5年間にわたり富裕層と貧困層 の習慣を研究した調査の結果、セルフメイド・ミリオネアの7割近くが、「他の成功者の自伝を読むのが趣味」であることが分かった。これに対し年収3.5万ドル以下・流動資産5000ドル以下の層の9割以上は、「他の成功者の自伝は読まない」という。

米国でベストセラーを記録した『お金持ちの習慣(Rich Habits)』の著者、トーマス・コーリー氏は自ら収集したデータに基づき、富裕層が読書—特に自伝を好む理由を分析している。

富裕層・貧困層の差は読書の趣向にも表れる?

トーマス・コーリー氏は2004~07年にかけて、富裕層233人と貧困層128人を取材した 。そのうち177人は一代で100万ドル以上の資産を築いたセルフメイド・ミリオネアで、59%は中所得家庭、41%は低所得家庭で育った。

調査の対象年齢は42~85歳で、60%が60歳以上。富裕層のうち214人は男性、14人は女性、貧困層のうち114人は男性、14人は女性という割合だ。

富裕層の定義は年収16万ドル・純資産320万ドル以上、貧困層の定義は年収3.5万ドル・流動資産5000ドル以下とされている(リッチハビッツ2016年6月17日付記事)。 

コリー氏は調査の結果、2つのグループの差が所得や純資産額だけではなく、読書の趣向にも顕著に表れることに気が付いた。特に自ら財を築いたセルフメイド・ミリオネアの68%が、ほかの成功者の自伝を読むことを習慣に取りいれているのに対し、貧困層の91%には同様の習慣がないのだ。

成功者は失敗にかくされたメッサージを読み解く

なぜ多くのセルフメイド・ミリオネアが自伝を愛読するのだろう。ビジネスインサイダー2017年9月27日付記事によると、「歴史は他人の失敗の研究である」というコリー氏は分析している。

大抵の自伝は成功についてだけではなく、失敗や挫折についても書かれている。成功例にばかり気をとられがちだが、失敗例にも重要なメッセージがたくされている。セルフメイド・ミリオネアはこの重要なメッセージを見逃さない。他人の失敗を前例として学びことで、自らの失敗の回避策として役立てられるのではないか。

富と成功が失敗の上に成り立っていることは、多くのセルフメイド・ミリオネアが認めている。失敗の数が多いほど、なにが上手くいって、なにが上手くいかないかを学ぶ機会が増える。諦めない限り、これは敗北ではなく、成長の過程である。成長すればするほど、自分の基盤は強くなる。基盤が強まれば強まるほど、富と成功を手にするチャンスが大きくなる。

貧困層のお気に入りはエンターテインメント分野

しかしいくら失敗は成功のもとといっても、失敗すればお金がかかる。事業や投資で失敗すれば、損失ゼロというわけにはいかないだろう。セルフメイド・ミリオネアは失敗から学ぶための費用を抑えるために、他人の自伝から学んでいるのかもしれない。究極の低コスト学習だ。

これらの富裕層が愛読しているのは、ほかの成功者の自伝だけではない。94%は新聞やブログなどで最新のニュースに毎日目を通し、85%は1カ月に2冊以上、教育・キャリア・自己啓発関連の本を読んでいる。

対照的に貧困層の79%がエンターテインメント関連の本を愛読しており、ニュースに関心があるのは11%、教育・キャリア・自己啓発関連は15%だ(ビジネスインサイダー2014年6月17日付記事) 。

読書によって自らを指導者に成長させる

コリー氏は研究の結果、「毎日の習慣が経済的成功につながる」 という結論に達した。富裕層特有の習慣のひとつに、読書が含まれる。ただし富裕層は単に何かを読むだけではなく、そこから何かを学びとろうとする。ほかの成功者の自伝や自己啓発関連の本を好むのは、自らを教育するためだ。

そして読書を通して自らを教育することで、メンターシップ(指導)の技術を自然と習得している。なにかを学ぶ時、専門家による指導やアドバイスが必要となるが、富裕層にとってのメンター(指導者)とは自らの資産を左右する重要な役割を指す。

コリー氏の調査では、そうしたメンターを利用している富裕層は24%しかおらず、過半数は自らがメンターの役割を果たしていることが明らかになっている。

また、「読書」と同じくらい重要なメンターは、「親」「先生」「職場仲間」「人生経験」だという。

バフェット氏、ゲイツ氏など趣味が読書のビリオネア

読書が趣味と公言している資産10億ドル以上のビリオネアも多い。

フォーブスの世界長者番付の常連、純資産844億ドル(フォーブス2018年4月25日データ) のウォーレン・バフェット氏は、毎日5~6時間読書に費やすほどの愛読家として有名だ。また500ページにもおよぶ財務諸表にも目を通すことを、ほかの投資家にも薦めている。

純資産906億ドルのビル・ゲイツ氏も、年間50冊の本を読む。そのほとんどが公衆衛生や病気、エンジニアリング、科学、ビジネスに関する内容だという。

マーク・キューバン氏は毎日3時間の読書を通して、自分の専門分野の知識をみがいている。起業初期にはこの習慣が非常に役立ったそうだ。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
 

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