●待望のBセグ、コンパクトSUVの注目作!
テストコースとはいえ、やっと乗ることができた。
今年の国産コンパクトSUVの目玉ともいうべき新型トヨタ・ヤリスクロスだ。
3月のジュネーブショーで発表されるはずだったが、コロナの影響で急遽ネット発表。
そして先日、待望のプロトタイプ試乗が行われたのだ。
まずビックリしたのはエクステリア。
ネット公開された時点から、独特のマッチョかつ無表情なフォルムに「もしやコンセプトモデルか?」と思ったが、さにあらず。本当にこのまま出るようだ。
デザイン担当者によれば「都会のSUVとして(兄貴分の)RAV4みたいなラギット感を出したくなかった」ようで、結果、SUVらしいマッチョな前後フェンダーは持ちつつもプレスラインは極力廃した無表情なフォルムに。
とくにフロントマスクはヘッドライトこそヤリスハッチに似ているが、全体は顔じわのまったくないウルトラマンか宇宙人? みたいな印象。
ガンコな年配客は、このSFテイストに付いてこられるだろうかと本気で心配するほど。
全長×全幅×全高は4.18×1.765×1.59mと3ナンバーサイズで、ベースとなった全長4m弱のヤリスハッチよりひと回り大きい。
かたや意外なのはインテリアで、ハッチバックと基本同じ。
センター部を除いたインパネにメーター、ドアトリム、シートも共通で、腰から下の車内スペースはぶっちゃけハッチより広くなってない。
ただし、ボディの上屋は拡大しているし、リアシート座面も20mm上がっているので居住性は確実に向上。
とくにリアのラゲッジ容量は390リッターとクラストップ。後席シートを倒せば長尺モノも載るし、ゴルフバッグも2個を並列で積める。ヤリスハッチより使い勝手は全然高い。
●コーナリングを得意に仕立てたのはワケがある
一方、ビックリしたのはハンドリングだ。
ベースのヤリスハッチ自体が4人乗りスポーツカーか?といいたくなるほど俊敏なハンドリングを持ち、新世代のTNGA-Bプラットフォームを共有。
それだけに期待は大きかったが、まさかここまでスポーティとは思わなかった。
まず乗ったのは、システム出力116psの1.5リッターハイブリッドFFモデル。出足からビックリするほど速い。
ヤリスから採用された新しいハイブリッドユニットの電動効率が上がり、モーター出力を高めているからだが、アクセルを踏んだとたんにグッと電動パワーが立ち上がり、半EVといってもいい加速をする。
燃費も実測25km/L前後はいくと予想される。
さらに驚きはハンドリングで、攻め込んでも本当にアンダーステア知らず。多少オーバースピード気味で中速コーナーに飛び込むと、リアタイヤからゆっくりはらみそうになるのだ。
次に乗った1.5ハイブリッドのE-FOUR、つまりリアをモーターで駆動する4WDモデルだが、てっきり雪道を安全走行するための生活4駆と思いきや正反対。
これまたコーナリング中に旋回を助けるように働くのだ。
最後の120psの1.5リッターガソリンモデルも基本特性は同じでアンダーステア知らず。逆に車重が軽い分、ハンドリングは鋭く俊敏だ。
というわけで、驚きの走りを見せた新型ヤリスクロスだが、それもそのはず。
このモデルの主戦場は日本以上に欧州。具体的にはVWやルノー、PSAグループと直接的なライバル関係なのだ。
具体的には全長4.1m強のBセグメントSUV、VW・Tクロスやルノー・キャプチャー、プジョー2008が対抗馬で、日本以上にバトルは激しい。
個性的デザイン、スポーティな走り、他にない特徴を持っていなければ戦えないわけで、ヤリスクロスはまさにそういうクルマなのだ。
宇宙人的なインパクトデザインに、高い実用性を兼ね備え、ほかにないトヨタハイブリッドにより燃費性能もクラス随一。
そこはVW、ルノー、プジョーシトロエンが束になっても敵わない。
ヤリスクロスはいわば、欧州で戦う最強の日本人フットボールプレーヤーみたいなもの。日本に来たら余裕で勝てるに決まってる。
Writer:小沢コージ Photo:小沢コージ
提供元・CAR and DRIVER
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