年間世帯所得2500万ドル(約26億円)以上の富裕層が重要視する都市を順位付けした「City Wealth Index」 が発表され、東京が2017年から1ランクアップの8位となった。GDP成長率では、将来的に第3の都市になると予想されている。

ロンドンはニューヨークに首位をゆずり、代わってパリ、ミュンヘン、マドリードといった欧州都市や、ワシントンDC、ボストン、アトランタなど米都市が6つ新たにランクインした。上海や香港、北京など中国の都市はいずれも大きく順位を落とした。

ランキングは英不動産コンサルティング大手ナイトフランクが、富裕層によって創出される「富(富裕層の数に基づく)」「投資」「生活スタイル」「未来」に基づいて、各都市の価値を測定したもの。

富裕層が重視する21都市と2017年順位 

20位(初登場) マドリード(スペイン)
20位(20位) メルボルン(オーストラリア)
19位(初登場) ミュンヘン(ドイツ)
18位(4位) 上海(中国)
17位(8位) 北京(中国)
16位(初登場) アトランタ
15位(初登場) マイアミ
14位(19位) ヒューストン
13位(初登場) ボストン
12位(20位) ダラス(米国)
11位(11位) シドニー(オーストラリア)

10位(初登場) ワシントンDC
9位(3位) 香港(中国)
8位(9位) 東京(日本)
7位(12位) パリ(フランス)
6位(6位) シンガポール(シンガポール)
5位(10位) シカゴ
4位(4位) ロサンゼルス(米国)
3位(7位) サンフランシスコ
2位(1位) ロンドン
1位(2位) ニューヨーク

東京の弱点は「富」と「投資」、大阪・東京はGDP成長予想8位

2018年は8位、2020年のGDP予想は3位(1.6兆ドル)と予想されている東京。生活スタイルもトップ5入りし、香港に代わりシンガポールに次ぐアジア第2の富裕層にとって重要な都市となったが、富や投資がそれぞれ10位、22位と弱い。大阪・京都はGDP予想で8位(6460億ドル)となった。

6位を維持したシンガポールは、富(7位)、生活スタイル(3位)、GDP成長予想(10位)で富裕層を魅了しているが、投資(15位)は若干低め。

トップ20入りしたほかのアジア都市は順位を大きく下げている。香港、北京、上海ともに2017年はトップ10入りを果たしていたにも関わらず、2018年は9位、17位、18位へ後退した。

香港は富、投資(各2位)と生活スタイル(10位)では人気を維持しているが、将来性への期待度が極めて低い(25位)。北京は富、生活スタイルはまずまずの評価を受けているものの(各15位)、将来性(19位)や投資が低い(37位)。上海は将来性(15位)に期待が持てるが、富(29位)、投資(21位)、生活スタイル(23位)は今ひとつふるわない。

富裕層間で米都市への注目度アップ?ワシントンDCが初登場で10位に

ロンドンから1位の座をうばったニューヨークは全評価項目でトップに。2017年の富裕層人口は117万人で、ロサンゼルスの1.8倍、シカゴの2.9倍、ロンドンの4.3倍に値する。また2017~22年にかけての富裕層人口成長予測も14万人と、ジャカルタ(22万人)やシカゴ(15万人)に次いで、最大の伸びを示すと期待されている。2022年にかけてのGDP成長規模も最大の1.9兆ドルだ。

富裕層間で米都市への注目度が上がっているようで、サンフランシスコが4ランクアップで3位に上昇したほか、ワシントンDCが初登場でトップ10入り。ダラスは8ランクアップ、ボストン、マイアミ、アトランタが初めてトップ20入りした。

欧州はロンドンが若干失速。全評価項目でトップ5ではあるものの、2017年の富裕層人口は27.2万人と米都市に大きく差をつけられている。また将来的に富裕層人口が増える可能性も、米都市だけではなくモスクワやデリー、ムンバイに負けている。Brexitによる政治・経済の不透明さに加え、国外の富裕層による租税回避目的の不動産投資に対し、規制を強化する動きが出ているためかと思われる。

GDPの成長予想はニューヨーク、東京、ロサンゼルスに次いで4位である点に期待―といったところだろうか。富裕層が好む5つ星ホテルや一流大学の数も世界で最も多い。

欧州ではパリが5ランクアップ、ミュンヘンとマドリードが初登場と、徐々に富裕層間で人気が上がっているが、将来的に急成長するとは予想されていない。

ジャカルタ、カイロ、デリなど発展途上国で富裕層が増える?

今後富裕層の数が増えると予想されている都市として、ジャカルタ、カイロ、デリ、モスクワ、アブダビ、ムンバイの名が挙がっている。先進国はニューヨーク、ロサンゼルス、ヒューストン、ダラスの4つの米都市以外、大きな成長が期待されていない点が興味深い。

インドネシアは貧富の差が非常に激しいことで知られており、首都ジャカルタではその差が特に際立つという。2015年に世界銀行が発表した報告書 によると、貧困率は徐々に低くなっているものの、2014年の時点で人口の11.3%が貧困にあえいでいた。

こうした闇の部分とは対照的に、フォーブス誌の「世界大富豪ランキング」の常連、巨大財閥ジャルムグループの設立者ロバート・ブディ・ハルトノ氏(69位)やマイケル・ブディ・ハルトノ氏(75位)、化学繊維企業インドラマ設立者スリ・プラカシュ・ロヒア氏(228位)のような大富豪も存在する。

富裕層の数が増える=かならずしも貧困層が縮小するというわけではない点が残念だ。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)
 

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