アメリカを中心に仮想通貨のETF化が検討されている。中でも、現在ETF化が有力視されているのが「ビットコイン」だ。仮想通貨がETF化されることで何が変わるのか。ここでは仮想通貨とETFの関係について解説する。

ETFの基本とビットコイン

ETF(Exchange Traded Funds:上場投資信託)は、インデックス型投資の1つ。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など特定の指数に連動して値動きするように作られている。

ETFは非上場の投資信託と違い、株式と同じように証券取引所で取り引きされ、リアルタイムで売買できるのが特徴だ。つまり、非上場の投資信託と株式のいいところを併せ持った、透明性の高い投資信託がETFなのだ。

一方、ビットコインは金融庁の許可を得ている仮想通貨取引所だけで取り引きされている。海外においても同様だ。ところがこれがETF化すると、仮想通貨取引所だけでなく証券会社でも取り引きできるようになる。

ビットコインETF化の動向

そもそもビットコインETF化を最初に申請したのは、世界最大のビットコイン所有者として知られるアメリカのウィンクルボス兄弟だ。彼らの申請は否決されたが、これに続いて現在も多くのアメリカ企業がビットコインETF化に向けた申請を行なっている。

ニューヨークに拠点を置くLedger社は、米商品先物取引委員会(CTFC)による3年の審査を経て、「スワップ実行ファシリティ(SEF)」と「デリバティブ清算機関(DCO)のライセンス」を獲得。これにより、機関投資家に対してビットコインの先物商品を取り扱う投資信託の提供を開始したことは大きな進展だ。

Ledger X社の動きにより一気に進展するかと思われたビットコインETFだが、道のりはそう甘くなく、2018年末時点においても完全なETF化は実現していない。ただし、これまで難色を示し続けてきたSECが、2018年6月にEFTの承認を簡易にする提案を提出するなど、少しずつだが前進が見られる。

ビットコインETF化のメリットデメリット

なぜビットコインのETF化が難航しているのか。米証券取引委員会(SEC)は、上場申請否決の理由として「市場操作・不正取引を防ぐ仕組みがない」「投資家の利益を保護する仕組みが不十分」という点を挙げている。ビットコインETF化にはメリットもあるが、確かにデメリットもある。

ビットコインETF化のメリット

メリットとしては、上場することで信頼性が増して機関投資家の参入が見込まれ、仮想通貨の価格相場の底上げが期待できる。仮想通貨のETFと類似したものに、すでに上場しETF化しているゴールド・シェアがある。

ゴールド・シェアの価格は、上場から7年余りでおよそ4倍になっている。ビットコインは発行上限が決められているため、ゴールドと同じく希少性がある。仮にアメリカの機関投資家の運用資産残高の1%が流入したとすれば、2,000億ドルがビットコイン市場に入ってくる計算だ。ETF化の直後に急激に値上がりすることは考えにくいが、その動向がかなり注目されていることを考えれば、ゴールド・シェアと同様に数年かけて価格が上がる可能性は高い。

ビットコインETF化のデメリット

デメリットとしては、ビットコインに人気が集中する可能性が挙げられる。そうなればアルトコインが淘汰される可能性も出てくるため、投資を検討している人は注意が必要だ。現状でアルトコインに投資を行なっている人も、ビットコインETF化の動向は確認しておきたい。

また、仮想通貨の取引量が増加すると、一時的に取引所の利用が制限されることも考えられる。こうした事態も想定して複数の口座を開設しておくなど、事前の対処も検討しておくべきだろう。

ビットコインETFの今後

では、現状でビットコインETF化の実現に最も近い取引所はどこなのか?今のところ、日本国内で仮想通貨のETF化の動きはない。その中で最も有力といわれているのは、現在SECに申請を出している米Van Eck社だ。同社について、SECは2月までに申請の可否を発表するとしている。

Van Eck社は、2018年11月末に米大手証券取引所のナスダックとの提携を発表している。そのためビットコインETFが承認されれば、ナスダックで取引が開始されるはずだ。

将来日本市場でも仮想通貨のEFT化が実現する可能性はあるが、直近の動向としてはアメリカでの実現が現実的だ。そのため、日本国内にいながらビットコインETFを購入するには、基本的にアメリカの証券取引所を通じて取り引きすることになる。

日本の企業がビットコインETFの売買を仲介することも考えられるが、通常の取引と比べて手数料が高くなる可能性がある。

ETF化に向けて、一進一退しているように見えるビットコイン。今後大きな動きがあるとすれば、2月のSECの発表だろう。いずれにせよ、ビットコインETFは注目すべき投資対象であることに間違いはない。

文・佐藤愛美(フリーライター)

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