文章で身を立てるものにとって、ペンは自分の思考を世間に発信する極めて重要な相棒だ。筆者もジャーナリストとして、万年筆にはとても思い入れが深く、様々なものを使ってきた。そして、物書きにとって憧れ、羨望の眼差しを送るのがなんといってもモンブランの万年筆だろう。

確かにモンブランはその知名度やブランド力は世界屈指のレベルだが、万年筆の世界は広い。モンブランに引けを取らない万年筆はいくつもあるのだ。今回は1本数十万円を超える高級万年筆を取り上げたい。

高級万年筆は一体何が違うのか?

万年筆そのものに憧れを持っているが、その値段の高さ故に手が出せない読者も多いだろう。まずは、高級万年筆が一般的なボールペンとの違いが何かをご紹介しよう。

ボールペンはその名の通り、ペンの先端にボールがついているペンだ。ペンを走らせると、インクがボールの回転によって転写されて文字が書けるようになっている。極めてシンプル、極めて単純な構造であるために製造は安価で使いやすいのが特徴だ。どんなに高級なボールペンでも、文字を書くための構造に大きな違いはない。素材が高級だったり、インクの違いがあったりするだけだ。

しかし万年筆は、根本的にボールペンと作りが違う。ボールペンに比べるとその構造は複雑かつ、パーツも多い。インクはペン軸に詰まっていてペン芯を紙に当てるとインクが少しずつ流れ出て文字が書けるようになっている。万年筆は使えば使うほど、書く人の筆記のクセや手に馴染んでいくようになっている。これは使うほどに油が馴染んで「育てる」という概念のある中華鍋に似ている。

万年筆の書き味の快感は、まさにそれを体験したものにしかわからない世界だ。筆者は初めて万年筆を使った時にまったく筆圧を必要とせず、サラサラと氷の上を滑るように文字が書ける事に驚いたものだった。今ではすっかり万年筆の虜で、ボールペンを使う気になれない。値段の高さに加えて、一度慣れると、もう他のペンを使えなくなってしまう点は万年筆のデメリットだろう。

世界の高級万年筆メーカーたち

モンブランを筆頭に、高級万年筆のブランドには様々なものがある。代表的なものを3社紹介したい。

<パーカー>
パーカーは創業が1888年と驚くほど古く、英国皇室御用達の高級筆記具メーカーだ。世界中にファンが多いだけでなく、その歴史の古さ故に数々の歴史的名場面で使用されてきた。中でも1945年の太平洋戦争終結調印式でマッカーサー総司令官がパーカーを使った話はあまりにも有名だ。手頃なものは3,000円程度から存在するが、値が張るものは10万円、30万円、そして数百万円まで幅広い。値段の違いはボディやペン先に18金ロジウムを使用しているなど、ズバリ素材の違いである。

<ペリカン>
ペリカンはスイスに本社を置く創業が1832年とパーカーより更に歴史の古い会社だ。世界的にはモンブランやパーカーに引けを取らないブランド力を誇っており、特にヨーロッパ、創業の地ドイツでの人気が高く売上の50%をドイツで稼いでいるほどだ。また、ペリカンは夏目漱石を始めとした多くの文豪や文化人が愛用したことで知られている。

ペリカンの高級万年筆は高価なものだと数万円、数十万円というラインナップがあり、やはりボディに18金を使用するなど素材の違いによるものだ。

<デルタ>
最後に紹介したいのはデルタの万年筆だ。デルタはイタリアに本社があり、その創業は1982年。南イタリアのアルチザン(伝統職人)が手作りをしている。イタリアの職人が生み出すブランド製品といえば、ブランドバッグやフェラーリなどがあり、伝統職人のアートは万年筆も含まれている。歴史的名場面では、1994年イタリア、ナポリでのG-7サミットの各国首脳の調印式で使用されている。

デルタの特徴としては「安価品がない」ということだ。先に紹介したパーカーやペリカンは数千円のものもあるのだが、デルタは安くても1万円以上でラインナップの多くが3万円、5万円となかなか値が張る。言うまでもなく手作りで大量生産が出来ないのだから、当然といえば当然なのだがなかなか一般人には手が出しにくい価格帯ではある。

自己ブランディングの一環にもなる

このように高級万年筆といっても、世界中に多くのメーカーが存在する。バッグや服にお金を掛ける人はいても、万年筆に投資が出来る人はあまりいない。それだけに万年筆一本で他者に一目置かれ、知性や道具へのこだわりをPR出来るのだから自己ブランディングをしたい方にもおすすめしたい。(黒坂岳央、高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)

文・ZUU online編集部

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