「金持ち喧嘩せず」ということわざがある。筆者がお付き合いしてきた富裕層の人たちを見ていると、本当にこの言葉通りだと思わされる。気になるのは「金持ちが喧嘩をしない理由」である。

争いを避ける性格だからお金持ちになれたのか?それともお金持ちという環境が喧嘩の抑止力となっているのだろうか?今回は事例を取り上げ、「金持ち喧嘩せず」を考えてみたい。

争いを知らないお金持ちのお坊ちゃん

筆者が初めてM氏を見た時の印象は「絵に描いたようなお坊ちゃんだな」である。とにかく上品で穏やか。歩いているだけでエレガンスと育ちの良さを醸し出していた。

彼は目黒の青葉台のマンションで一人暮らしをしている20代の会社員で、一般的にいってかなり収入は高いものの、彼自身が富裕層というわけではない。しかし、彼と話をしていると、その育ちにおいては色々な点で普通ではないことを思い知らされた。

彼は生まれつき温室のメロンのように育った。子供の頃、人気ゲーム機がほしいというと、両親が便利屋を雇って並んで買わせていた。初めての一人暮らしをする時は、ヨーロッパから200万円もかけて高級家具を空輸した。移動はすべてタクシーで電車にはほとんど乗らない。など、とにかく普通ではないのだ。

そんな彼は昔から「争い」とは無縁の世界に生きている。初めて友人が言い争いをしたのを見た時は、ショックで熱を出して寝込んでしまった。また、付き合っている彼女が浮気をした時、普通ならば「裏切ったな!」と怒り出すところを、彼は怒る代わりにショックで数日泣きはらし、お別れをする際には「これまでの感謝の気持ち」として高額なプレゼントを彼女に贈ったのだ。

あまりにも恵まれた温かい環境で育つと、争いの仕方を知らないまま大人になるという事例である。

一流ビジネスマンは喧嘩を避ける

上記の例はお金持ちの生まれが喧嘩をしない性格を作り上げた事例を取り上げた。だがそれだけではない。お金持ちは喧嘩を避ける方が経済的合理性を得られる環境にいるのだ。

筆者の知人に大変な資産家がいる。彼とパーティーの場でビジネスの話をする機会があり、いくつも面白い話を聞かせてもらった。

過去に彼のビジネスにクレームを付ける顧客が発生した。どう話を聞いても顧客に非がある問題のように感じられた。しっかりと顧客の話を聞き、時間をかけてお詫びを重ねれば解決するように思えたのだが、そこで彼は思わぬ行動に出る。「こちらはせめてものお詫びの気持ちです。」と最初に顧客に謝罪金を差し出し、お金の力で争いを解決してしまったのである。

顧客は謝罪と誠意の印としてお金を受け取ったことに満足し、帰っていった。彼は私にこういった。「自分が支払いをしたのは彼に対してではなく、時間と労力に対してだ。彼と争ったところで時間を失うだけで何もメリットはない。その間にビジネスをする方がメリットを得られる。」と。

顧客の理不尽なクレームの対応に付き合っていては時間が取られてしまう。人と人が争う、それは両者が「自分の主張を相手に伝えたい」と思っているときだ。しかし、人間関係の真の相互理解とは本質的に難しいものであり、時には大きな時間も労力も取られてしまう。彼ははじめからそのようなやり取りをお金の力で回避し、本来やるべき仕事にコミットしたいのだという。まさに合理主義、利益追求主義だと感じさせられた。

しかし、合理主義であれば同じ結果になるかというとそうではない。ビジネスに余裕がなければ、顧客を失ってしまうことはダメージとなる。お金以外の解決法となると自分の主義主張を相手に理解させる必要性が出てくる。これが相手との争いになるわけだ。お金持ちはお金に余裕があるからこそ、けんかを回避出来ると思わされたエピソードである。

お金持ちが喧嘩をしない理由

「金持ちけんかせず」という言葉は、恵まれた家庭環境で育ったお金持ちは喧嘩をしない穏やかな性格であるということと、ビジネス環境において合理主義、利益追求主義であるという2パターンの解釈が存在するといえる。いずれにせよ、お金に余裕があるからこそ喧嘩を回避できるということだ。

文・黒坂岳央(高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)/ZUU online
 

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