競売不動産の価額は一般に相場の50~70%といわれている。不動産投資は購入価額が低いと利回りは向上するが、入札前に現物を見ることができない競売不動産はリスクをはらんでいる。競売不動産は、無理をせずリスクに対応できる物件を選ぶことが重要である。

競売の流れ

債権者が競売を申し立て、競売の開始が決定すると、裁判所は売却基準額を決める。裁判所は、不動産の形状、占有状況や占有者の権原等などの現状調査報告書と評価書をもとに売却基準額を決めるが、評価額の7割程度が一般的だ。入札可能額は売却基準額の8割で、入札可能な最低額は不動産相場の56%程度と相場と比べてかなり安い。

競売物件は、裁判所とインターネットサイトで見ることができる。地域を選び、執行裁判所からさらに絞り込んで選択する。

不動産競売物件情報サイト

インターネットサイトには物件概要が掲載されており、物件明細書、現況調査報告書、評価書をダウンロードできるが、すべての情報をサイトで入手できるとは限らない。サイトにない情報は、管轄裁判所で閲覧する。

入札したい物件が見つかったら、期限内に保証金を振り込み、入札書と入札保証金振込証明書、添付書類を提出する。添付書類は法人か個人か、単独入札か共同入札か等で変わってくる。保証金は概ね売却基準額の2割で落札者の買入れ代金に充当される。

どうやって入札価額を決めるか?

入札は1人1枚入札額を記入して提出するが、一度、提出すると撤回や変更等はできないので、入札額は慎重に決める必要がある。

居住用賃貸住宅に入札する金額を決めるとき、いくらで貸し出すか、現在および将来の想定家賃を決めてから利回りと回収年数を算出すると良い。居住用賃貸住宅は、同じ家賃なら、より新しい物件に人気が集まる傾向があり、築年数が古くなると家賃を下げざるを得なくなる。想定家賃は近隣相場を調べてできるだけ低い額に合わせると良い。

賃貸不動産の投資利回りは年間の想定家賃を購入額で割って計算する。年間の想定家賃が50万円で購入額が500万円なら表面利回りは10%となる。回収年数は年間の想定家賃収入から固定資産税、火災保険料、管理費、修繕積立金などの経費を差し引いた実収益をもとに計算する。購入額を実収益で割って出した数字が回収年数で、購入額が500万円、年間実収益50万円なら回収年数は10年となる。

不動産会社を通じて買う中古物件は、多くが表面利回り10%前後で、なかには15%近い物件もある。賃貸物件の回収年数は10年が一般的だ。競売は一般物件を上回る利回り15%以上、回収年数10年以内を入札上限としたい。

手を出してはダメな競売物件とは?

不動産投資の初心者は、占有者がいる賃貸住宅、戸建住宅、住宅以外の物件には手を出さない方が良い。

居住用の競売不動産は、住宅ローンの滞納に起因する物件が多い。競売物件に居住している占有者が住宅ローンの滞納者だと家賃が確実に払われないリスクがある。裁判所が退去を命じる引渡命令手続きがあるが、費用は落札した買受人の負担で、立退料などの出費が必要になることもある。占有者が競売物件の所有者と縁がない善意の入居者等で、家賃の滞納がなければ、新たな入居者を募集する手間と費用が省けるメリットがあるが、善意かどうか確定できない場合は、避ける方が良い。

戸建住宅は瑕疵リスクがある。一般的な不動産売買では、目に見える瑕疵は買主と売主のどちらが追うかを決め、目に見えない瑕疵は売主が追うと定められている。競売物件は目に見える瑕疵は書類に記載しているが、目に見えない瑕疵は買受人が追うことになり、補修費用等のリスクがある。

競売初心者が手を出しやすいのはワンルームマンションだ。ファミリーマンションは、転勤シーズンなど賃借人の入居時期はほぼ決まっていて、時期を逃すと空室期間が長くなりかねないが、ワンルームマンションは転勤や新入学シーズン以外でも借り手がつきやすく、管理費などの費用も安い。ワンルームマンションは現金化も容易だ。築10年前後を経過したマンションは、売買相場が競売価格を下回ることはほぼない。

通常の不動産売買では、購入前に物件概要のほか現物も見ることができる。居住目的の住宅なら十分な審査を経て、住宅ローンなど低利のローンを使うこともできる。

競売不動産は、周辺は下見ができるが現物を見ることはできず、物件明細書、現況調査報告書、評価書や登記簿で判断しなければならない。競売物件で組めるローンもあるが、賃貸目的の投資用不動産のローンは最長10年で、金利も住宅ローンより高い。ローン実行が払込期日に間に合わないと落札は取り消され保証金は戻ってこない。

賃貸不動産の固定資産税、保険料、管理費、入居者募集費用、修繕費などの諸経費は不動産収入の経費として計上でき、マイナスは給与所得や事業所得と相殺できる。競売物件は不動産を安く買うことができるが、リスクに耐えられる物件に留めることが肝要だ。

文・佐々木和義(韓国在住CFP®)/ZUU online

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