投資信託は「購入時」「保有時」「売却時」に手数料がかかる。元本保証されていない金融商品となれば、投資家は損益に目が行くのが当然だろう。ただ、手数料がいついくらかかるかを失念すると、獲得できる利益を減らすこともあるので注意しておく必要がある。

投資信託にかかる3つの手数料

基本として覚えておきたい手数料は投資信託の購入・保有・売却(または解約)に伴う手数料である以下の3つだ。

⑴購入時……購入時手数料(販売手数料)
⑵保有時……信託報酬
⑶売却時……信託財産留保額

(1)購入時手数料……相場は申し込み金額の1~3%、ネット証券では無料化が進む

投資信託の購入時手数料(販売手数料)は、投資信託を購入する際に販売を行う金融機関に支払う手数料だ。

たとえば購入時手数料が3%の投資信託を100万円分購入するには、購入手数料3万円をあわせ103万円が必要となる。購入時手数料が無料の投資信託は「ノーロード投資信託」と呼ばれ、運用成果が指数に連動するインデックスファンドなどに多い。

購入時手数料の相場は申し込み金額の1~3%だが、ネット証券を中心に投資信託購入時手数料の無料化が進んでおり、同じ商品でも購入する金融機関によって差が広がっている。

(2)信託報酬……年0.5~2%程度が一般的

信託報酬(運用管理費)は、実際に投資信託を運用する運用会社に支払う手数料だ。運用や運用報告書の作成・発送、資産の保管にかかる費用をまかなうもので、運用管理費用とも呼ばれる。投資信託を保有している期間は、その保有額に応じて継続的にかかる。

信託報酬は保有する信託財産のなかから自動的に支払われる、見えにくいコストでもある。信託報酬は投資信託の目論見書で確認しよう。

信託報酬は一般的にインデックスファンドに比べアクティブファンドのほうが高い傾向にある。指数(インデックス)を上回る運用成果をめざすアクティブファンドではファンドマネジャーの手腕が問われるため、報酬や投資対象の分析などにより多くのコストがかかる。

信託財産留保額……0.1%~1.0%程度が一般的

信託財産留保額とは、投資信託を解約(売却)するときにかかる手数料だ。投資信託ではさまざまな株や債券をまとめて運用されている。これを換金するために運用会社が商品を現金化し、投資家に支払う必要がある。このときに信託財産留保額という金融商品を売却するための費用が発生する。

信託財産留保額は同じ投資信託を保有するほかの投資家が負担することにならないよう、解約した投資家が支払う仕組みになっている。手数料の目安は一般的に解約時に保有している投資信託総額の0.1%~1.0%程度とするファンドが多い。

一定以上の期間、投資信託を保有していれば、信託財産留保額が0円になるというファンドもある。投資信託の商品によっては、信託財産留保額以外に解約手数料が必要な場合もあるので注意が必要だ。

為替ヘッジありの投資信託では為替ヘッジコストがかかることもある

為替ヘッジとは将来の為替レートをあらかじめ約束する取引(為替先物予約)を利用して、為替変動リスクを抑える仕組みのことだ。これによって円安・円高といった為替変動リスクを抑えながら海外の株式や債券に投資できる。

為替ヘッジありの投資信託では、投資対象の国の通貨よりも日本円の短期金利が低い場合、その金利差に相当するコストがかかる。日本円の短期金利のほうが低い場合には、逆に金利差分の利益(プレミアム)を受け取れる。為替ヘッジコストは運用成果にマイナスになり、そのコストは実質的に投資家の負担になる。

為替ヘッジでは円高になった場合の損失だけでなく、円安になった場合の利益も回避するため、投資信託の運用成果に必ずしもプラスになるとは限らない。また保有資産の通貨を分散するという点では、為替ヘッジなしの投資信託を選んだほうがよいだろう。

為替ヘッジありの投資信託を選択するのであれば、投資目的やコストを負担するメリットがあるかをよく考えたうえで判断することが大切だ。

LINE証券 楽天証券 SBI証券 松井証券
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手数料無料の銘柄本数 購入手数料無料 全ての投資信託の
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投資信託の手数料は金融機関や投資信託によって異なる

投資信託の手数料は金融機関や投資信託の商品によって異なる。特に購入時手数料は金融機関や投資信託の商品ごとの差が大きい。同じ投資信託を購入する場合でも、複数の証券会社を比較するようにしたい。

たとえば「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(1年決算型)」の購入時手数料(販売手数料)は、購入する金融機関や購入方法によって次のような違いがある。

金融機関名 購入時手数料(税込)
SBI証券 インターネットコース:なし
ダイレクト・対面IFA:3.30%
楽天証券 インターネット取引:なし
IFA:3.30%
松井証券 なし
マネックス証券 なし
auカブコム証券 なし
フィデリティ証券 一括購入:3.30%
積立購入:なし
野村証券 3.85%(上限)
大和証券 3.30%
SMBC日興証券 インターネット取引:なし
※対面(総合コース)での取り扱いなし
岡三証券 3.85%
東海東京証券 インターネット取引:2.64%
その他:3.30%
イオン銀行 通常3.30%
自動積立:1.65%
ソニー銀行 なし
三菱UFJ銀行 3.30%
横浜銀行 3.30%
※購入金額100万円未満の場合
※2021年7月22日時点の各社ホームページ SBI証券楽天証券松井証券マネックス証券au カブコム証券フェディリティ証券野村証券大和証券SMBC日興証券岡三証券東海東京証券イオン銀行ソニー銀行三菱UFJ銀行横浜銀行)をもとに筆者作成

先ほど紹介したノーロード投資信託では販売手数料はかからないが、そのほかの手数料が割高に設定されている場合があるので注意したい。各手数料は、投資信託を購入するときに交付される「目論見書」に記載されているので、よく確認することが大事だ。

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手数料が安い投資信託11選

手数料の割安な投資信託を選ぶのであれば、まずインデックスファンドが候補になる。インデックスファンドのなかでも手数料の割安な商品を、資産クラスごとにピックアップして以下に紹介しよう。投資信託を選ぶときの参考にしてほしい。※信託報酬はすべて2020年3月19日時点

国内株式……eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)

<信託報酬年>0.154%(税込)
eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)は、東証株価指数(TOPIX)・配当込みの値動きに連動する投資成果をめざすインデックスファンド。この投資信託では日本株式全体へ分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用は三菱UFJ国際投信が行う。

世界株式……SBI・全世界株式インデックス・ファンド

<信託報酬>年0.1102%(税込)程度
SBI・全世界株式インデックス・ファンドはFTSE グローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース)に連動する投資成果をめざすインデックスファンドだだ。この投資信託では日本を含む世界株式全体(約8,000銘柄)へ分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用はSBIアセットマネジメントが行う。

先進国株式……eMAXIS Slim先進国株式インデックス

<信託報酬>年0.1023%(税込)以内
eMAXIS Slim先進国株式インデックスはMSCIコクサイ・インデックス(配当込み・円換算ベース)に連動する投資成果をめざすインデックスファンドだ。日本を除く22カ国・地域の先進国株全体へ分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用は三菱UFJ国際投信が行う。

新興国株式……SBI・新興国株式インデックス・ファンド

<信託報酬>年0.176%(税込)程度
SBI・新興国株式インデックス・ファンドはFTSE エマージング・インデックス(円換算ベース)に連動する投資成果をめざすインデックスファンド。24カ国の新興国株式に分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用はSBIアセットマネジメントが行う。

国内債券……eMAXIS Slim国内債券インデックス

<信託報酬>年0.132%(税込)以内
eMAXIS Slim国内債券インデックスはNOMURA−BPI総合に連動する投資成果をめざすインデックスファンド。日本国債を中心とした国内の公社債へ分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用は三菱UFJ国際投信が行う。

先進国債券……eMAXIS Slim先進国債券インデックス

<信託報酬>年0.154%(税込)以内
eMAXIS Slim先進国債券インデックスはFTSE世界国債インデックス(除く日本・円換算ベース)に連動する投資成果をめざすインデックスファンド。この投資信託では日本を除く世界の主要国の国債(公社債)へ分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用は三菱UFJ国際投信が行う。

新興国債券……iFree新興国債券インデックス

<信託報酬>年0.242%(税込)
iFree新興国債券インデックスはJPモルガン ガバメント・ボンド・インデックス−エマージング・マーケッツ グローバル ダイバーシファイド(円換算)に連動する投資成果をめざすインデックスファンド。この投資信託では新興国19カ国(2021年1月末時点)の現地通貨建て国債に分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用は大和投資信託が行う。

国内REIT……Smart−i Jリートインデックス

<信託報酬>年0.187%(税込)
Smart−i Jリートインデックスは東証REIT指数(配当込み)に連動する投資成果をめざすインデックスファンドだ。日本の不動産(J−REIT)市場全体へ投資するのに近い投資成果が期待できる。運用はりそなアセットマネジメントが行う。

海外REIT……Smart−i 先進国リートインデックス

<信託報酬>年0.22%(税込)
Smart−i 先進国リートインデックスはS&P先進国REIT指数(除く日本・配当込み・円換算ベース)に連動する投資成果をめざすインデックスファンド。日本を除く先進国の不動産市場に分散投資するのに近い投資成果が期待できる。運用はりそなアセットマネジメントが行う。

ゴールド(金)……SMT ゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジなし)

<信託報酬〉年0.275%(税込)
SMT ゴールドインデックス・オープンはLBMA金価格(円換算ベース)に連動する投資成果をめざすインデックスファンド。この投資信託は金現物への投資に近い投資成果が期待できる。運用は三井住友トラスト・アセットマネジメントが行う。

購入時手数料の上限は年3.30%と高く設定されているが、販売会社がSBI証券と楽天証券であり、いずれもネット取引で購入する場合の購入時手数料は無料だ。

バランスファンド……eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)

<信託報酬>年0.154%(税込)
eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)は国内・先進国・新興国の株式、国内・先進国・新興国の債券、国内・先進国のREITという8つの資産クラスにそれぞれ連動するインデックスファンドに12.5%ずつ投資する。1つの投資信託で世界の株式・債券・不動産市場に分散投資することができるのが特徴だ。運用は三菱UFJ国際投信が行う。

投資信託を選ぶときは必ず目論見書を確認する

目論見書とは、投資信託の募集や販売を行う際に、募集要項や運用内容などの説明が記載されている書類で、販売会社が投資家に必ず交付するように義務付けられている。目論見書は、投資信託すべてにおいて統一されているため、手数料を含めて投資信託の比較検討がしやすい。

投資信託で支払うべき手数料が自分にとって妥当であるかは、以下の視点から検討してもらいたい。

目論見書をみるポイントは以下の通りだ。

  • 投資信託の投資先がどこであるか、また対象が何か、ファンドマネージャーがどういった運用方法を用いるかを確認する。
  • 基準となる価格が変動する際のリスクや留意点、また、そのリスクに対して、運用会社がどのようなリスク管理を行っているかの詳細を確認する。
  • 分配金がどのような方針で分配されるのか、決算日の頻度がどの程度が確認する。
  • 過去の投資信託の実績を基準価格、純資産の推移、分配金の推移などから確認する。

    (※基準価格とは日々算出される投資信託の価格、純資産総額を投資信託の口数で割って算出したもの)

  • 投資信託の購入単位、購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額や投資信託にかかる税金等の費用を確認する。

    最初に目論見書に目を通したときは、理解するのが難しいと感じてしまうかもしれない。しかし、目論見書に記載されている内容は統一されているため、一度しっかり理解できれば、ほかの目論見書を読むことは容易になる。投資信託を選ぶ際には必ず確認し、自身が納得できる投資信託を見つけてもらいたい。

    投資信託協会からは、目論見書を読むためのガイドが無料で提供されているので、一度目を通しておくのもよいだろう。
    (※参考:投資信託説明書ガイド|投資信託協会)

投資信託の手数料が高いからといって高リターンを見込めるわけではない

投資信託は、高い手数料を支払ったからといって自分に戻ってくるリターンが大きくなるわけではない。逆に手数料が低いからといって、リターンが少ないとも限らない。手数料を参考に投資信託を選ぶのは一つの方法であるが、同時に目論見書をチェックし、過去に損失を出したことが少ない投資信託を選択するなど吟味する必要がある。

投資信託の手数料が低い実店舗のないネット証券の場合、目論見書のチェックや投資先の判断は基本的に自分で行わなければならない。一方、手数料はかかるが窓口がある証券会社や銀行で購入すれば、対面で手厚いサービスを受けることができる。

どちらも一長一短であるため、自分の知識や割ける時間を考慮し、投資信託の手数料だけでなく目論見書などを含めて総合的な判断を行い投資方法や投資先を選んでもらいたい。

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文・MONEY TIMES編集部

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