ストレスが溜まると散財しやすい――。もし心当たりがあるなら要注意だ。

心理的な分析はいくつかあるようだが、ひとつの理由としては思い通りにならない現実の代替として「思い通りに買い物する」ことで心を満たす効能があるようだ。「自分はこれくらいの購入が自由に決済できる」という誇示もあると聞く。

もちろん、その対象物は自分にとって絶対に購入しなければならないものではなく、購入したはいいが、タンスのなかに仕舞われるものも多い。人は「散財(無駄遣い)」するとき、どのような感情を抱いているのだろうか。どうやって対処すればよいのだろうか。

散財をコントロールすることは可能なのか

イソップ寓話に、「すっぱい葡萄」という話がある。幼い頃に枕もとで聞いた懐かしい物語だ。食べたかったけれど手が届かないから、「あの葡萄は絶対に美味しくはない」とキツネが騒ぐという話だ。このときの仮説として、「キツネが葡萄に手が届いていたら」という考えがある。おそらく、キツネは葡萄を食べ荒らしていただろう。

では葡萄に手が届かず、代わりに目前の畑にリンゴが実っていたらどうだろう。キツネは「葡萄よりリンゴが美味しい」といってリンゴを食べ荒らすことだろう。

冒頭の「散財する動機」はこれに似ている。散財が自分の首を絞めるだけというのは皆、理解している。ただ、代わりに何かで満たさなければ……という急激な感情に襲われ、消費行動のときに歯止めとなる「ちょっと待てよ。これ買っても本当に使うのか」という理性が働きにくくなる。落ち着いたあとに「散財し過ぎ」と諭せば、多くの人が「(言われなくても)わかっている」と言うだろう。

落ち着いて考えると、散財が取るべき方法ではないことは誰だって理解している。ただ、散財するときの感情をコントロールするのは、とても難しい。

散財コントロールを実現するための第一歩

とはいえ、散財をコントロールしないことには健全なマネーライフは実現できない。厳しい節約生活を送らなくても、なんとか貯蓄した50万円を一時の感情の高ぶりで散財原資としてしまっては、後悔どころの話ではない。そこで、予防法として何ができるのだろうか。

(1)散財の決行までに防御壁を築く

最初のアドバイスは、散財の決行までに幾重もの防御壁を築くことだ。今日の流れによっては散財しそうだな、という場合、財布に入れてはいけない3つのもの。それは「余分な現金、キャッシュカード、クレジットカード」だ。デビットカードを所有している人は、それも危険性が高い。必要になったらどうしよう、という誘惑に勝つことが大切だ。

散財には原資が必要だ。現金がなくとも、キャッシュカードやクレジットカードがあれば一次的に財布を潤すことができる。もちろんそれは債務の先送りをしているだけで、実際はとても危険な動きだ。

散財の多くは酸っぱい葡萄。手が届いたら食べつくしてしまうので、敢えてクレジットカードを持ち歩かずして、「畑に手が届かない状態」をつくるのだ。散財の誘因力が高まりも時間が過ぎれば、「あれ、わたしは何が欲しかったのだっけ」となっているはずだ。散財の防御壁が鉄壁の守備力を発揮した瞬間だ。

(2)平常心のうちに許容範囲の「プチ贅沢」をしておく

もうひとつの対策法は逆説的だ。週に一度でも定期的に、許容できる範囲のプチ贅沢をしておく。たとえば普段の廉価なスーパーマーケットを高級なスーパーにて国産牛を買ったり、毎夜の発泡酒をビールにするなど。その行動自体は決して家計を強く痛めることはないものの、心のなかには「少し贅沢してしまったかも」という自覚が残る。

そこで酸っぱい葡萄にあたっても、「このあいだ贅沢してビール飲んだから、今日は外食を止めておこう」となりやすい。手元にクレジットカードがあってもだ。このような「自制力」を磨いておくこともまた、散財時の感情を上手にコントロールし、不要な出費を防ぐ最適解になるのだろう。一朝一夕では身に着かないものでも、家計のコントロールにおいて心強い武器となっていくだろう。

文・工藤 崇(FP-MYS代表取締役社長CEO)/ZUU online

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