保険の加入時に自分の健康状態を正しく告知するのは、大きな義務だ。相互の助け合いという保険の性質上、違反には厳しいペナルティがある。嘘を告げるなど危険なことをする前に、自分の健康状態でも入れるかどうかの可能性を探りたい。

保険加入時には自分の状態を正しく告知する義務がある

保険に加入する際には、自分の健康状態などを保険会社に対して告知しなくてはならない。この告知義務は民間の保険会社にとって、保険という商品の仕組みの根幹にかかわる問題だ。

保険は「くじ」のようなものだ。多数の人が保険料を出し合って集まったお金を、運悪く病気や死亡という事態に陥った人に支払う。民間の保険は、性別や年齢、健康状態などによって、リスクに応じた保険料を設定している。

したがって、加入者の「現在の健康状態」「過去の病歴」「危険な職業についていないかどうか」などの情報は重要だ。もともと病気や死亡のリスクが高い人まで無条件に受け入れると、他の加入者にとって保険料負担が公平ではなくなり、保険会社にとっても見込み違いの損失を被ることになる。そのため、新たに加入しようとする人は健康状態について正しく、そして正式な手順で告知を行う義務がある。

告知は、保険会社の定めた質問に答える形で行われる。「保険会社」に対して書面(告知書)を提出するか、「保険会社」の指定した医師の診察を受ける。その医師以外の営業員や保険代理店の担当者に口頭で告げても、告知をしたことにはならないことに注意しよう。

営業員や代理店担当者が告知内容について「これくらいなら告知しなくても大丈夫」などと言っても簡単に従うべきではない。あくまで保険会社との約束だと意識しよう。

告知義務違反のペナルティは大きい

その保険に入りたいからと健康状態や病歴などを正しく告知しなかった場合、そのペナルティは大きい。告知義務違反は「保険」の仕組みの土台を揺るがし、他の保険契約者に迷惑をかける行為だからだ。

保険会社は一方的に契約を解除できる

契約者が保険会社から求められた告知事項に事実と異なる回答をしたとき、このような告知義務違反に対して、保険会社は一方的に契約を解除できる。保険金や給付金が下りるような事態が解除の前に起きていたとしても、保険金・給付金は支払われない。解約返戻金などが戻ってくるタイプのものであれば、それに相当する金額は返ってくる。しかし、死亡や病気などの場合にあてにしていた保険金・給付金は支払われない。保険法という法律で決まっているのだ。

具体的には、200万円の保険金を得るために、一定期間保険料を支払っており、ある時点の解約返戻金が50万円だとしよう。その時点で契約を解除されても50万円(ただし返戻率による)は返ってくる。しかし、200万円の保険金がおりるような事態が解除前に起こっても、解除されたらその200万円の保険金は支払われない。

告知について誤解を招く情報が「2年バレなければ大丈夫」というものだ。まったく根拠がないわけではないが、かなり正確さを欠いて伝えられることが多い。うのみにせず、趣旨をよく理解しよう。

確かに、保険会社の解除権が消滅することはある。保険法では「解除の原因を知ってから1ヶ月間解除をしなかったとき」「保険契約締結の時から5年を経過したとき」は、保険会社は解除できなくなるとされている。前者は「知ってからの保険会社の動きが鈍いとき」とイメージするとよいだろう。

後者が「告知義務違反で契約しても〇年バレなければ大丈夫」という情報の出どころだ。法律では5年とあるが、多くの保険会社では保険約款で2年としている。これが「2年バレなければ大丈夫」という情報の根拠だろう。

しかし、告知義務違反が重大なものであれば何年経とうと保険会社は契約を解除できる。詐欺であるかどうかが問われ、保険金はもちろん、払い込んだ保険料や返戻金も戻ってこない。契約の段階から、「2年バレなければ大丈夫」と告知を軽く考えるのは危険すぎる。

解除を免れることができるケース

一般の保険加入者は医療や保険についての素人だ。「これくらい病気のうちに入らないだろう」と思い込んでしまうこともあるだろうし、症状が軽微なうえ通院らしい通院もしていなければ、すっかり忘れてしまうこともあるだろう。また、営業員などの説明に問題があることもある。

保険会社と、あまり保険に詳しくない一般消費者とを同列に扱うのも酷な話だ。また営業員の不手際なのに、一般消費者に責任を負わせるのも適当ではない。これらの背景を踏まえて、解除や保険金・給付金の不払いまで至らないように定められていることもある。

1つめは、先に述べた「保険会社が知ってから1ヵ月以内に動かなかった場合」だ。最初から保険会社が告知義務違反を知っていた場合も、保険会社に解除権はない。また重大でなければ、保険約款により2年経てば解除権が消滅することもある。

2つめは、告知しなかった内容と保険金・給付金の支払いとが何の関係もない場合だ。内臓関係の疾患について告知義務違反があったが、交通事故で死亡したような場合だ。告知しなかった内容と交通事故には関係がないので、このような場合には保険金は支払われる。

3つめは、営業員などの存在だ。営業員などが正確な告知を妨害したり、嘘の告知をそそのかしたりすることもある(不告知教唆という)。営業員が「それくらい告知書にいちいち書かなくても大丈夫ですよ」と言うこともあるかもしれない。営業員の言うことを契約者は信じて従ったのに、それで保険会社に解除されてはたまらない。このような場合も保険会社は解除できないことになっている。

健康不安を正しく告知しても加入できることも

健康に不安要素がある人が必ずしも「保険に入れない」ということはない。悲観して保険加入をあきらめたり、告知義務違反をしたりする前に知っておきたいことがある。

質問内容が保険によって異なることも

保険の種類によって、告知事項が異なることもある。「がん保険」では一般の「医療保険」より告知すべき範囲は狭い。「がん保険」は「がん」だけを保障するので、別にがんに関係ない項目まで保険会社が把握する必要はないからだ。

また、同じ医療保険でも告知事項の範囲は各保険会社が個別に定めている。全体としては横並びだが、詳しく見ていくと同じ既往症でも告知の対象となったりならなったりすることはある。

告知書で問われていないことまで記入する必要はない。各社の資料を見比べながら、告知事項に自分の持病や既往歴が含まれていない保険商品を探すのも一つの方法だ。

「割増」「特定部位不担保」などの条件付きで引き受けてもらえることも

告知書に記入しなければならない既往歴などがあっても、内容次第で通常の加入が認められることもある。

また、特別な条件を付けることで普通の保険に入ることが可能なこともある。保険料が割増しになったり、受け取る保険金が削減されたりといった条件だ。最初から既往歴のある人向けの「無選択型保険」「引受基準緩和型保険」もあるが、それより有利なことが多い。

既往症と関係する部分は保障しないが、それ以外ならOKという条件付きの契約ができることもある。「胃」に既往歴があれば「胃」についての疾患の保障はしないという場合だ。身体の一部(部位)を保障しない(不担保にする)「特定部位不担保」と呼ばれる。

「自分の希望する一般の保険に入れないかもしれない」と思って、告知義務違反を犯してしまう前に、複数の保険商品の告知書をよく比較し、特別な条件で加入できないか可能性を探っていこう。

病気があっても入れる「無選択型」「引受基準緩和型」という選択肢

病気がある人向けの保険商品もある。生命保険では「無選択型保険」、医療保険では「引受基準緩和型保険」(「限定告知型保険」「選択緩和型保険」)と呼ばれているものがそうだ(医療保険に無選択型もある)。無選択保険では告知や医師の診察なしで加入できるし、引受基準緩和型保険は告知事項が3から5項目程度と少ない保険だ。

ただし、どちらも保険料は割高となる。最初に述べたように、保険は「くじ」のようなもので、「くじ」を引いた人に保険金を支払わねばならず、死亡や病気のリスクの高い人が集まる保険では支払額が多額になる。だから、個々の契約者の負担する保険料は高くなるのだ。

保険金・給付金の支払いにも制限がかかることが多い。個々の保険商品で細かい違いがあるが、「無選択型保険」では、一定期間は死亡保険金を受け取れない(払い込んだ保険料相当額は返ってくる)こともある。緩和型の医療保険でも「1年間は半額の保障しかない」などの制限がある。

一定期間後は死亡保険も医療保障も決められた額が受け取れるし、災害による死亡であれば制限なく保険金が受け取れるというメリットはある。

しかし、保険料が割高であることを考えると、加入は慎重に考えた方がいい。まずは、一般の保険商品で「通常の条件で入れないか」「特別な条件で入れないか」を検討したい。

一般の医療保険であっても「不要論」を唱えるファイナンシャル・プランナーなどの専門家は多い。その根拠は「社会保険の手厚さを考えれば、貯蓄さえあれば医療保険は不要」というものだ。ましてや、より割高な引受基準緩和型保険への加入についてはさらに否定的な意見も多いだろう。

死亡保険もまずは、遺族年金などの社会保険で入手できる金額を把握しよう。その不足分を保険に限らず、貯蓄や他の資産運用で調達することを視野に入れてもいいだろう。

不明点はこまめに問い合わせよう

告知書を書いていて分からないことがあれば、保険会社のコールセンターなどの窓口に問い合わせよう。最初に書いたように、告知事項は保険会社にとって重要な情報であり、ここで何かの間違いがあれば、解除されて保険金・給付金が下りない可能性もある。きちんと保険会社と認識のすり合わせをすることが大切だ。

健康状態など告知する内容に不安があるなら、なおのこと保険会社に問い合わせるべきだ。通常の契約になるか、何か条件をつければ契約できるのか正確に教えてくれるだろう。傷病歴があっても契約できる可能性がある場合には、所定の診査や追加の詳しい告知などが必要となることもある。その保険会社でどのような判断をするのかも、直接保険会社に問い合わせることで分かるだろう。

保険加入時の告知は、非常に重大なものだ。最悪の場合、契約を解除され、保険金が必要な事態になっても保険金・給付金がでないこともある。正確な事実を回答することが必要だ。健康に不安があっても通常の保険に入れることもある。特別な条件がつくこともあるが、健康不安がある人向けより有利なことが多い。告知は重要なので不明点は直接保険会社に質問しよう。

文・MONEY TIMES 編集部

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