保険はライフステージや家族構成の変化に応じて、定期的に見直す必要がある。ただプランナー任せで受け身的な見直しをしていたのでは、真に満足できる保障内容にならない可能性がある。保険の見積もりを出してもらうときは、どんな保障が必要なのか、どのくらいの保険料をいつまで支払うのか、といった点について整理しておくことが大切だ。

本当に必要な保障を選定

生命保険の保障内容は、次の3種類に分けられる。「死亡時の保障」「医療費の保障」「ライフイベントに対する準備」だ。保険の見積もりを出してもらう前に、まずはこれらのうちどの保障がどのくらい必要なのか、じっくり考えてみよう。

死亡時の保障についての考え方

死亡時の保障は、自分に万一のことがあった場合に遺族の生活を守るためのものだ。配偶者や子供がいる人にとっては重要視すべきものだろうが、問題はその「保障額」である。このくらいあれば子供を大学まで出してやれるだろう、このくらいあれば家族が生活できるだろう、というような漠然とした感覚で、保障額を決めてはいないだろうか。

死亡時に受けられる保障は、生命保険だけに限らない。日本は社会保障制度が整っており、配偶者が亡くなった場合、遺族基礎年金や遺族厚生年金により一定の保障が受けられる。また企業の中には、死亡退職金制度や死亡弔慰金制度を整えているところもある。さらに多くの人の懸念事項である住宅ローンについても、団体信用生命保険でカバーできる。

保険の見積もりをとるときは、遺族を守るために必要な額と生命保険以外から受けられる保障について把握したうえで、必要な保障額を計算することをおすすめする。

医療費の保障についての考え方

生命保険文化センターが2015年に発表した『平成27年度生命保険に関する実態調査』では、91.7%の人が医療保険・医療特約に加入していることが明らかになっている。また、2016年発表の『平成28年生活保障に関する調査』によると、73.8%の人が入院時の自己負担費用や逸失収入の充当手段として「生命保険」を選択している。高額療養費制度により治療費は抑えられるものの、差額ベッド代や食事代などの自己負担、逸失収入が発生することを考えれば、医療保険への加入はマストといえるだろう。

ただし、必要な保障額は、年齢や収入、扶養家族の人数などによって異なる。医療保険の保障額について検討するときは、高額療養費制度を使った場合の自己負担額、治療費以外の自己負担額、逸失収入の有無とその額などについて具体的に考えてみることをおすすめする。

ライフイベントに対する準備についての考え方

結婚、出産、子供の進学、資格取得、独立開業、老後…というように、人生には様々なライフイベントが想定される。これらへの準備として保険を活用するのもひとつの手段ではあるが、貯蓄や積立など、他に方法がないわけではない。また、保険には、万一の備えになるというメリットがある半面、長期間キャッシュを拘束されるというデメリットもある。

ライフイベントに対する準備として保険を活用する場合、何のためにどのくらいの資金を準備したいのか、その手段として「保険」を選択するのはどうしてなのか、他に方法はないのか、という点についてよく検討してみることをおすすめする。

既契約の保障内容を整理

どのような内容の保険に加入し、保険料を年間いくら支払っているのか、正確に答えられる人はどのくらいいるだろうか。加入している保険について把握していない状態で新たな見積もりをとっても、正しく比較検討するのは難しい。保険の見積もりを出してもらうときは、現在加入している保険の契約内容を正確に把握しておくことが大切だ。

保険の保障内容は、証券に記載されている。まずは証券を見て、死亡保険の保障額、医療保険の入院日額、ガン特約や特定疾病保障特約といった各種特約への加入状況などについて、書きだしてみるといいだろう。保障内容を一つひとつ箇条書きにしてみると、各保険の保障額はもちろん、特約の重複などムダな部分についても明らかになるはずだ。

加入している保険の保障内容のうち、必要なものとそうでないものをはっきりさせておけば、よりニーズに近い見積もりを出してもらえるだろう。

必要十分な保障内容のシミュレーション

自分に必要な保障が明らかになったら、次に考えるべきはその内容である。死亡保険やライフイベントへの備えについては、単純に「いくら必要なのか」ということを考えればいいのだが、医療保険に関してはそういうわけにいかない。入院日額以外に、ガンへの備えや特定疾病への備え、退院後の通院保障など、各種特約についても検討する必要があるのだ。

生命保険文化センターが行った入院日数に関する調査によると、直近入院時の入院日数は、5日未満が17.5%、5~7日が25.4%、8~14日が15.4%となっており、2週間以内の人が68%を占めている(2016年発表『平成28年度生活保障に関する調査』より)。また、厚生労働省が発表した『平成26年患者調査』でも、病院では退院患者の67%が、一般診療所では退院患者の83%が、0~14日の入院となっている。近年は、入院日数が全体的に減少傾向にあるのだ。

入院日数が少ないならば自己負担額は大した額にならないはず…。そう考える人は少なくないだろうが、残念ながら現実は甘くない。生命保険文化センターが入院経験のある人を対象に実施した調査によると、直近入院時の自己負担費用の平均は22万1000円となっている。またその内訳をみると、10~20万円未満の人が39.3%と最も多く、5~10万円未満の人が17.5%、20~30万円未満の人が13.1%となっている(『平成28年度生活保障に関する調査』より)。

医療保険は、短期入院でも十分な保障を受けられる内容にする必要がありそうだ。そのためには、入院日額を増やすのはもちろん、入院一時金特約やがん診断給付金特約など、各種特約の付保についても検討するといいだろう。

また近年は、退院後も通院治療を続ける人が増加傾向にある。医療保険には退院後の通院について保障する通院特約を付保できるものもあるので、こちらも併せて検討してみるといいだろう。

保険期間は保険種類ごとに確認

保険のCMなどで耳にすることの多「終身保障」。これは文字通り「身が終わるまで保障する」、つまり、契約時の保障内容が一生涯続く、というものだが、すべての保険について保険期間を終身にすべきなのかというと、そうとも言い切れない。

死亡保険の保険期間とは

死亡保険について、考えてみよう。子供が小さい頃は高額な保障が必要でも、成長に伴いその額は少なくなってくる。そしてさらに年齢を重ねると、葬儀費用などが賄えればかまわない、と考えるようになる人が少なくない。つまり、必要とする死亡保障の額は、ライフステージにとともに変化していくのだ。死亡保険の見積もりをとるときは、その保障額だけでなく「保険期間」についても考えておくべきだろう。

近年は、掛け捨てかつ定期保険であるかわりに割安の保険料で大きな死亡保障が得られる、「収入保障保険」が注目されている。子供が成長するまで、借入金の返済を終えるまで、というように一定期間の死亡保障を必要としているならば、こういった保険を検討してみるのもいいだろう。

医療保険の保険期間

日本人の平均寿命は、2016年時点で男性が80.98歳、女性が87.14歳となっている(厚生労働省発表『平成28年簡易生命表の概況』より)。平均寿命は延伸傾向にあり、内閣府は、2050年までに女性の平均寿命が90歳を超えるのではないか、と予想しているのだ。

今後も平均寿命が延伸するとなると、70歳、80歳、というように決まった年齢までしか保障を受けられない定期保険では心もとない。医療保険の見直しを検討しているならば、その保険期間は「終身」にしておくことをおすすめする。

無理なく支払える保険料を設定する

保険料は、多くの人が頭を抱える問題だ。保障を大きくすれば、その分だけ保険料も高くなる。確かに万一への備えは重要だが、そのために家計が圧迫されたり、貯蓄が妨げられたりするのでは、本末転倒だ。

保険料は基本的に、契約期間中払い続けるものである。収入や支払い能力はライフステージによって変化するため、保険の見積もりをとるときは、将来にわたり無理なく支払える保険料を設定すべきだろう。

注目すべきは払込期間

保険会社によっては、終身払い以外に、保険料の払込期間を「60歳払済」「65歳払済」「10年払済」などの中から選択できる場合がある。働いている間は少々高い保険料でも無理なく支払えるが、年金生活になってからも保険料を払い続ける自信はない…という人は、払込期間を60歳払済・65歳払済・10年払済とするよう検討してみてはいかがだろうか。

ただし、短期払いの場合、終身払いに比べて保険料が割高に設定されている。本来ならば一生涯にわたり保険料を支払うところ、短期間でその支払いを終えようというのだから、当然であろう。保険の見積もりを取るときは数通りの払込期間でプランニングしてもらい、比較検討してみることをおすすめする。

また医療保険は、平均寿命の延伸、医療事情の変化などに応じて、その保障内容が定期的に見直される。子供や若い世代の人など、今後保険の見直しをする可能性が高い人は、終身払いを選んでおくのもいいだろう。

保険の見積もりを取るときは、必要な保障の種類や保障額、保険期間、無理なく支払える保険料などについて把握しておくことが大切だ。保険は万一への備えであり、家族のためのものでもある。自分自身のニーズをよく理解したうえで自分に合った保険をプランニングできれば、より満足度の高い内容の保険に加入できるのではないだろうか。

文・MONEY TIMES 編集部

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