スイスで毎年開催される世界最大級のアートイベント「アート・バーゼル」とUBSが共同作成した報告書によると、2017年はアート市場の規模が637億ドル(前年比12%増)に達し、そのうち42%を米国、21%を中国、20%が英国を占めていたという。

市場規模の拡大は、幅広い層によるアートへの関心が高まったというよりも、むしろ世界的に有名な作品に巨額を投じる傾向が強まったことに起因するようだ。著名アーティストの作品は、1000万ドル以上の値で売れることもザラにある。

別の調査ではアートがワインや高級車に代わる、最も高リターンな投資であることも報告されている。

ワインや高級車をしのぐ、高リターンな投資対象

英大手不動産コンサルティング企業ナイトフランクの調査によると 、2017年第4四半期、最もリターンが高かった高級品投資はアート作品だったという。過去1年間のリターン率は21%と、2番目にリターンの高かったワイン(11%)のほぼ2倍を記録した。ワインに追い抜かされるまでは好調だった高級車は2%増、コインは4%へ落ち込んだ。

しかし過去10年のリターンを見てみると、アート作品が78%だったのに対し、高級車は334%、ワインは192%、コインは182%と圧倒的な強さを維持している。

時計は過去1年間で5%、10年間で69%、ジュエリーは4%、138%、切手は1%、103%と、目を見張るような勢いは感じられないものの、底堅い伸びを見せた。唯一落ち込んだのは家具で、過去10年でマイナス32%を記録した。

2017年のリターンではアートやワイン、コインなどに劣る結果となったが、高級車にとっても大物オークションの当たり年だった。1995年製マクラーレンF1が1560万ドル、1959年製フェラーリ「250 GT LWB カリフォルニア コンペティツィオーネ」が1800万ドルで落札されたほか、、アストンマーティンDBR1が2250万ドルで英国車の落札記録を塗り替えた。

米国を追う中国、中国に追い越された英国—Brexitの影響がアート産業にも?

近年はレオナルド・ダ・ヴィンチの「救世主」が4.5億ドル、ジャン・ミシェル・バスキアの「UNTITLED」が1.1億ドル、斉白石の「山水十二屏」が1.4億ドルで落札されるなど、著名芸術家の作品の価格がどんどん上がっている。

前金融危機の打撃を受ける直前の2007年と比較すると、2009年には価格、量ともに40%前後落ち込んだが、2014年には価格のみ3.5%増にまで回復。2016年に再び13.6%減となったものの、2017年は3.5%減まで持ち直した。一方落札された作品の量は20%減のラインを抜け出せずにいる。

長年にわたり最大のアート市場の座を維持している米国は、2017年266億ドル(16%増)を売り上げた。続く中国は132億ドル(14%増)。かつて2位の座に就いていた英国は、ピーター・ドイグの「Rosedale」が健在する英画家の作品では最高額となる2880万ドルで落札されたほか、ポンド安が後押ししているにも関わらず129億ドル(8%増)に留まった。そのためBrexitの危機に晒されているのは金融産業だけではなく、アート産業も同じではないか—との懸念も出ている。(ブルームバーグ2018年3月16日付記事)。

著名芸術家の作品に人気が集中、小規模ディーラーの売上高は減少

2017年のアート市場を完全復活の兆しと受けとるには、多少時期尚早との見方もある。経済学者のクレア・マックアンドリュー氏 は、2017年の好調さを「大物芸術家の作品とトップ・ディーラーに後押しされたもの」と分析している。

ディーラーを通した総体的な売上は337億ドルと4年連続で伸びているが、年間収益100~5000万ドルのディーラーが最も売上高を伸ばしたのに対し、100万ドル以下のディーラーの一部、あるいは25万ドル以下のディーラーの売上高は減った。明暗がはっきりと分かれる両極端な結果から、アート市場全体が好景気に傾いているわけではないことが読み取れる。
マックアンドリュー氏いわく、作品の価格帯の差が年々開いていることが、こうしたアンバランスさの要因になっている。1000万ドルを超える作品は他の市場を上回る好調さだが、これは大物芸術家とその作品を取り扱うディーラーに市場の関心が集中しているということを意味する。

芸術品は多くの富裕層にとって、リスクの高い投資である。少しでもリスクを減らすために、「大物芸術家の作品を買っておけば間違いない」という安心感から、大物芸術家の作品に人気が集中しているのだろう。

しかしこうした傾向は「幅広い作品を幅広い層に紹介する」という、アートそのもののの意図に反することになる。新しい芸術家やディーラーの成長を促す環境とは言い難い点に、マックアンドリュー氏は懸念を示している。

それでは富裕層にとってアートは単なる投資対象なのかというと、そうでもないようだ。UBSが富裕層にアンケートを実施したところ、アートに投資する最大の理由として「美的」「情熱」「芸術家への支援」を挙げる投資家が多かったという。「リターンを期待して」と答えた投資家は3分の1だったという。また一度落札した作品を転売する投資家は、わずか14%しかいなかった。

富裕層にとってアートは投資対象としての存在以上に、「美しいと感じるものを常にそばに置いておきたい」という強い考えの表れなのだろう。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)

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