年の文部科学省の調査によると、発達障害を持つ可能性のある小中学生は全体の8.8%。世界全体でも、若年層のADHD有症率は約8.0%という調査結果が出ている。この数字は過去数十年上昇を続けており、診断がつく子どもの数は増える一方だ。

これにともない、ADHD関連市場も注目の的となっている。2022年に132億1000万ドルと評価された世界のADHD市場規模は、2023年から2030年までCAGR4.2%で拡大するという予測がある。ADHD関連のスタートアップも各国で急激に増加、患者とカウンセラーをマッチングするアプリや集中力を保つ・習慣化を支援するアプリ、ADHD専用ブラウザなどが登場。各社とも資金調達を成功させている。

そうしたスタートアップの1社がリリースしたアプリ「Pery」は、診断を受けた子を持つ親に対してAI駆動の支援サービスを提供するものだ。

診断された子どもの保護者をAI活用で支援

2024年1月にイスラエルとアメリカで正式リリースされたばかりのPeryは、イスラエルの同名企業Peryが開発。開発チームにはADHDの行動・臨床専門家らも含まれており、科学的根拠に基づいた指導とサポートを提供するという。

Image Credits:Pery

Peryのチャット機能を利用すると、ユーザーごとにカスタマイズされた助言や戦略がリアルタイムで得られる。まるでADHDの専門家と実際に会話しているかのような品質でありながら、実際のクリニックでの面談と違って24時間対応で待ち時間もない。得られる情報は最新の研究結果および専門家のガイドラインに基づいているため、信頼性も確かだ。

Image Credits:Pery

子どもの評価情報や個人戦略などの情報は「ケアフォルダ」に保存・一元管理される。医師や教師とも簡単に共有できるため、効果的な協力体制を構築可能だ。

要望に応じて“人間”の専門家からケアを受けることもできる(アメリカでは医療費専用口座支払い対象)。生活能力を改善する実践的なテクニックを活かして、子どものADHD症状に対処するための子育て戦略立案が支援される。

スマートAIツール活用により経過観察も容易で、医師や教師との共同作業が簡略化される。学校やクリニックへの文書作成、個別教育プログラムの申請書記入などもAIツールで瞬時に完了するという。