人生100年時代といわれる今、誰でも老後はゆとりをもって暮らしたいと願っているでしょう。しかし、現実には老後に必要とされる資金を確保できる人は少ないといわれています。そこで、自宅を担保にして老後に必要な資金を借り入れできる「リバースモーゲージ」という商品が注目されています。本記事では老後資金2,000万円不足問題を考察し、リバースモーゲージの内容を売却後の不動産名義が異なるリースバックと合わせて解説します。

老後資金2,000万円不足は大きな問題

老後資金2,000万円不足問題は、国民に老後の備えについて考えるきっかけを与えることになりました。総務省の統計データ「家計調査2017年 高齢夫婦無職世帯の家計収支」によると、毎月の収支が年金等の収入があっても約5万5,000円不足するとされています。これを老後30年暮らした場合の生活費に換算すると、5万5,000円×12ヵ月×30年=1,980万円となり、老後資金が2,000万円不足する根拠になっています。

調査の対象になったのが、夫65歳、妻60歳以上、夫婦のみの無職世帯です。したがって、夫婦のどちらかがパートで働けば不足資金を賄うことは可能でしょう。例えば妻が午前中の3時間、時給900円で月20日働いた場合の給与が5万4,000円になり、不足分とほぼ一致します。

しかし、すべての高齢者に適切な仕事が見つかるとは限りません。体調の問題などで働けないケースもあるでしょう。そうなると次に考えなくてはいけないのが、資産の活用です。

資産が不動産だけの人はどうすべきか

人が人生で築く資産には預金、有価証券、金(ゴールド)、骨董・宝飾品など多様な種類があります。これらの資産があれば株や投資信託の配当金・分配金を生活費の足しにしたり、金を売却して資金をつくったりすることもできます。しかし、なかには事情により生活がギリギリだったため、思うように資産を残せなかった家庭もあるでしょう。

それでも自宅不動産を持っていれば老後資金を確保できる可能性があります。不動産は担保価値が高いため、自宅を担保に入れて老後の生活資金を調達することは十分に可能です。その方法の一つがリバースモーゲージです。

老後を楽しむためのリバースモーゲージとは?

では、老後の生活にゆとりを持たせ楽しむために必要な、リバースモーゲージとはどのような商品でしょうか。

リバースモーゲージとは、保有する不動産を担保にして融資を受け、名義人が死亡した時点で資産売却により一括返済されるシステムです。自宅にそのまま住み続けることができるため、生活そのものは変わらないというメリットがあります。

自宅を担保にして融資を受けるという形は住宅ローンと似ています。違いは住宅ローンが毎月元金と利息を返済するのに対し、リバースモーゲージは利息だけ支払えばよいため、返済負担が軽いのが特長です。住宅ローンは、毎月の返済によって元金と利息が減少していきますが、リバースモーゲージは逆に毎月の借り入れによって残高が増えていくため、リバース(逆)という名前が付いているというわけです。

リバースモーゲージは老後資金の確保が目的の商品ですので、申し込む年齢には制限があります。金融機関によって異なりますが、50~65歳以上までさまざまです。まず、年齢に達していなければ申し込めないので、自分の年齢が条件に達している金融機関をリサーチする必要があります。

リバースモーゲージは現在では金融機関が直接扱うのが一般的ですが、その歴史は1981年に東京都武蔵野市で導入されたのが始まりといわれています。その後、都市部の自治体を中心に公社を通しての直接融資や、金融機関を紹介して間接的に融資する形で広まっていきました。しかし、近年は民間金融機関で扱う件数が増えたためか、融資の終了や新規の貸し付けを停止する自治体も出ています。

リバースモーゲージは3大メガバンクのほか、多くの地方銀行でも取り扱っていますので、まずは取引銀行に相談してみるのもよいでしょう。

融資を受けた資金はさまざまな用途に使える

融資を受けた資金は、一部のケースを除いて様々な用途に使うことができます。おもな使いみちとして下記のような用途が考えられます(SMBC三井住友銀行ホームページ記載の例)。

【使える用途】
旅行・レジャー、趣味・教養(ショッピング、食事、レッスン費等)、家族の結婚・教育資金、リフォーム等の資金、有料老人ホームの入居資金、万一の備え(長期入院、高額医療費等)

【使えない用途】
事業性資金、金融商品の購入

また、みずほ銀行の「みずほプライムエイジ」のように、使途自由の「フリー口」と、用途を限定した「目的口」で金利が異なる商品もあります。

  • フリー口……短期プライムレート(基準金利)+年2.0%の変動金利
  • 目的口……短期プライムレート(基準金利)+年1.5%の変動金利

リースバックとの違いは?

リバースモーゲージと似た商品に「リースバック」があります。リースバックとは、自宅を売却して資金を調達する方法ですが、売却先に家賃を支払うことで引き続き居住できるシステムです。

リバースモーゲージとリースバックには下表のような違いがあります。
 

リバースモーゲージ リースバック
資金調達法 自宅を担保にした融資 自宅を売却
資金の使途 一定の制限あり 自由
保証人 原則不要(必要とされるケースあり) 不要
不動産の名義 本人 買主(売却先)
居住形態 利息を払って居住可 家賃を払って居住可
固定資産税等 掛かる 掛からない
申し込み可能年齢 50~65歳以上 年齢制限なし

※一般的な例であり、金融機関によって条件が異なる場合があります。

両者の違いで注目されるのが、不動産の名義です。リースバックでは名義は売却先に移ってしまいますが、リバースモーゲージは本人のままで変わりません。したがって、自宅を売却することに精神的な抵抗を感じる人も利用しやすい仕組みといえます。その半面、不動産の名義が変わらないため、固定資産税・都市計画税は引き続き払わなければなりません。

もう一点注意が必要なのは、リバースモーゲージは融資対象になる不動産を一戸建てに限定している金融機関が多いことです。金融機関の担保評価が土地の価値によって算出されるためですが、マンションを対象にする金融機関がないわけではありません。例えば、東京スター銀行のリバースモーゲージ「充実人生」では申込者の年齢や対象物件の条件が合えばマンションでも利用することが可能です。

リバースモーゲージは相続対策にもなり安心

ここまでリバースモーゲージについてみてきましたが、老後生活といっても各家庭の置かれている事情は違います。親の持つ自宅を将来子どもが引き継ぎたいと考えているケースもあるでしょう。その場合は、あらかじめリバースモーゲージを利用することを子どもにも了承してもらう必要があります。子どもに資金力があれば、親の死後借入金を現金により一括返済した上で引き継ぐこともできます。

一方で、子どもがいないか、いたとしても将来自宅を引き継ぐ意思がまったくない家庭では、マイホームが遺産になることで問題が生じる可能性があります。このようなケースにはリバースモーゲージが有効な相続対策になります。親の存命中は担保価値に準じた老後資金を得ることができ、死亡後は売却して一括返済されることによって名義が変わるため、遺産として残る心配がありません。社会的には空き家対策にもなるでしょう。

老後を積極的に楽しむことができ、相続対策にもなるリバースモーゲージは、検討する価値ある商品の一つといえそうです。

提供元・YANUSY

【関連記事】
住宅ローンのおすすめ金融機関をFPが厳選!変動金利、固定金利のおすすめは?選ぶときの注意点は?
iDeCo(イデコ)を40代から始めるのは遅いのか
人気ゴールドカードのおすすめ比較ランキングTOP10!
プラチナカードの比較ランキングTOP10!還元率や年会費、アメックスやJCB、自分に合った1枚はどれ?
ポイント還元率の高いクレジットカード11選