フィンテックは金融包摂であるべき/40代になる今、僕がやりたいこと――家入一真氏インタビュー【後編】

2019.1.31
RELATIONSHIP
(写真=森口新太郎)
(写真=森口新太郎)
「やさしいかくめいラボ」立ち上げにつながった、ひきこもりだった10代の話、その後の起業・エンジェル投資について聞いた全3回のインタビュー。最終回は12月末に40代に突入した家入氏に、フィンテックやお金の教育、抱負について聞いた。(聞き手・構成=濱田 優/写真=森口新太郎)

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「お金が欲しい」という人に「何につかうの?」と聞いたら……

――読者の多くは40代の男性なのですが、この世代にとっての「いいお金の使い方」ってどんなものだと思われますか?

「ほどを知る」ってすごく大事だと思っていて。身の丈に合ってないお金とか高級なモノを持つのって、すごく滑稽というか、しんどいだけだと思っていますね。

例えば僕の同世代でも「お金がない、お金がほしい」「時間がない、時間があればもっとこういうことができる」と言っているやつがいて、「宝くじが当たって3億円手に入れたら何するの?」とか聞くと、「ハワイに行く」とかいうんですよ。いや、ハワイ何回行けるんだよって(笑)。お金が欲しいという割にどう使いたいかまったく考えてないんですよね。

結局のところ、「お金欲しい」「時間がない」と日々言い訳しながら生きていて……って言うと厳しいですけど、自分にいくら必要なのか、それがあったら何ができるのか、どういったことをやりたいのか。そういうことの解像度が低いんですよね。そのままでただ時間が欲しい、お金が欲しいと言い続けて、それで時間が毎日過ぎ去っていくのはあまりにももったいない。自分が今取れる手段の中で、自分がやるべきことって何だろうとか、そうやって分解していくことが大事だと思います。

――堀江さんの著書に『金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?』がありますが、まさにそれですね。

本当ですね。お金ないよりはあったほうがいいけど(笑)。

――ただ敢えて反論すると、たとえばロレックスを付けたことによって、自分が強くなったように感じることってあるんじゃないでしょうか。

あ、それは本当思います。僕も昔そうだったし、この前、とある記事の企画で時計のインタビューに答えたんですけど、10年ぶりぐらいにいい時計を付けたら、ちょっと身が引き締まった感じがしたんですよね。

「高級なものとか買う時代じゃないよね」という風潮があるじゃないですか。ブランドとか身にまとって自分を強く見せるみたいな考え方じゃなく、「身軽であるほうがいい」「いろんなものを持ち過ぎている」と僕も言い続けたんだけど、久しぶりに付けてみたらそれはそれでよかったなと、ちょっと思いました(笑)。時代の変化、自分の変化とともに、変わっていくものもあるのかなと。

テクノロジーの本質は民主化にある

資本主義をドライブさせる根源って、今の自分と理想の自分を埋める、差分のマネタイズだと思うんですよね。要は欲望です。今の自分じゃない、なりたい自分になる、今はここにいるけど本当はこんな場所にいるべき、行きたい場所に行く……。それが一時期行き過ぎて、揺り戻しが来ているのがこの10年ぐらいなのかなと。ポスト資本主義というか、資本主義が行き過ぎた後のあるべき姿をどう考えるのか。

資本主義という割とよくできていた仕組みの上にどういう新しいレイヤーで仕組みをつくっていくのかが、僕がよく言っている“やさしい革命”なんですよね。それってシェアリングエコノミーとか、自立分散型システムとか、ここから先短期的な話でいうと資本主義の上にどうレイヤーをつくっていくかという話だと思っています。

――そういう考え方が、家入さんがおっしゃっている「フィンテックは金融包摂である」という考え方につながるのでしょうか。

そうですね。みんなで国を豊かにしていって、自分の会社も家庭も豊かになってという、「目指すべき山の頂上が一つだった時代」じゃなくなってきている。(所有が豊かさの象徴だった時代もあったが)ミニマリストが出てきたり、(便利な都会に住み続けるのではなく)IターンやUターンをする暮らしだったり、(マイホームを買うのではなく)シェアハウスで楽しく生きていくのもそうだし、いろんな価値観が出てきている。幸せのものさしが崩壊した世界の中で、何を目指したらいいか分からないというのは、これから先、問題になっていくと思う。

少子高齢化がどんどん進んで経済が縮む中で、日本経済は長期的には小さくならざるを得ないと思うんです。そういう中で、地方には小さな経済圏をつくらないといけないし、日本の豊かなお金を新興国に積極的に回して新しい経済圏をつくるべきでもある。支え合って生きていかざるを得ない世界がやってくると、既存のシステムからこぼれ落ちる人も出てくるわけで、そういう人たちのための場所をどうつくるかという課題があると思っていて、それが金融包摂かなと。

これはCAMPFIRE社員にもよく言うんですけど、最終的には自立分散型の社会になる、要はブロックチェーンみたいな技術とか仮想通貨とかが浸透した世界がきたら、「こういうことをやりたい」という人がいて、「応援するよ」という人がいたら、そこがつながるようになる。そうすると、僕らみたいな、手数料いただいてクラウドファンディングというサービスをやっている存在は最終的にいらなくなるんですよね。「絵が描きたい」「映画を撮りたい」「起業したい」という人たちがいて、「応援する」という人たちが、個と個でつながればそれでいい。

フィンテックに限らずテクノロジーの本質は民主化にあると思っていて、既存の利権みたいなものや、一部の限られた人たちだけが享受できているみたいなものが、個人も手にすることができること。受け取ることもできるし発信もできる、それが民主化です。

不特定多数の前で歌ったり踊ったりするって、かつてはテレビに出られる人だけの特権だったわけですけど、インターネットやスマホが普及した今は誰でもできるし、むしろそっちのほうにファンがついたりもする。それって民主化だと思う。

人それぞれですけど、僕のフィンテックの定義はテクノロジーによって、金融にアクセスできなかったような人たちがアクセスできるようになるということだと思う。新しい形の包摂になっていくんじゃないかなと思いますね。

自分一人で居場所をつくり続けるよりも今したいこと・すべきこと

――最後に、今月40代になられるということで(編注:取材は2018年12月上旬)、どういう40代にしていきたいと思われますか。

嫌だなぁ(笑)。僕、30代は居場所をつくるという活動をやってきて、リバ邸というシェアハウスも、会社自体もその会社が提供するサービスも「居場所」であり「居場所づくり」だったんですよね。CAMPFIREもpolcaもBASEもそう。

最近よく思うのは、「居場所をつくる人をつくっていかなきゃいけない」ということ。それは起業家を育てていることかもしれないし、社会起業家、社会活動家を育てることかもしれないんですけど、僕が一つずつ居場所をつくっても限界があって多様性も広がらないし、居場所をつくる人をこれからどうつくっていくか。それがある意味、“やさしいかくめいラボ”をやろうと思ったことの原点なのかもしれない。学校なのか私塾なのか。オンラインサロンなのか、その形は分からないけど、居場所をつくる人をつくっていく抽象度を上げていかないといけないなって。

子どもができて家族も守らなきゃいけないんですけど、そこに割く時間をつくらなきゃなと思いますね。起業したい若者に「身近な人を思い浮かべて、手紙を書くようにビジネスをつくりなさい」とかよく言うんですけど、言いながら「僕はできているのかな」って思いますし。目の前の人を大事にできないとなぁ……と。

――子どもへのお金の教育についてはどう思われますか?

お金の教育って、本当に足りてないと思います。儲けることを嫌うという風潮がありますよね。戦後の平等主義っていい部分もあったと思うんですけど、その負の側面として出てきているのかな。誰かが突出して稼いだりすると、みんなで叩くみたいなことも含めて。クラウドファンディングへの偏見も減ってきましたけど、以前は「お金をこういうふうに集めるのはよくないことだ」みたいな叩かれ方をすごくされました。

お金の貸し借りはトラブルになるので注意はすべきですけど、お金の話は汚いという思想がまだ根強い。小中学のときからお金の勉強をもっとやっていくべきじゃないかと思います。それは財務省があって金融の仕組みはこうで……とかそういうお勉強ではなくて。お金の稼ぎ方とか消費の仕方も含めて。そういうことを子どもに向けて発信するお金のメディアってあるんですかね?

――子どもがいる親に向けたというのはあるかもしれませんが……。

まず親がお金の使い方を子どもに教えることですよね。家で親が「お金がない、お金がない」と愚痴を言っていても何の教育にもならない。お金の教育を家庭でやっていくようになると、また変わってくるのかなと思います。

若い起業家の子たちの中には、一定数、中学校のときにヤフオクで“せどり”やっていましたという子、遊戯王カードを安く買って高く売っていましたって子がいるんですよね。それが大きくなって起業につながっているんじゃないかな。小さくてもいいから、稼ぐとか成功体験を味わっておくと違うのかもしれない。

――海外でいうと子供がレモネードを売ってお小遣いを稼ぐみたいな。

まさにそうです。あれ、すごくいい勉強になると思う。

――そういう経験を子どもにさせておくのもいいかもしれないですね。ありがとうございました。

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家入一真(いえいり・かずま)
1978年生まれ、福岡県出身。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業し、JASDAQ市場へ上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIRE創業、代表取締役社長に就任。他にもBASE、partyfactory、XIMERAの創業、駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の全国展開、ベンチャーキャピタルNOW設立など。

構成・濱田 優/MONEY TIMES 編集部

(写真=森口新太郎)
 

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