信用経済とは何か。フィンテックサービス「VALU」との関係性についても解説

2019.8.16
FINANCE
(画像=Getty Images)
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昨今、貨幣経済から信用経済への移行がさけばれるようになりました。

中央銀行が発行する法定通貨が、現在では価値の交換の媒体となっています。

しかし貨幣は信用を数値化したものであるという概念が広く普及するようになり、新しい価値のやりとりが生まれています。

例えば、不特定多数の人から少額の資金を調達するクラウドファンディングや、中央銀行を介さない暗号通貨などは記憶に新しいでしょう。

また社会的な信用の尺度にSNSのフォロワー数が尺度になるという考え方も広まっています。

投資家として興味深いのは会社ではなく個人を上場する「VALU」というサービスが生まれたことです。

一時、話題になったVALUは売り逃げ事件の後にあまり聞かなくなりましたが、2019年1月には5億円を調達しています。

投資家として信用経済やVALUにどのように向き合えば良いのでしょうか。

貨幣経済が一段進んだ信用経済とは?

貨幣経済から信用経済にシフトするという論調が、2010年代の半ばごろから主張されるようになりました。

信用経済は評価経済ともよばれます。

信用経済では「信用」または「評価」を仲介してモノ、サービス、お金が交換されます。

法定通貨を商品と交換する社会から評価と影響を交換する社会に進むと言われ、その動きは2010年代の後半には実社会でも確認できるようになりました。

社会は少しずつ法定通貨の相対的な地位が低下し、評価が重視される時代へと移行しています。

例えばSNSなどでフォロワーをお金で買うという事例もあるようです。

現在の信用経済では「SNSでフォロワーが多い=信用」があり、評価されていると考える人も多いため、わざわざお金を払ってまでSNSのフォロワーを買うという人まで現れているわけです。

「フォロワー=信用」と考えると、信用をわざわざお金を出して交換しているわけです。

もちろんお金で買った「信用」など、偽物なのですぐにメッキは剥がれてしまうのですが、単なるSNSの数字と法定通貨を交換する人が現れたのは、法定通貨の相対的な地位・価値が少しずつ落ちている一例でしょう。

信用経済で社会はどう変わるのか?

信用経済では「信用」や「評価」を仲介してモノやサービスが交換されます。

つまり信用や評価を蓄えれば、モノやサービスをたくさんに手に入れられる社会ともいえます。

信用経済での資産は信用ということになります。

現代社会では「信用」を可視化する仕組みが増えてきています。

例えば飲食店ならば飲食店の評判が載っているWebサービスを見れば、口コミや点数、ランキングがすぐに分かります。

配車アプリのUberやGrabタクシーなどを利用して働いているドライバーも、これまでの利用者からのフィードバックと評価を気にしながら仕事をしています。

SNSのフォロワー数を気にしている若者も信用経済を生きているといえます。

このように信用経済では信用を可視化する仕組みやプラットホームが数多く生まれています。

これまでは所属先や年収・通知表の成績・偏差値などの尺度だけでしたが、信用経済ではさらに可視化された人の信用力も見られる社会になります。

特に中国では政府が広範な「社会信用システム」を進めており、人々を日々の行動などの様々な基準で採点し、14億人いる中国人の「信用」を評価する仕組みができあがりつつあります。

中国では、この信用システムでの評価が低いと航空券などを売ってもらえないなど不利益があります。

信用が可視化され評価され、さらには交換の対象にかわります。

信用経済では可視化される信用を傷つけずに積み上げていくことも求められるようになります。

フィンテックサービス「VALU」で個人が上場される

投資家にとって興味深い現象のひとつが、個人までもが株式と同じように上場されるようになった点です。

日本で話題になったのがVALUというフィンテックサービスでした。

VALUは個人の信用を可視化したトレーディングカードのようなものを発行し、それをWebのプラットホームで売買できるというサービスです。

簡単にいえば会社ではなく、個人をVALUのマーケットに上場させることができるようにしたのです。

個人の信用を証券化したのがVALUと考えれば分かりやすいでしょう。VALUではSNSで話題の

インフルエンサーや各界の著名人などが上場されました。

VALUの問題点

不動産や会社の証券化から個人の信用を証券化するような試みをしたVALUですが、投資家の観点から見ると問題点と思われるところもありました。

少なくとも現時点では、個人投資家がVALUを他の株式や投資信託、REIT、ETFなどのように投資対象にするのは難しいのが現状です。

寿命のある人は有価証券になれない

例えば会社は倒産や解散がなければ存続し続けることができます。

しかし、人の寿命は有限です。

そのため、寿命や病気、事故などで突然亡くなることもある人に有価証券のような価値を持たせるのは危ないという見方です。

つまり、価値の蓄蔵という観点からいくと、寿命があることが前提の人を資産としての有価証券にするのは馴染まないのではないかということです。

例えば親子三代に渡って株や不動産を受け継いでいくというのは可能ですが、寿命のある人の評判を有価証券化にしても、本格的な長期投資は難しいというわけです。

流動性が低い

VALUは「VA」という単位で分割して発行されます。

しかしVAの流動性は低く、あまり頻繁に売買されていません。

そのため買いたい時に買えず、売りたい時に売れないという問題が発生します。

また株式のように多くのプレイヤーがいるわけではないため、スプレッドも非常に大きく売買しづらいのです。

ビットコインを経由しなければならない

VALUは法定通貨ではなくビットコインを通して買うことになります。

そのためVALUのためにビットコイン建の資金を用意しなければなりません。

しかしビットコインをはじめとした暗号通貨の法定通貨建の価格は非常にボラティティが高く、価格は安定していません。

またビットコインと法廷通貨の交換コストも発生します。

そのためビットコインの価格が大きく下落すると、VALUの少々の値幅の変動は簡単にかき消されてしまうということも珍しくありません。

VALUの売り逃げ事件

VALUでは、有名な動画配信者が自身のVAの高騰後、突然全てを売却した売り逃げ事件もありました。

この事件によってVALUは一気に下火になり、しばらく話題にされなくなりました。

成熟した株式市場では考えられないような取引や事件も、このようなVALUの市場にはついてまわります。

5億円を調達したVALUの今後

VALUは2019年1月に過去最大となる5億円の資金調達をしたことを発表しました。

調達資金で開発人材や新規事業の強化を図り、SNS機能の追加拡張や優待機能の改善、取引機能の大幅な刷新を目指します。

またAndroidアプリのリリースなども発表し、再び個人の評判の売買の可能性に挑戦しようとしてます。

投資家からみるVALU投資

VALU投資は個人の信用にビットコイン建で投資をすることになります。

そのため、伝統的な株式のような業績に基づいたファンダメンタルズ分析などがしづらいという問題があります。

個人のもつ魅力や信用、今後などのシナリオを見定めてVAの購入を検討することになります。

伝統的なグロース投資やバリュー投資ようなアプローチは難しいでしょう。

またビットコイン建てで流動性も低く、上場されている個人の寿命のことも考えるとVALUに大きなポジションを取るのは非常にリスクが高いと言わざるをえません。

やはりVALUのVAを買う際は発行する人を支援する、応援するというスタンスで少額のポジションに留めておくのが無難でしょう。

しかし、信用というアセットが売買の対象にまでなっていることを投資家も無視することは今後できない時代になりそうです。

まとめ

貨幣経済から信用経済にシフトしています。

信用でモノやサービスの交換ができるようになり、現在の貨幣の相対的な地位が少しずつ落ちていく時代です。

VALUのような個人の信用の証券化に近いイノベーションも誕生しました。

しかし、個人の信用の売買は様々な問題があり、株式のようなアセットと同じように投資対象にすることは難しいのが現状です。

文・田守正彦/提供元・The Motley Fool Japan

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