誰にでも起こり得る病気やケガに、医療保険で備えたいと考える人は少なくない。とりわけ、治療費が高額になる可能性のあるがん治療に対する保障は、預貯金を残しておきたい人にとって心強い支えとなるだろう。

ところが、いざという時のために加入しているがん保険でも、本当に必要な時に給付金が支払われなかった、もともと給付対象でないため掛け損だったでは意味がない。

月々保険料を払って任意で加入する保険なので、本当に自分に役立つ保険を選びたいものだ。

がん保険は、高額化するがん治療を保障するための保険

がん治療に特化した保険が“がん保険”であり、医療保険でもがん治療に対応できるように“がん治療特約”“がん先進医療特約”などの特約を付加できる。このようにがんを対象にした保険が存在するのは、がん治療では医療費が高額になる可能性があり、何らかの経済的補償の必要性があるからだ。

がん治療のための検査や診療・手術・入院・薬剤にはたいてい公的医療保険が適用される。それなのに「がん治療は高額」と言われるのは、次のような背景がある。

  • がん治療の選択肢の中には、保険が適用されない先進医療や自由診療、日本国内で承認されていない薬剤の使用が含まれる
  • がん治療技術の進歩により、治療の主体が入院から通院にシフトしており、長期間の通院治療のための医療費や交通費が必要
  • がんの再発や転移によって、治療が長期化する場合がある
  • 抗がん剤治療の副作用により、宅配サービスや医療用ウィッグなどが必要
  • 入院期間や回数に応じて支払う差額ベッド代や食事代の負担

    がん治療が長引けば、上述のようながんの治療費やそれに伴って必要になる費用が積み重なってくるだけでなく、がんの進行や抗がん剤の副作用によって仕事量を減らしたり、仕事を辞めたりすることで収入が減少するリスクも生じる。

がん保険に加入したほうがいいかどうかを見極める

日本では、がんを含め病気やケガなどの治療の対価として支払われる医療費に対しては、それぞれの事情にあわせて医療費の自己負担を軽減するための制度が用意されている。

公的医療保険では、保険診療の自己負担が6歳以上70歳未満では3割、6歳未満と70歳以上74歳以下は基本2割、75歳以上は基本1割と決められている。高額療養費制度を利用すれば、被保険者の所得に応じて定められている1ヵ月間の自己負担限度額を超えて医療費を支払うことはない。さらに、収入のある人が1年間を通して一定額を超える医療費を支払った場合には、確定申告すれば医療費控除を受けられる。

将来発生する医療費等に対して、こうした公的医療保険や公的助成制度などを活用して自己負担額を軽減させ、預貯金を取り崩したり収入を支払いに充てたりできれば、一般的にはがんに罹患しても当面は乗り切ることができる。つまり、医療費等の自己負担分を支払っても生活を圧迫しないだけの収入や十分な預貯金があれば、がん保険に加入する必要はないと言えるのだ。

それでは、民間の医療保険、とりわけがん保険に加入すべきなのは、どのような人なのか? 簡単に言えば、実質的な自己負担額を収入や預貯金等で賄えない人、もしくは預貯金を医療費等の支払いのために切り崩したくない人だ。

がんの治療費やそれに伴う費用が高額化した場合でも、将来的にさまざまな使途が想定される預貯金にはできるだけ手を付けたくないと考えるならば、がん保険への加入は賢明な選択となる。

一般的ながん保険の保障内容は?

がん保険の保障内容は、商品によってその範囲や保障額が違う。数ある商品の中から、本当に必要な商品を選ぶためには、仮に自分ががんに罹患した場合にどのような保障をどの程度必要かを精査することが大切だ。

通常、がん保険の責任開始期は契約日から90日または3ヵ月を経過した翌日であり、責任開始期以降にがんと診断確定されたがん治療が給付の対象になる。このことを踏まえた上で以下を確認してほしい。一般的ながん保険では、責任開始期以降であれば、次のような主契約や特約の規定に従って給付金を受け取ることができる。保障内容や保障額は商品によって違いがあるので、必要な保障が組み込まれた商品を慎重に選びたい。

  • 診断給付金 ……商品によって、がんの診断確定後1回だけの給付、一定期間を経過した後であれば再発・新たながんの診断で複数回給付があり、診断給付金が特約になっているものなどがある
  • 入院給付金 ……通常の医療保険と違って、給付対象であるがん治療のための入院期間や回数に制限がない。入院給付日額の入院日数分が給付金として支払われる
  • 手術給付金 ……がん治療のための手術回数に制限はなく、手術の種類によって入院給付日額の10倍・20倍・40倍の範囲で給付金額が定められている
  • 通院治療給付金 ……がんと診断確定された日から、またはがん治療のための手術・入院・放射線治療等を受けた日から一定期間内の通院治療に対して日数無制限で給付
  • 放射線治療給付金 ……がん治療のための放射線治療1回につき給付。給付は規定日数につき1回で回数無制限
  • 抗がん剤治療給付金 ……抗がん剤治療を受けた場合に、1ヵ月単位で給付。特約であることが多い
  • がん先進医療給付金 ……上限2,000万円の範囲内で、自己負担額全額を給付。主契約として組み込まれている商品、特約として付加できる商品がある
  • その他の給付金(外見ケア・生存給付金・がん収入サポート給付金など) ……特約になっている場合は、契約者本人が必要な保障だけを選択する
  • 払込免除特約 ……がんと診断確定された場合や、高度障害後遺症など所定の条件に該当した場合などに保険料が免除になる

一般的ながん保険の代表例

『アクサダイレクトのがん終身』
チューリッヒ生命『終身ガン治療保険プレミアムDX』
オリックス生命『がん保険Believe(ビリーブ)』
アフラック『生きるためのがん保険Days1』

あらゆる保障を組み込めば、月払保険料はかなり高額になり家計を圧迫しかねない。そのため、一般的ながん保険にすべての特約を付加して安易に契約するのは得策ではない。がんに対する不安が強く、広範で手厚い保障によってあらゆる治療に安心して臨みたいと考える人や、高額な払込保険料を賄える経済的余力のある人であれば、保障の厚い一般的ながん保険は良い選択肢になるだろう。

「がん保険だけでは不安、医療保険ではがんをカバーできない」と考えるなら……

がんはもちろんのこと、急性心筋梗塞・脳卒中にもがん保険同様の保障内容で備えたいと考える人や、何を選んでよいかわからないがとにかく将来の病気やケガに対して十分な保障を用意しておきたい人にとって、保障ががんに特化している一般のがん保険では心もとない。一方、通常の医療保険では、長期化や再発のリスクが伴うがん治療には十分対応できないことが多い。

楽天生命『スーパー医療保険』は、病気やケガに対する医療保険としての保障と、がん保険としての充実保障が一体化した商品であり、病気やケガ、がんを含む三大疾病を包括的に十分保障したいという潜在的ニーズの受け皿になる。短期入院から長期入院まで、手術・退院後の通院もカバーでき、がんの診断確定で最大200万円の一時金を通算6回まで受け取れるので、一つの保険で病気・ケガからがんまでしっかり保障できるオールインワンタイプの医療保険の代表格と言えよう。医療保険であるため責任開始期は申込日になるが、がん特約については、一般のがん保険同様、申込日から91日目以降にがんと診断確定した場合が給付対象になる。

一般のがん保険・医療保険だけでは不安に感じる人は、楽天生命の『スーパー2000』も要チェックだ。がんの再発による入院に対して何度でも給付されるガン治療給付金と、入院給付金・ケガによる通院給付金、さらには死亡保障も付いているため万が一に備えられて、なおかつ保険料も月々2,000円とリーズナブルに設定されている。年齢が上がるにつれて保障金額は減額されるが、2,000円の保険料は更新しても65歳まで変わらない。

1年間入院しなければ健康祝い金も受け取れるので、健康に自信はあるが、念のため広範に保障できる保険に加入したいと考える人には好都合だろう。責任開始期は申込日からになるが、がん特約については『スーパー医療保険』と同じく、申込日から91日目以降のがん診断確定に対して給付金が支払われる点に注意してほしい。

必要な保障を絞り込んで手厚く保障も可能

新しく販売されるがん保険の傾向としては、従来型のがん入院給付金やがん手術給付金、放射線治療給付金等を中心とした広範な保障ではなく、保障内容を限定した商品が多くなっている。がん治療に関わる給付金の種類によって、次のような商品タイプに分類される。

  • 診断給付金タイプ……がんと診断確定された時点で、診断給付金・一時給付金として、1回だけ、またはその後1年ごとに1回を複数年継続して給付金を受け取ることができる。診断給付金でたいていの治療に対応可能。

『楽天生命ガン診断プラス』

一時金の保障だけに絞ったシンプルながん保険。今ある医療保険の補完として加入すれば、がんも手厚く保障できるようになる。初めてがん(上皮内新生物もあり)と診断確定されると、100万円~300万円のガン診断給付金を受け取ることができる。初回のガン診断給付金から1年経過した後にがんで入院したら1年に1回、通算5回までガン治療給付金が各100万円~300万円給付されるので、再発したがんにもまとまった一時金で備えられる。がんや上皮内新生物を含むあらゆる病気・ケガによる1泊2日以上の入院に対して、1回5万円・180日に1回・通算50回まで入院給付金も支払われる。特約を付加すれば、先進医療の自己負担額と同額の給付が通算2,000万円まで受けられる。

FWD富士生命『新がんベスト・ゴールドα』

一時給付金の保障範囲を特定3疾病保障型か特定8疾病保障型から選び、基本給付額についても自由にプランを作成できる。

  • 実額補償タイプ……がん診断確定後の、保険診療による手術・入院・通院治療等における自己負担額や、全額自己負担となる自由診療の治療費、先進医療の技術料など、実際に自己負担した金額分を補償するがん保険

『SBI損保のがん保険 自由診療タイプ』

安い保険料で、がん治療で支払った自己負担分全額を補償できる。自由診療・先進医療では保険会社から直接医療機関に治療費を支払うことができる。がん診断保険金特約を付けると、条件を満たせば何度でもがん診断保険金を受け取ることができる。

セコム損害保険『MEDCOM(メディコム)』

保険診療・自由診療・先進医療を問わず、がん治療の実額を全額補償する。通院治療費は入院の有無に関わらず5年間で1,000万円まで補償される。

  • 収入保障タイプ……がん罹患後、治療に伴う収入減少を補うための保障を備えたがん保険

アクサ生命『アクサの収入保障のがん保険』

がん治療による収入減少補償に特化した年金型がん保険。上皮内新生物等は対象にならない。ガン収入保障年金、死亡給付金または遺族収入保障年金等、支払金を選ぶことができる。

ライフネット生命『がん保険ダブルエール』

がん(または上皮内新生物)と診断確定後のがん診断一時金、入院・通院を問わず月1回10万円が給付される治療サポート給付金、先進医療給付金などが基本保障内容になっており、保障をプレミアムにすればがん収入サポート給付金が支払われる。

文・MONEY TIMES 編集部

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