2019年4月に発売された新型5代目トヨタ RAV4を試乗してみた。試乗は一般公道とラフロードでRAV4自慢の4WDの違いを体験した。世界初のディスコネクト機構付き左右トルクベクタリングAWDと前後トルク配分をする4WD。そしてハイブリッドに搭載するE-Fourと、パワートレーンは2種類だが、四駆システムは3種類というラインアップだ。

3種類の四駆システムを体験

北米ではコンパクトSUVにカテゴライズされるグローバルモデルのRAV4は、ホンダCR-Vと競い、ともに世界で大ヒットをしているモデルだが、RAV4の四駆へのこだわりが今の攻めのトヨタを象徴しているように感じた。
 

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ガソリンモデルには2タイプの四駆システムがある(画像=AUTO PROVE)

左右にトルク配分をする「ダイナミックトルクベクタリングAWD」は、アドベンチャーとG “Z Package”の2グレードに採用。また、前後トルク配分をする「ダイナミックトルクコントロール4WD」はXとGグレードに採用されている。
 

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(画像=AUTO PROVE)

この違いをラフロードで体験すると、ダイナミックトルクベクタリングAWDはステアした瞬間から素早くノーズが入り、アクセルを開けても舵の方向へどこまでも曲がっていく。おそらくタイヤのグリップ限界を超えるまで回頭を続け、アンダーステアとは無縁の挙動になるだろう。

 
またダイナミックコントロール4WDは、同様に初期の回頭性は高いものの、少しアンダーステアが出てから回頭が始まるイメージで、車両の姿勢にもよるが、アクセルを踏み続けるとオーバーステアの挙動がでる違いがある。だが、いずれも回頭性が高く、雪道などでの安心感は高く、かつスポーツドライブも楽しめる仕様になっている。

ITCCにトヨタ独自の機能を追加

さて、この違いだが、ともにJTEKT(ジェイテクト)のITCCというカップリングシステムを基本にしている。このITCCはFFベースの4WDは各社で採用されている大ヒット商品で、仕組みは多板クラッチでフロントからのトルクをリヤに流すものだ。
 

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トヨタのエンジニアが発明したラチェット式ドグクラッチ(画像=AUTO PROVE)

このITCCをリヤデフの前に装備して、フロントからのトルクをリヤ流しているのが「ダイナミックトルクコントロール4WD」だ。一方、ダイナミックトルクベクタリングAWDは、このITCCをリヤ・ドライブシャフトの左右に装備して、デフからのトルクを流す時にクラッチで左右別々にコントロールしているタイプだ。
 

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ドグクラッチとITCカップリングを左右に装備する(画像=AUTO PROVE)

また、この仕組みには、リヤへトルクを流す必要がない安定した状況の時、トルク配分を100:0とするため、世界初となるディスコネクト機構を前後に搭載している。これは前後にラチェット式のドグクラッチをトヨタが開発し、組み込んだもので、プロペラシャフトの回転まで止めてしまうまで完全にシャットアウトする機構になっている。

他社でも似たような100:0とする機構はあり、例えばアウディの最新クワトロ・システムはフロントのトランスファーとリヤデフの2ヶ所に断続クラッチを装備している。こうしたフロント・トランスファー内にクラッチを備えていない場合は、リヤデフ内のリングギヤは粘性により回転しており、若干の引きずりが起きている。そのロスをなくすための機構というこだわりようだ。ちなみに、前後のリングギヤ比は歯数を変えることで2.5%程度異なっており、リヤのリングギヤは旋回外輪よりも早く回るようにし、ITCCの効果を高めている。

一方、E-Fourは、ドライブシャフトではつながっていない、モーター駆動の4WDで、180km/hまでサポートする。そして駆動力配分も前後で20:80まで可能で、前述のカップリング式では50:50が限界値だから、FR的な配分になるのはハイブリッドモデルということになる。
 

   
(画像=AUTO PROVE)

軽快感があるガソリンモデル

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(画像=AUTO PROVE)

こうした四駆システムの違いはどのモデルも「スポーツモード」を選択すると積極的に介入し、スポーツドライブが楽しめる。またドライブモードにはエコ、ノーマルも備わっている。一方、悪路を走行する際、ガソリンモデルにはマルチテレインセレクトがあり、「SNOW」、「MUD&SAND」、「ROCK&DIRT」というモードもある。ハイブリッドモデルには「TRAILモード」があり、空転したタイヤにブレーキをかけ、反対側のタイヤへトルクを配分する制御が備わっている。もちろん、「EVモード」も備わっている。
 

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ガソリンモデルのインテリア(画像=AUTO PROVE)

さて、一般公道での試乗だが、ガソリンモデルは2.0Lという排気量で自然吸気+CVTという組み合わせだが、パワーは2.4L並みで、不満はないだろう。またCVTもダイレクトシフトと呼ぶ新世代CVTで、発進ギヤを持っているので、エンジン先行感はほぼない。また中間加速などでもそうしたCVTのネガと言われる部分は感じにくく、逆にエンジン音が少し聞こえる程度の車内静粛性が際立っている。
 

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ハンドリングは適度にスローなのだが、誤解されないように言えば車高の高さを踏まえた適度なフィーリングに仕上がっている。新型RAV4にはラックパラレル式の電動パワーステアリングとしたため、ダレクト感がありタイヤの存在を感じやすい操舵フィールになっている。
 

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またボディ剛性の高さも感じ、車両はロールが良く抑えられている。ピッチ剛性とロール剛性のバランスは良く、ややピッチ剛性が目立つもののハイブリッドとの共存という難しさがあるからかもしれない。
 

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ガソリンモデルのラゲッジは大きい。アクティブなギヤも満載できる(画像=AUTO PROVE)

高級感のハイブリッド

そのハイブリッドの操舵フィールは、ガソリンモデルよりもフロントヘビーな分、センターの座りをしっかり出している。そして全体に高級感につながるフィールになっていた。ハイブリッドモデルのE-Fourは舗装路でもリヤのアシスト感があり、微妙にガソリン車とは異なるフィールでFR感とまでは言えないが、リヤからの駆動力を感じる場面があり面白い。特にタイトコーナーでは感じやすくなっている。
 

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RAV4はカムリと同じプラットフォームTNGA-Kを採用しており、グローバルではC+セグメントに分類される。新開発された5代目RAV4はねじり剛性も60%アップし、サスペンション取り付け部の剛性が高いのか、足がよく動くという印象を持つ。

またフロントウインドウからの視界がよく、ワイパーやボンネットなどが視界には入らずすっきりした景色が見える。Aピラー付け根には三角窓もあり死角が小さい。同様にリヤクオーターガラスが後方視界をよくしている。
 

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(画像=AUTO PROVE)

新型RAV4は4WDを中心とした走行安定性に優れた安心感のあるモデルというのが印象的だった。個人的にはAdventure推しだった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

【価格(税込)】

  • X 2.0L CVT 2WD(FF):260万8200円
  • X 2.0L CVT 4WD(ダイナミックトルクコントロール4WD):283万5000円
  • G 2.0L CVT 4WD(ダイナミックトルクコントロール4WD):320万2200円
  • G”Z Package 2.0L CVT 4WD(ダイナミックトルクベクタリングAWD):334万8000円
  • Adventure 2.0L CVT 4WD(ダイナミックトルクベクタリングAWD):313万7400円
  • HYBRID X 2.5L THSⅡ 2WD(FF):320万2200円
  • HYBRID X 2.5L THSⅡ 4WD(E-Four):345万0600円
  • HYBRID G 2.5L THSⅡ 4WD(E-Four):381万7800円

【諸元】